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ゲーマー、自分のクラスを知る



 それから朝食を食べ終えた頃に「ヤベッ」と言いながらヨレヨレの服装でやってくる親父を見たのを最後に俺らは家を出た。

 ワイシャツネクタイにブレザー姿。

 こんなのを着るのも実に二回目だ。

 季節もちょうど春の始まりの時期で、朧げな記憶も徐々に蘇ってきそうな感じもしないでもない。


 そしてさも当然かのように隣にいるのは皆お馴染みの佐伯家の誇る双子の雅と楓。

 残る三姉妹の末っ子の葵は、俺の肩にかけたバッグに掴んで背後霊の如く後ろに位置している。

 歩くのも気怠げな様子なのはさすがである。

 俺との身長差もそれなりにあるせいで、バッグを掴む手を肩より上に上げさせてしまっているのだけは少し申し訳ないと思う。

 手を挙げ続けるって辛いもんな。

 だから掴むくらいは許そう。


「ねぇ、空は自分のクラス覚えてる?」


「んーー、一の四だっけ?」


「四組は合ってるけど、もう私たちは二年です」


 呆れるようにため息をつく雅。

 四組が合ってただけでもすごいと思うんだけどなぁ。

 二と四で迷って当てずっぽうではあったんだが。

 

「はぁ、この様子じゃ覚えてないんだろうなぁ」

 

「四組なのは覚えてるぞ」


 覚えてないが。


「そういうこと、じゃないんだけどまぁいっか」


「まぁいっか、だ?今俺のどこか重要な部分が欠けた気がするぞ。俺の中には妥協という二文字は」


「あぁぁ、わかったわかった。早く行きましょうね〜、どうなってもしらないけど」


「どういう意味だ……って置いてくなよ!俺は道がわかんないんだからな!!放っといたら帰るぞ!!」


 俺はそんなことをほざきながら雅の後をついていく。

 ちなみに放っておいたら帰るのは本当だ。



「ふぁ〜ぁ。全く姉ちゃんもソラも元気あるなぁ。私なんか、ふぁ〜、眠くて眠くて仕方ない」


「……置いてかれた……」


「お姉ちゃんに捕まってどーぞ、あ、お、い」


「……恩に着る」


「はいよ。にしてもあの二人、わかってんのかねぇ?自分がどれだけ目立つ容姿してるのか」


「……楓ねぇも同じ」


「私は身の置き方を考えてるからいいんだよ。でも姉ちゃんとかは結構自分に無頓着だからなぁ」


「……楓ねぇは心配?二人が」


「まぁ心配ではあるよ。ソラはまだわかんない。ソラがあのスカイだっていうのもまだ信じられないもん」


「……それにしては早い脅しだった」


「ま、それはそれ、これはこれってやつかな」


「…………私はちょっと心配」


「ソラが?」


「……ううん、雅ねぇ」


「なんで?」


「…………」


「ま、私は別のクラスで葵は別の学年だしね。陰ながら見守ってようよ」


「……私はもうそらに昼の休み時間にはくるように言った」


「あれぇ?葵さん行動早くない!?」


「……惰眠を貪るには奴隷が、一番」


「姉ながら妹の将来が心配だよ……トホホ。全く、何も起こらないならいいんだけどね……」


 楓は前に進む二人の影を追う。

 自分の蒔いた火の種ではあるものの、その種がどうか芽吹かないことを祈って。





「えぇー、去年の一年の間、海外に留学してた風見空くん…………あれ?」


「佐伯です」


「あ、あぁ、佐伯空くんが今年から正式この四組の一員になったので全員仲良くするように」


「え、銀髪?」


「入学式の時は黒だったよね……?」


「イメチェン?もともとのイメージはないけど」


「てかあんなかっこよかったっけ」


「ね、あんなイケメンうちにいないよ」


「あれ、佐伯って……」


「あの双子と同じ性?」


「顔は似てないけど、雰囲気がどことなく?」


「流石に違うか」


 なかなかに言いたい放題だな。

 まぁ肝心なことが出てないならいっか。 

 やはり銀髪効果あり、だな。


「コホン、えー二年四組の皆々様。ご健勝のようで何よりでございます。えー同じ学舎の生徒の一員としてこれからどうぞよろしくお願いいたします。姓を佐伯、名を空と申します。どうぞお見知り置きを」


 よしつかみはバッチリ。

 あとたしか雅からは「ぜったい、ぜぇったいに私たちが義理の兄弟であることは秘密にすること」と言われていた。

 さすがの俺もそこまでしまい。

 年頃の男女が同じ屋根の下ってだけで話のネタに困ることがないのは自明だ。


「漢字も一緒か」


「え、いつの人?」

 

「えぇーだれぇー」


「えー空くんの席は余ってる……あの窓際の席でお願いします。学習内容でどこか行き詰まったら私でもクラスメイトでも聞かれれば答えるので大丈夫ですよ。みんなも極力協力してあげてくれ」


 多分その機会はないと思いますけどね。


 そしてこのクラスはまた、すごいな。

 ある種の団結を感じる……。

 というのも俺の死角を潜るように覗き見てくるのだ。漏れなく全員。

 これはすごい。


「じゃ、今日はここまで。来週は校外学習の話に時間当てるから少しでも考えとくように」



   

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