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リア充は死ね(再掲載)  作者: 佐藤田中
第一章
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18話 デート妨害

「昨日のアレはいくらなんでもないんじゃないの?」


 翌日の昼食時、僕は昨日の事を直樹に問い詰めたが、僕の質問に対し直樹は首をかしげた。


「昨日、お前小鳥遊さんから告白されたでしょ」

「告白?何言ってるんだお前」

「いや、思いっきり告白されてたじゃん。部活の後、この教室で、好きですって」

「悪いが俺には何を言っているかわからん」

「お前の方は悪ふざけのつもりかもしれないけどさ、あれじゃ小鳥遊さんが可哀想だよ」

「すまんがお前が何を言っているかわからん」

「なんなのお前?小鳥遊さんのことが嫌いなの?」

「俺が椿の事を嫌う訳ないだろ?」

「じゃあ何?好きだからイジワルしてるの?」

「だから何のことを言っているんだお前は?」

「付き合う気ないならちゃんと言えよ。あんな態度取られたら小鳥遊さんもきっと嫌な思いをしているよ」

「悪い、モエ。用事思い出した。ちょっと出てくるわ」

「ちょっと待っ……」

 僕は直樹を呼び止めようとしたが、直樹はそそくさと食べかけの弁当を片づけ、教室から出て行ってしまった。


 あくまであいつは白を切るつもりなのだろうか?

 直樹のあの態度は、まるで僕の言葉に負い目を感じているようにしか見えなかった。




*




 その日の放課後、いつものように僕は部室に行った。いつも通り部室内の皆はダラダラと過ごしていた。

 時折橘さんが「あんた将来絶対ヒキニートwww」等と言って指差しながら僕を弄り、他の皆がそんな様子を見て笑ったりしていた。何

 も変わらないいつもの部活の光景だった。


 昨日の事を皆に言うべきか僕は迷っていた。

 直樹はあくまでこの件に対してとぼけるつもりだ。

 恐らく僕が一人で問い詰めたところで直樹が真意を語る事はないだろう。

 どう考えても、このことは皆に知らせて部員全員で直樹を問いただすべき案件だ。


 しかし、それを行うのにどうしても無視できない問題が一つある。橘さんの存在だ。

 橘さんがこのことを知れば、間違いなくロクなことにならない。

 吐き気を催す程の性悪の橘さんがこのことを知ったら一体どうなってしまうのか、とてもじゃないが予想できない。


 このことを橘さんに教える事で、もしかすると僕がこの部活をやめるきっかけができるかもしれない。

 勿論僕としては直樹の小鳥遊さんに対する不誠実な態度にはとてつもなく苛立っている。

 だが確実に小鳥遊さんにとってプラスになる事態にはならないだろう。




 だから僕はこのことは胸の中だけに留めておくことにした。

 



*




 その日の部活が終わった後、僕はまた電話で橘さんに呼び出された。


「用って何?」

「あんた最近智代と仲良くない?」

「そうかな?」

「いいわねえ。クズはクズ同士理解しあえて」

 一番のクズはあんただろうが。


「それはともかく、由々しき事態が起きたわ。是非ともあんたの協力を得たいの」

 どうせロクでもないことだろうに。


「この前の湯呑ような嫌がらせだったらもう付き合いたくないよ」

「流石に短い周期でああいうことを頻繁にやるとあからさま過ぎて直樹の私に対する好感度が下がるわ。今回はそれとは別件」

 あれだけのことをやった時点で普通なら好感度はだだ下がりするのが当然だろう。

 もっとも直樹は普通じゃないから僕の価値観じゃ通じないだろうが。


「明日の夜。直樹と小鳥遊椿がデートするわ」

「マジかよ……」

「マジよ。恋愛映画のレイトショーを見るらしいわ」

 恋愛映画のレイトショーって、コナンの最初の映画かよ……。


「どうやって知ったの?」

「直樹が言ってたわ。小鳥遊椿に誘われたって」

 一体何を思って直樹はそんなことを橘さんに伝えたのだろうか。

 これだけあからさまな態度をされてるのに、橘さんが自分のことを好いているって気付いていないのか直樹は。

 いや、好いていると知りつつも適当にあしらっているということも十分考えられる訳だが。


「若い男女が夜中にデートとなると、する事は一つしかないわ」

「映画見るんでしょ?」

「違うわ。子作りよ」

 何言ってんだこの人……。


「映画館の場所や放映の時間、席の番号も調べたわ。隙を見て小鳥遊椿からチケットをくすねて確認したの。もう小鳥遊椿の隣の席は既に予約してある。偶然を装って椿の隣に座って二人のデートをぶち壊してきなさい」

