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三娘嗤う  作者: 南雲司
7/8

漂白剤

[事情聴取]

 シャオは神殿に来ていた。

 神樹の結節点から、アーカイブが枝分かれする事は

 理論上は有り得ても、アーカイブの中を約一万年分、

 遡ってみたが確認できなかった。

 極めて希な事かと思えば、

 神殿の記録にはちょくちょく在るらしい。

 とすると、アーカイブの中からでは判別することが出来ない

 事象なのだろうか。

 しかし、今回の分岐は、しっかりと痕跡が残っているのが

 確認された。

 神樹アーカイブの一部が欠損しているのだ。


 とまれ、分岐の中へ一時的にでも取り込まれてしまっていた

 と言う、三人娘に事情を聴かねば為るまい。


「カアカア」三娘Cは、証言するのだが生憎カラス語である。

「カァァァ」ヤタスズメも補足してくれるが、カラス語だ。

「先に解呪をしなければ為りませんね」

 神官長が溜め息を吐く。

 三娘Cは仮面を取って神官長に手渡した。


「ちょっと待てやー!」三娘A。

「呪いは何処いった!」三娘B。

「あれ?」C。


 そう言えば、作者の記憶する限り、三人娘が仮面を外そうと試みた事は無い。呪いとは、ただの思い込みだった様だ。


[リンカー]

 呪いの魔道具ではないらしい事が分かったとは言え、十分謎である仮面をテーブルの中央に置き、シャオ、神官長、三人娘が、グルリと席に着いている。

「カラス語専用の翻訳魔道具と言うだけではないと?」A。

「主機能はリンカー」頷いてシャオ。

「リンカー?」三娘ABC。

「最初に着けた者を結節点に紐付ける」シャオ。

「???」ABC。

「紐付けられた者は、管理プロシージャとして認定される」

「はい?」AB。

「あー、やっぱり」C。

「気が付いていた?」AB。

「なんとなく」C。


 簡単に言えば三娘Cがダンジョンマスターに成った

 と言う事なのだが、色々と間尺が合わない。

 その内の一つに誰かの眷属で有ればダンジョンマスターには

 成れないと言う仕組みがある。


 此れは、結節点同士が反発し合ってはじかれてしまうからである。

 高々、個人的な範疇になる、シャオとのリンクが切れた位で

 キャンセルされる仕組みではないのだ。


「それがこの仮面で可能になる」

 一旦、眷属的な物も含め全ての紐付けを強制的に解除して、

 新たな結節点に紐付ける。そう言う機能だ。


「ある意味、漂白剤」C。

「サブタイ、それ?」B。

「なんか違わなくない?」A。

「仮面の名前は[強制解除ブリーチの仮面]」シャオ。

「しょうもな!」AB。


みんなステータス確認して」C。

 自分のステータスウィンドウを開いたらしい三娘Cが、鋭く言った。

 このウィンドウシステムは[歪なダンジョン]固有の物で在る筈

 なのに、移籍しても普通に使えている。

 個人のアーカイブ領域が移動する分けではない

 と言う事なのだろうか。


「あー、所属が[漂泊のダンジョン]になってる!」A。

「しかも、[チャタン・ミホの眷属]って、……誰?」B。

「親友の名前くらい覚える!」C。


[偵察]

 神樹の森のダンジョン領域は恐ろしく広い。

 真冬だと言うのに葉も落とさず青々と繁っている広大な森が、

 その領域だ。

 その外側は樹氷の延々と広がる管理領域と言う事に為っているが、

 それは人族に対する安全保障の意味合いであって

 絶対的な物ではない。

 敵対の意思が無ければ入る事を止められる事は無い。

 その上空もしかりである。


 故に、素材を求めて別けいる冒険者達に紛れ、

 狩猟訓練の名目で何個分隊かのイバーラク軍兵士が、

 常に彷徨しているし、

 これも、訓練名目でダンジョン領域ギリギリまで接近する

 同空軍機が在る。


 ダンジョン領域外周を巡っていた二機の鷲型は、

 慌てて面舵を取った。

 ほぼ真円で在る筈の領域から、

 突出した緑の一角が在ったからである。

 前回の偵察の時は無かった。

 領域を拡張しているのか、訝しく思いながら報告を入れた。


[消えたダンジョン]

 シャオは溜め息を吐く。折角手に入れた、面白い手駒が早々と手を離れていく事に為りそうだからである。最悪、三娘との接点は、彼女等の[歪なダンジョン空軍]での任期由来の物だけに、為ってしまうかも知れない。

 [漂泊のダンジョン]は、決損した神樹アーカイブを根として結節点が生まれた物だろう。しかし、うちの物だから返せとは言えない。返すことは出来ないだろうし、仮に返して貰ったとして、そもそも、受け取りようがない。新たなダンジョンとして認知するしかないのだ。当然の事、そのダンジョンマスターと眷属達も認めざるを得ない。

 そのダンジョンの位置を同定しようとして、シャオは困惑した。

「どこにもない?」



 てっきり、ダンジョンに成ってしまったと思われた物置は、元に戻っていた。

私達あたしらお家(ダンジョン)何処?」ABC。


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