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三娘嗤う  作者: 南雲司
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カラスの仮面

[宣言]

 三娘Cの突拍子もない宣言に他の二人は至って平然としていた。

「いつもの事だしねー」A。

「ツボの基準が分かり難いのがC足る証拠」B。

 何故、ファンタジーとロマンが尼さんと繋がるのか、気にしては敗けなのである。勿論、三娘Cの中では理の当然の流れであるが、紙面の都合でここでの説明は割愛する。決して考えてない分けじゃないからね。


 とまれ、神殿に於いては、三娘Cの宣言は好意を持って、傍迷惑な事に、三人娘の代表としての宣言として受け止められた。当然ながら、本格的なむちゃんこ厳しい修行が始まった。

 幸いシャオ様の監修を兼ねての魔石への術式刻みの実技があり、此は此で厳しいのだが、腰が痛くならないだけ救いとなった。


 そんなある日、ちょっとした事件が滲み出てきた。


[ここ何処]

「神殿内に、アーカイブの分岐?」ABC。

「ええ、不安定で何処に発生するのか予測が付き難いのです」先輩の神官見習いは重々注意する様に告げた。

「意味分かった?」A。

「虎治のエロルームとか、こないだの自動整形スペースとかだよね?」B。

「寧ろ、便利では?」C。

 厳密に管理されたアーカイブしか知らない三人には危機感の持ち様が無かった。ともあれ、修行の内である、掃除洗濯買い出し昼寝じゃなくて昼餉、雑用に勤しもうと、物置小屋の扉を潜ったら異世界だった。

「ここ何処?」ABC。


[宇宙]

 簡単に言うと、アーカイブとはアカシックレコードのデータベースの様な物だ。残念ながら、人間向きには出来てはいないし、そもそも、データベースとして構築された物でもない。

 ごく初期からの大宇宙の写像が積層して出来上がったのだと考えて貰えば分かり易いかも知れない。であるなら、その要件はこうなる。質量はゼロ若しくは限りなくゼロに近い事、大宇宙のあらゆる場所から等距離かつ至近である事、そして、恐らくは観測し得ない程に小さい。

 此れは、アーカイブの外側、詰まり我々の世界から見たアーカイブである。では内側から視るとどうなるか、空間方向へは大宇宙と同じ大きさ、時間方向へは辿れる限りの過去と予約し得る未来の大きさを持っている。

 質量については[大宇宙の全質量]×[過去から未来へ掛けての全ての時間素子の数]の写像である。

 此処にいつからかプロシージャが介在する様になった。


[中]

「物置だよね」A。

「こんなに大きかったっけ」B。

「解1、空間魔法で中を無茶苦茶拡張している。

 解2、転移魔法で違う所に飛ばされた」C。

「どっちだと思う?」A。

「1はないかも、外出れないし」B。

 見れば、出口はモザイクが掛かった様に為っている。

「2もないよ、転移魔法特有のハロー無かった物」A。

「解3、アーカイブの中」C。

「フラグ回収早すぎ」AB。


[プロシージャ]

 最初のプロシージャは、時間軸方向の情報子が

 無作為に結合する事で、生まれたと考えられる。

 無作為、無意味な無数の複合情報子の中から、

 何かしら他の情報子に干渉する物が現れた。


 或いは再結合で自身を無意味に成長させ、或いは無意味に

 自身を複製した。

 情報子の分布にむらが発生し拡大した。

 生態系の様な物が生まれ、役割の様な物も出来た。


 最も大きな斑から、結節点と神樹が生まれた。

 大きく分けてアカシックレコードは、

 データベースであるアーカイブとそれを

 管理、加工することの出きるプロシージャから成り立っている。

 それが人目に触れた。


[カラスの仮面]

「てかさ、こんだけ物がぐちゃってあるのに、埃一つ無いっておかしくね?」A。

 物置と言えば言えるのだろうか、巨大な部屋の中に大量の何かが山を成している。

「奥の壁が霞んで見える」B。

「これはなんだろう?」C。

 三人娘の一人がバタフライ型のマスクを拾った。目元だけを隠し、正体バレバレなのに、周りの者は気付いてはいけないと言うお約束のタイプのあれである。

「着けない方がいいよ、呪いとかあるかもだし」A。

「カァー」C。手遅れだった。

「サブタイトル、これ?」B。


[魔法の時代]

 プロシージャとは情報を取り込み加工し排出する仕組みの事である。

生命もまたプロシージャと言えるが、アカシックレコード由来のプロシージャとは、大きく情報子への干渉の度合いが異なっている。

 故に原世界は未加工の情報に溢れているとも言える。


 それが、レコード=神樹の興味を引いた。刹那の単位時間の後にはアーカイブに積層されるのではあるが、それは情報化された物だ。未情報化状態の生の情報は、例えば、分岐した世界の先を探る手懸かりと為るかも知れない。


 原世界に検索ラインを飛ばし、現住のプロシージャとリンクを繋いだ。魔法の時代はこうして始まった。


「解呪と言ったら、神殿だよね」A。

「うちら、そっから来たんだけどね」B。

「カァー」C。

「思うんだけどさ、お寺とかでも出来るよね」A。

「出きると思うけど、なんでまた?」B。

「ほら、ここの神殿って思いっきり和風だし」A。

「そいやそうだね、しかも、神社ってよりお寺」B。

「|カァーカァー《次回[寺へ]乞うご期待》」C。

 三人娘Cにより、人知れずネタバレかつメタ発言が為された。


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