三娘嗤う・エピローグ
[判明]
新ダンジョンが在るとすれば、森のダンジョン領域の近傍だろうと見当を付けたシャオは、付近を徹底的に検索した。そして、つい最近迄は綺麗な真円状であった境界が、所々小さな半円状に広がっている事に気が付いた。
「原因判明」ダンジョンは見つからなかったが、発生の原因は見付けたらしい。外の領域の成長に伴う、アーカイブ領域の変動だ。もう一度アーカイブを精査してみよう。減っていると許り考えて、拡張した痕跡は探さなかったのだ。
[ヤタショタ]
「プロシージャに訊けば良いんじゃね?」B。
内部管理プロシージャであるヤタスズメなら、ダンジョンの位置を知っているのでは無いかと、三娘Bは考えた。
「どうなの?」ヤタスズメの方を向いてA。
「カアカア、カァァァ」ャ。
「念話を使う!」C。
同じダンジョンのプロシージャ同士なら使える筈。
暫く、忙しなく首を振っていたヤタスズメは、突然ポンとショタに化けた。但しサイズはヤタスズメのままだ。
「ちっさ!」ABC。
「ちっさ、言うな!」ワイシャツに紐ネクタイ、バーバリージャケットにチェックの半ズボンのショタが抗議する。
[三娘嗤う]
「何処にでもあって、何処にもない」
ヤタショタが禅問答の様な事を言う。
「我々が知りたいのは到達の方法」C。
「門を開けば良い」ヤタショタ。
「アタシラ、プロシージャ成り立て」Bが指摘する。
「言ってみれば、素人」方法論の伝授を要請するC。
「やり方教えて(ハァト)」上目遣いのA。
「カァァァ」ヤタショタは呪文を唱えた。
「その、かあああっての、どうしても必要?」B。
此処は、ダンジョン=アーカイブの中、無事に入れたので壁に向かって門を開く練習中である。
「発音は正確じゃないと効果は保証しないよ」ヤタ。
「かぁ」A。
壁に渦巻きが出来て、直ぐ消えた。なるほど。
三人で並んでかあかあ言っていると、なんだか間抜けだ。
Cが吹き出した。Bに伝染する。Aが笑い転げる。三人で小一時間は嗤った。
[エピローグ]
人に様々な生き方が在る様に、ダンジョンにも種々の在り様がある。
漂泊のダンジョンは、その端的な一例で最も難攻不落なダンジョンである。
存在を認知する事さえ困難なのだから。
「カァァァ」A。
門が開いた。
「カァ」B。
「カァカアァカアカア」C。
三人とも召還したてのカラス語の仮面を着けていた。