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リア充は死ね(再掲載)  作者: 佐藤田中
第二章
49/102

13話 エロゲ

 毎度おなじみ、某海賊漫画的な不幸自慢パートだ。

 今回の不幸自慢パートにはちょっとだけショッキングな描写が含まれている。


 その内容は……、橘さんの性癖に関わることだ。

 耐性の無い方にはブラウザバックをオススメする。


 もっとも、僕としても可能な限りR-18指定を食らいそうな所は端折るつもりなのでそこはご安心を。




 それともう一つ。

 今回の不幸自慢は僕のツッコミ付きだ。


 皆さんもリア充カップルの与太話を一方的に長々と聞かされる展開なんて望んでいないだろう。




*




 橘さんは友誼部が解散された後、何があったかを語り始めた。


「私は直樹に振られた後、ショックでずっと家に引きこもってたわ。外出って言っても、精々食事の時にコンビニに行く程度」

「家の人は何も言わなかったの?」

「一応ね、今は親戚のお姉さんの家で厄介になっているの。でもそのお姉さん、ブラック企業勤めで殆ど会社に泊まり込みで働いてるの。だからお姉さん、あまり家に帰ってこないの。実質一人暮らしみたいなものね」


 そういう話、返答に困るんだけど……。




「私ね、訳あって親がいないのよ」

「そういや前にそんなようなこと言ってたっけ……」 

「まあ死んだ訳じゃないんだけどね。それで一時期色々あって、遠くに住んでる親戚の家で住む事になったのよ。今厄介になっているお姉さんはその家の長女」


 この人、サラッととんでもない事言ってるなあ……。


「まあその家でも色々あった訳なのよ。わかりやすく言うと火垂るの墓の清太みたいな感じ」


 清太って……、節子は……?


「それでその時期、学校でも色々あって、色々と大変で、親の悪評が広まるといけないとかって理由で、その家の人達から前の学校の子とはもう関わるなって感じにきつく言われてて、直樹とは連絡すら取れなかったのよ。っていうか連絡先もわからなかったし」


 なんかよくわからないけど、この人もこの人で結構大変だったんだなあ……。

 あまり同情する気にはなれないけど。




「で、私の高校の入学を決める辺りで、そこの家のお姉さんが独り立ちするって言うから、私もついて行くみたいな感じになったのよ。お姉さんだけは比較的他の家族よりは割とまともに私に接してくれたから」

