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三娘嗤う  作者: 南雲司
2/8

高速母艦

[大建造計画]

 イバーラクの敗因は、戦力の分散に尽きる。

 間にツァロータを挟む西部を放置して南部に集中していれば、押し留める事は出来なかっだろう。

 空軍が六隻の飛空艦を後方に置いたのも、西部の神樹の森の同盟国を警戒しての事であり、南部であれば、温存する理由も無く前線に投入されたと思われる。

 チウヒの堅城とて空襲にどれだけ耐えられるか疑問でしかない。


 しかし、最大の切り札であった空軍は早々に退き、それが為にイバーラクには侮りがたい打撃力が残った。

「で、神樹の森に飛空艦を売ってくれと?」A。

 打診してきたのは、キオト、カンウー太守、キーナン、ウーシャラークの四勢力で、後の諸勢力は様子見をしている処らしい。

 売ると言っても、森には森人空軍に三艦、ワルキューレの母艦一艦、元空軍府に一艦、庇護下に入った騎士団の物を含めても六隻しかない。


「なので、其々の勢力に母艦と護衛艦をペアで製造販売する事に為った分けです」

 プヨとそっくりなコアが言う。歪なダンジョンは比較的簡単な母艦を二隻建造する事に為った。その責任者に三娘を呼び戻した形だ。

 三人娘は溜め息と共に了承した。

 少なくとも男(ひで)りは解消出来るのだし…。


[基準]

 使ってはいけない技術は、空中用隠蔽、最新式真空圧縮、慣性制御の三つで、入出口は後扉型、渡された最新型強襲母艦の図面を注文に従って描き変える事に為るのだが、速度要求が六百以上と高い。作業は発動機の増設と取り付け位置の検討から始まった。


「噴進型エンジンって、ジェットじゃなくてロケットだよね」B。

「だね、それがなにか?」A。

「タービン回すだけにして燃料燃やす感じにしたら、水車一個でも結構な推力でるんじゃない?」B。

 三連タンデムは水車三個を並べて使っている。それを一個で済ませようとの提案だ。この提案に危機を感じた者が居た。


 向かいの図面台で作業をしていた三娘Cが、飛び付いてBの口を押さえた。

「その事は忘れる。スチームパンクにジェットは要らない」C。

「ミサイルのジェット化を目論んだのは三娘Cじゃなかった?」A。

「巡航ミサイルはロマン」C。


「基準が分からん」AB。


[歪式]

 最新式の真空圧縮が使えない事で、防御面で不安がでた。

「気室を三層にして爆圧を分散させるのはどーよ」B。

「どれくらい有効か、評価試験が要るかも」A。

「境界に繊維構造体使えば、空軍の新鋭艦並みになるぽい」C。


「それだ!」AB。


 ここで言う[空軍]とは仮想敵になってしまったイバーラク空軍の事である。とまれ、試験の結果は良好で繊維構造体で仕分けられた三層の気室は十数本の大型ボルトに耐えた。

 この方式は爾来じらい[歪式積層シールド]と呼ばれた。


[大雪]

 ドックはダンジョンの入り口程近くを切り開いた露天式で、その所以せいで思わぬ遅延を受けた。竜骨を敷きビームを渡し出した処で大雪が降ったのだ。


「あっちゃー、これじゃ仕事にならないねー」

 虎治が視に来て、楽しそうに言った。

「ダンジョンの中で造って、転移門で出せない?」B

「コアえもーん、どうなの?」虎治。

『転移門を大きく広げる必要がありますね。魔素の消費が馬鹿に為りませんが』

「外で造っても、遅延に伴う魔素のロスは大きい」Cが指摘する。

『そうですね。納期に遅れるリスクもありますし、コアルーム前の無駄に広い空間を活用しましょうか』

「あそこなら、十隻くらい纏めて造っても余裕だね」虎治。


 ダンジョン内での建造は気温の変化もない。外で造るより能率が上がった。


[無限ループ]

 割り当てられた二隻はキオト用の物と、キーナンのそれであった。

 キオト用母艦には、円盤機が載る。

 キーナン用のには、騎乗ゴーレムだろう。

 三娘は、どちらも良く知っている。


 キオトの物は中で円盤機がすれ違える様に天井クレーンを付けた。

 キーナンの物には、中二階式の格納甲板を設け、

 四個中隊四十八騎+二騎、五十騎を搭載可能にした。

 冬が終わる前に進空式を済ませ、

 新年度と共に引き渡す段取りと為った。


「追加で、母艦が三艦、護衛艦が二艦の発注を受けましたので、お願いしますね」

「無限ループに、入った予感!」ABC。


[拡散する真空]

 元森空軍府の官舎で森人の首脳と旧イバーラク空軍の高級士官達が鳩首協議を開いていた。キオトの二百機の円盤機をどう考えるべきか摺合せが必要だと士官達が考えたのだ。


「纏めて来られれば面倒だが、防空戦なら負ける気はしない」

 ミーティアが発言した。歪なダンジョンからのオブザーバーだ。尤も、何かを決めようと言う[会議]とは違うのだから、発言の制限に差はない。

「それは、空軍も同じだが、問題は何故二百機もの数を揃えられたのかなのだ」

 士官が答える。


 円盤機に付いては、鹵獲したイバーラク空軍、水軍の魔石を利用して作成した物だとの観測が主流だった。だがそれでは間尺かんじゃくが合わない。

「空技厰からの横流しではないのか?」

 サスケラもオブザーバーとして参加していた。

「あのレベルの真空圧縮の魔石を作れる者は、まだいない」

 シャオが答える。

 この事は、何処かに高レベルの真空圧縮を会得した技官が居る事を意味した。



いきなり、波乱の予感?

政治ってこんな感じなんで、だからっていきなり戦争とかはないです。…たぶん。…だといいな。

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