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三娘嗤う  作者: 南雲司
3/8

ワルキューレの暴言

[先へ行く]

 円盤機の特徴は軟式気室を外板で覆ってパンケーキ型にしている事だが、紐付けが弱いと、胴体を載せる為の中央の窪みから真っ二つに割れてしまう。良く似た構造を持つ最近の水軍揚力胴式飛空艇は二本の主桁で補っていて、一段劣るレベルの魔石を使っている。

 そう、シャオでなくても作れる魔石である。空軍の新型も同様だ。


 円盤機に使われているのは、

 空技厰で劣化真空魔石が作れる様に成る前の

 水軍からの鹵獲品が元になっている。

 その構造も、桁構造ではなく、気室の斥力剛性のみで

 応力を分散させる構造だ。故に極めて軽い。

 発動機の出力で大きく劣っているにも関わらず、

 なんとか敵する事が出来るのは、

 この軽さが在っての事だろう。

 そして、その軽さは南部での大空戦で、

 相変わらず維持されている事が分かっている。


「その者を見付けて暗殺するべきか」

 士官の一人が問うた。

「寧ろ、よみするべき」

 シャオ。

「我等が常に先を往けば良いだけの事」

 翻訳魔石を弄りながら、森人の長。

 敵対するのなら討つ。

 他の国々と変わらず向き合うと衆議は纏まった。


[スキーやるよ]

 ドック用に広げた空き地に、ちょっとした雪山が出来ていた。犯人は虎治で人形達を動員して一晩で造り上げた物だ。嫁達を集めて一齣ひとくさり演説らしき事をした後、のたまわった。

「スキーやるよー」

 用意した板は行軍用の幅広短めの物で、人形達にも履かせている。この日はマスター権限で全ての作業を中止にした。嫁数百人と嫁以外のワルキューレ三十名近くが、スキー板を履いてコロンコロンと転げ回っている。初心者多すぎね?


 虎治は颯爽と、と言うか、ヨチヨチと雪山を登って、滑り降りた。ズルズルと、例のスキーの先をくっ付けて後ろを開く、あれである。

「サブタイトルってさ」

 マリコが言い掛ける。

「メタ禁止!」

 アサミが鋭く制止する。

 世の中には口に出してはいけない事が在るのだ。


 そのアサミはストックを使って、シュルシュルと滑り回り、初心者達の指導に乗り出した。マリコもそれに倣う。見渡せば他にも何人か、手慣れた者が居て、初心者達に手解きをしている。

 女の子達は転げる度に、キャーキャーと楽しそうだ。虎治は大満足である。

 贅沢を言えば、

「センパイ、教えてください」

 と誰か言って来ないか、必殺技の大ボー○ンを教えて挙げるのに…。


 てか、アサミとマリコ、無茶苦茶上手くないか?平地なのにシュルシュルクルクルしてる。


[騎士団入城]

 サスケラの眷属となった事で、

 騎士団の鷲型に慣性制御と空中隠蔽の魔石が取り付けられた。

 降下布を使わずに高速離艦が出来る様になった事で、

 前扉型の母艦も後扉型に改造しようとの案も在ったのだが、

 この大建艦ブームに乗って新造する事に為った。


 歪なダンジョンが受注した内の一つがそれである。

[城]まで上がれる性能が必要な為、

 恐らく、新建艦群の中で最も高価な物に為る。

 支払いはサスケラ持ちに為るが、そんな持ち合わせはない。

 十年のローンにして貰った。


 とまれ、護衛の鷲型を引き連れて、サスケラは上空に昇った。

[城]の上空に出る転移門を開くのだが、

 その前に護衛達に言って置く事がある。


「我が[城]ダンジョンには眷属の風竜が居るのは知っていると思う」

 返事がないが、傾聴しているだけだろう。

「その風竜はとんだ馬鹿者でな、敵味方の区別が出来ん」

「我が夫君から譲って貰った眷属のゴブリンをその日の内に食いおった」

「これから、そなたらがまみえるが、襲ってくる物と思っていてくれ」

「殿下…、いえ、陛下、襲われたとしてどう対処すれば良いでしょう」

「殺して構わん、命の聞けぬ強大な力は殺すしかない」


 サスケラは生まれついての王族だ。愛着は有ろうと切る時は切る。

 そして、今後の事を考えれば騎士団の入城は、

 どうしても必要な事なのだ。


 転移門を抜けると、サスケラの制止を無視して

 十頭の風竜が襲って来た。

 五頭がサスケラを含む騎士団に討たれ、

 残りは浮遊島に降りてこうべを垂れた。


 サスケラは容赦せず、その五頭をパージ(存在抹消)した。

 飛び上がらず静観していた風竜達は不安げに小さく鳴いていた。


[ワルキューレのボーゲン]

みんな揃えてね、オイッチニ、オイッチニ」

 虎治が音頭を取って歩行訓練を始めた。彼方此方あちらこちらに小集団が出来ていて似た様な事をしている。これからは、スキーを使った行軍訓練もあるだろう。今日中に基本的な技はマスターしておきたい。割りと皆、真面目だった。


 虎治のグループが雪山をヨチヨチと登り始めた。まだ早くないか?言わんこっちゃない、爪先を広げて登るのだが、自分のスキーを自分で踏んで転げる者が、続出した。

 アサミがワルキューレ全体の面倒を看る事に為った様だ。全員を一列に並べて初心者用の制動技をやらせている。その名もボーゲン。

「サブタイトル、字、違ってない?」

 マリコは我慢しきれずにメタ発言をした。

駄洒落回

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