「そりゃまた……」

「どうでもよさそうね」

「割とどうでもいい」

「嫌な奴」

「あんたほどじゃない」


 僕は口ではこうは言ってるが、本当のところこういう重い話はマジでリアクションに困るというのが本音だ。




「それで、昔住んでいたこの辺りにまた住むようになって、学校に馴染めなくって困っていた所で幼馴染の直樹と再会したのよ」

「それ、多分前に聞いた。その後友誼部作ったってのも聞いた」

「そうだっけ?」

「それで、友誼部が解散してからあんたや直樹は何をやってたの?」

「私は家に引き籠っていたわ」

「それはさっき聞いたよ……。直樹の方はどうしてたのさ?」

「直樹もね、私と似たような感じだったみたい。家に引き籠っていたんだって」


 やっぱりあいつ、どうしようもねえ……。


「なんでも小鳥遊椿の顔見てると罪悪感で辛くなったらしいわよ。んで、あいつにまた告白されたのがトドメになって不登校になったみたい」

「何が罪悪感だよ。一緒にラブホ行ってた癖に……」

「そうね……、私もそう思う……。んで、その後直樹はショックで引きこもってたらしいわ」


 薄々思っていたけど、やっぱりあいつはヘタレだ。




「なんでもね、食事の面倒は妹さんが見てくれるから、直樹は本当に家から一歩も出てなかったみたい。完全なひきこもりね」

「やっぱりあいつどうしようもない……。親は何も言わなかったの?」

「直樹の家ってちょっと特殊でね、両親がいつも仕事で家にいなくて、家ではいつも妹さんと二人きりなのよ」

「…………」


 前々から糞ラノベの主人公っぽい奴だとは思ってたけど、まさかここまでだったとは……。




「一昔前のエロゲかよ……」

「現実なのよ。なんでも直樹の両親は仕事にかまけてて殆ど家に帰ってこないんだって。だから滅多に話もしないんだって」

「だからエロゲかよ……」

「マジでそうなのよ」

「そういうのってラノベとかじゃよくあるけどさ、現実にいたら放任主義通り越して立派なネグレクトだよね……」

「そうかもね」

「どこの家も、そんなものなのかなあ……」

「どこの家も?」

「いや、片桐さんの家も、小鳥遊さんの家も、そんな感じだって聞いたから……」

「別にそんなの珍しくもないわよ」

「……そうだね」


 僕の家だってそんな感じだし……。




「まあそんな感じで、両親健在だけど実質妹さんだけが唯一の家族みたいになってるのよ」

「そりゃまた……」

「妹さんが凄く直樹に懐いていてね、年頃なのに他の男の子とは全然仲良くしないで、直樹とばかり一緒にいるの」

「ブラコン?」

「まあそんな感じね。可愛いし素直だしいい子よ。私も妹さんには何度か会った事があるわ」


 常識がかなり欠けている橘さんの言ういい子って、一体どんな子なのだろうか……。

 直樹の周りの女の子ってみんな変だし、直樹も変だし、どうせその子も絶対に変な子だよ……。




「直樹が引き籠っていたある日ね、妹さんに求められたらしいの」

「はあ?」

「お兄ちゃんが辛いなら慰めるって言われて、されそうになったみたい」

「直樹、実の兄だよね?」

「そうよ」

「なんだよそれ。完全にエロゲじゃん……。今時流行らないってそんなの」

「だから現実に起きた事なんだって」

「んなアホな……、ヨスガノソラじゃあるまいし……」

「だから現実なのよ。何度も言わせないでよ」


 やっぱり直樹の妹だけあって変な子だったよ……。

 あいつの周りって変な人ばかりだ……。




「で、実の妹に求められて、直樹は怖くなって家を飛び出たらしいの」

「ヤればよかったじゃん」

「他人事だと思って……」

「だって他人だもん」

「近親相姦は犯罪よ」

「しるかよ」


 僕がそういうと、橘さんはため息をついた。




「で、直樹は財布すら持たずに家を飛び出たから、それから何日か公園の水とスーパーの試食品だけで食い繋いでホームレスしてたのよ」

「最強伝説黒沢かよ……」

「正確に言うと、新黒沢最強伝の話ね」

「どっちでもいいよ……」

「そんな時、たまたま私がコンビニに行こうとしていて、橋の下でダンボール着こんで寝てた直樹を見つけて、『行く所がないならうちにこない?』って言った訳」

「突っ込みが追いつかないよ……」

「別に突っ込まなくてもいいから」


 こんな突っ込み所しかない話を黙って聞けと申すのかこの人は……。




「それで、直樹は私の家に住む事になったの」

「…………」


 同棲の経緯があまりにも突拍子がなくてにわかには信じがたい……。

 これがもしも本当だとしたら、馬鹿馬鹿しいにも程がある。




「まあ、一緒に住むって言っても、お姉さんが帰ってくる日は近所のネカフェで寝泊まりしてもらったんだけどね」

「ネカフェ代、あんたが出したの?」

「そうよ。だって直樹、お金持ってなかったし」

「ヒモかよ……」

「まあそんな感じ。でもそれ以外は完全に二人っきりの生活。殆ど同棲みたいなものね」

「だからエロゲかよ」

「エロゲエロゲってさっきからうるさいわね。非リア充のあんたから見たら男女の絡みは全部エロゲの中の出来事なの?」

「あんた等に限ってはそうだろ……」


 僕は典型的な非リア充なのでリア充の生態はよくわからない。

 でもここまでエロゲ臭い生活送ってる人が他にいると言うのなら誰か僕に教えてください。




「ってか妹さん、大好きな直樹がいなくなった訳だけど心配しなかったの?」

「一応直樹、家に電話してたわ」

「なるほど」

「友達の家でしばらく世話になるから心配しないでって言ってたわ」

「友達……?」

「そう……、友達……」

 橘さんは残念そうな顔をし、肩を落とした。



 