「やっぱり嫌がらせじゃん……」

「違うわ。青少年として不純異性交遊を阻止するのよ」

 何言ってんだこの人……。


「っていうか、僕みたいなキモオタが一人で恋愛映画のレイトショーなんか見に行ったら不自然なんじゃ……」

「大丈夫よ。あんたは小鳥遊椿のストーカーみたいなものだから、そういう事をしたところで違和感はないわ」

「いや、でも……」

「あんただって小鳥遊椿が直樹と合体する所なんて考えるだけで気分が悪くなるでしょ?」

「…………」

 正直想像もしたくない。


「直樹のチンポを喜んでしゃぶる小鳥遊椿……。直樹の前でカエルのように股を開く小鳥遊椿……。直樹に跨って喜んで腰を振る小鳥遊椿……。想像しただけで吐きそうになるわ……」

「……確かに」

 今回ばかりは橘さんの意見に同意してしまった。


「という事で妨害してきなさい。二人のデートをぶち壊してくるのよ」

「わかったよ」

「珍しく素直ね」

「まあ……、ね」

 いつもなら橘さんの指令は絶対乗り気になれない。

 だが今回ばかりは例外だ。あんないけ好かない奴に小鳥遊さんの純潔が奪われるとなると、僕も黙っている訳にはいかない。

 



 僕としても、小鳥遊さんと直樹と僕との三人でちゃんと話したい事があった。

 先日の小鳥遊さんの告白、それを問い詰めた際の直樹のリアクション。以上の二点から推測するに、直樹は小鳥遊さんと真剣に交際する気はないように見える。

 僕一人が聞いた所で直樹は何も語らないだろうし、小鳥遊さんも一緒にいた方が尋問するには何かと都合がいいだろう。

 それに三人で話す分には橘さんに知られることもないだろうし。


 まあ思いっきり二人の恋路を邪魔している感がするのはどうかと思うが、そもそも直樹がまともに小鳥遊さんと付き合う気があるかは怪しいし、これも致し方ない。

 それに今の時点で僕は十分すぎるほどに小鳥遊さんに嫌われている。

 今更ストーカー扱いされたところで大して支障はない。そんなことより直樹の真意を確かめるのが先決だ。


 それにしても、小鳥遊さんもつい昨日直樹に告白をスルーされたばかりなのに、それにもめげずにすぐさま直樹をデートに誘うだなんて、一体小鳥遊さんはどれだけ直樹に執着しているのだろうか。




「これでよしっと」

 橘さんはそう言いながら、スマホを操作しライン経由で僕に映画館の場所の地図の画像と、映画のチケットの控え番号を送ってきた。


「そういえばさ、前々から聞きたかったけど……」

「なによ?」

「橘さん、直樹に告白とかしないの?」

「しない」

「なんで?」

「幼馴染は存在自体が負けフラグだから」

 はあ?何言ってるんだこの人。


「だから他の女を排除してから告白するの。一番目障りな小鳥遊椿を真っ先にね」

 またバカな話を……。だから現実と空想の区別はつけろよとあれほど……。


「そんなに好きならさ、自分を磨いてちゃんと告白して、それで直樹の彼女にしてもらえばいいんじゃないの?」

「止めなさいモエ。その術は私に効くわ。止めなさい」

 痛い所突かれたからギャグでこの場を誤魔化す気か。やっぱこの人どうしようもない。


「嫌がらせとかしないで、正攻法で直樹にアプローチすればいいじゃん」

「あのね、私がちょっと努力したくらいで小鳥遊椿みたいに全国模試上位にはなれないし、あんなスタイル抜群の美人にもなれないの」

「そりゃそうだけどさ……」

「あんな完璧超人が隣にいるのに私が敵う訳ないでしょ?あんなのがすぐ側にいたら私なんかを選ぶ理由はなくなるわ。だからあいつを排除して、それから直樹に近づくの。そしたら直樹は私を選んでくれる筈よ」

 だから僕を使って嫌がらせかよ。本当どうしようもないなこの人は……。


 自分を変える気もない癖に、寄りつく邪魔者を排除して好きな人を物にしようだなんて、いくらなんでもおこがまし過ぎる。

 橘さんは好きな人に振り向いてもらう為に必死で努力している片桐さんを少しは見習うべきだ。




 まあ、あれもあれでやり過ぎだと思うけど……。


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