「直樹は私に対するせめてもの罪滅ぼし兼宿泊費って、家事を全部やってくれたわ。直樹は家事が得意なの」

「だからエロゲの主人公かよ……」

「またそれ?エロゲ好きね」

「無駄に高いからやった事ないけどね。割るのも面倒だし」

「エロゲって高いの?」

「高いよ」

「いくらくらい?」

「一万」

「たかが紙芝居ゲームにそれだけ払うなんて、世のキモオタって皆バカなのね。そんな無駄なお金使うくらいなら、女口説くのに使いなさいよ」

「だから皆割るんだよ」

「紙芝居如きに違法な手段を使うなんてバカでしょ。その無駄な労力を女を口説く方に使えば、エロゲなんてやらなくて済むでしょうに」

「いつも違法な手段でアニメ見ているあんたには言われたくないよ」

「うるさいわね。キモオタの分際で」


 もうオタじゃないけどね。




「話が逸れたわね。直樹は得意料理が沢山あってね、ビーフストロガノフとかローストビーフとかマグロのカルパッチョとかとにかくレパートリーが豊富なの」

「そいつはまた……」

「直樹は料理がとっても上手なの」

「それはそれは……」

「でね、いつもジャンクフードばかり食べてる私にとって直樹の手料理は最高に美味しかったの」

「良かったね」




「良くないわよ!」


 橘さんは急に怒鳴った。




「急に怒鳴らないでよ……」

「ずっと襲われるのを待っていたのに、直樹は私に一切手出ししてくれなかったの!」

 

 急に怒鳴った理由がそれかよ……。


「家事してる時以外は毎日ぼけーと教育テレビ見てるだけで、私には何もしてくれなかった!」


 直樹、見るからに受け身っぽいしなあ……。


「お風呂上りに全裸で直樹の前に現れて裸体見せつけたり、直樹がお風呂入ってる時に直樹のパンツ被ってそれをお風呂から出てきた直樹に見せたり、半裸で寝たり、パンイチで寝たり、全裸で寝たり、全裸のまま直樹の布団に入って寝たり、寝ている直樹の隣でこれ見よがしにオナニーしたりしたのに、あいつは何もしなかったのよ!?」

「…………」


 この人やっぱり頭おかしい……。

 本当に女かよ?


 こんな事するだけでも相当おかしいのに、一応男である僕に恥じる事なくこんなことを愚痴るなんて、どうかしているのか……?




「いつ犯されても大丈夫なようにコンドームだって常備してたのに、直樹は何もしてくれなかった……」

「…………」


 失恋した直後で自棄になってるからって、いくらなんでもぶっちゃけ過ぎだろ……。

 この人には恥じらいとかそういう感情はないのか……?




「きっと私がブスだから、直樹は私を犯してくれなかったんだわ……」

「いや、単にヘタレなだけだったと思うよ……」


 一応橘さんは、本人の自己評価はともかく、見た目だけなら十分過ぎる程に美人だ。

 小鳥遊さんという規格外の美少女を見慣れている僕の肥えた目から見ても、橘さんは可愛い方だと思う。

 チェルノブイリ原発のようなどうしようもない性格のせいで台無しになっている感はあるが、容姿自体は十分にいい。


 それなのにこれだけあからさまに迫られて何もしない直樹って一体……。

 インポなのかなあ……。




「ってか、草食系男子と肉食系女子の付き合いにしたって、あんた等のは行き過ぎだろ……」

「そう思う?」

「それだけされて何もしない直樹も直樹だけど、ヤられたくってそれだけの事をするあんたもあんただよ……」

「あんただって好きな人と同じ屋根の下にいたら、したいって思うでしょ?」

「思ったとしても、流石に全裸で相手の布団入ったり、好きな人の隣でオナニーするのってどうなのよ……?」

「それの何がいけないのよ?」

 橘さんは真顔で言いのけた。


「いやいやいや……」

「好きな人とする為なら誰だってこのくらいするでしょ?」

 橘さんの表情には一切の迷いがなかった。

 伊達や酔狂ではなく、真面目に発言している様子だった。


 やっぱこの人、物凄くズレてるよなあ……。




「あまりにも直樹が私に何もしてくれなかったから、とうとう私は痺れを切らしたわ。だから夜這いしたの」

「夜這いって……」

「男女差別的な言い方をすると、所謂逆レイプよ」




 おいおいおい……。


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