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リア充は死ね(再掲載)  作者: 佐藤田中
第三章
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37話 その後

 僕を取り巻く環境は色々と変化したが、根本的なところは何も変わっていない。


 友達もいないし、彼女だって出来る気配もない。

 相も変わらずアニメに対する情熱も失せたままだし、バイト先と学校とジムを往復するだけの無気力な毎日を送っている。




 でもよく考えたら、一つだけ劇的に変わった事があった。


 嫌なことをハッキリ嫌だと言えるようになった。




*




 その後の僕の人生をダイジェスト形式で語ろう。




 前々から夢もなければやりたいこともなかった僕だったが、色々な事があったせいで前以上に物事に対して希望が持てなくなった。

 その結果、まったくもって勉強に身が入らなくなった。


 元々毎日の予習復習をし、テスト前は学習量を増やし、それでようやく平均よりちょい上程度の成績がなんとか維持できるような出来の悪い脳味噌をした僕だ。

 勉強をしなくなった途端、案の定学力はどんどん低下していった。


 勿論親から散々文句を言われるようになったが、親が僕からの訴えを無視したように僕も親の訴えを無視した。




 このクソみたいな社会で働く気も起きない。かといって真面目に勉強する気も起きない。

 何の喜びもない高校生活を終了した僕は、なし崩し的にキャリア課の先生から勧められた仕事をはじめた。


 そして僕は一人暮らしをはじめた。僕が一人暮らしをすると言っても、特に親から呼び止められはしなかった。

 理由なんてあの家族とはもう一緒にいたくない以外にないからだ。

 無論仕送りなんて1円もない。ようやくバイト代のまともな使い道が決まった訳だが、生活費以外に使える余裕なんてありはしなかった。


 僕が就いた仕事は、おおよそ世間でいうまともの定義からは到底離れた環境だった。

 業務内容はでかい冷蔵庫内でひたすら品物整理。あまりの寒さに鼻水が常時出続け、ポケットティッシュがいくつあっても足りなくなる。


 週休は基本1日。忙しい時はそれすらもなくなる。

 始業は朝8時、就業は大体いつも22時。

 タイムカードは手書き。勿論出退勤の時間は嘘の時間を記入。

 残業代なんて当然出ない。休日手当だって同様だ。

 挙げ句の果てに、有給は祝日と被せて自動的に消化されている。

 労働基準監督署が介入しないのが不思議で仕方がない、まさに現代の日本の労働市場の問題点を凝縮させたような職場だった。


 労働環境があまりにクソ過ぎた為、結局僕は三ヶ月でやめた。




 仕事をやめた後、僕はその会社を勧めた高校のキャリア課に文句を言った。

 そしたら「んなこと言ってたら社会でやっていけない」と偉そうに説教され、結局僕はキレて帰った。




 あまりに頭に来た僕は、手書きのタイムカードのコピーを持って労働局に行く事にした。

 でもそこですら証拠不十分だかでまるで相手にされず、結局僕はキレて帰った。




 働きたくはないが働かなければ生き残れない。

 しかし学校内の人間関係すら満足にこなせない上に対した取り柄もなく、これと言った資格も持っていない上に高卒の僕が入れる仕事なんてたかが知れていた。

 どこに行こうと最初に勤めたクソ職場と大差のない環境が僕を待っていた。

 散々ほらを吹き、ありもしない数々のエネルギッシュな青春のエピソードをでっちあげ、根が暗いのに無理して明るく振舞い、そんな面接を何社も続け、やっとの思いで内定を手にしても、いつも必ずクソみたいな環境が僕の目の前に提示される。

 過重な業務、割増賃金なしの残業、長時間労働、社員同士の虐め、パワハラ、上司からの暴力暴言。何故か僕が行く職場には必ずこれらの要素が付きまとった。 

 結局僕は肉体労働やサービス業等、様々な仕事をやっては辞め、バイトや日雇で生活費を稼ぎつつまた新しいクソな仕事に就くという生活を繰り返す事となった。



 そんなゴミみたいな生活を送るようになってから数年経ち、僕は成人となった。

 気がつくと僕はストレスをストロングゼロで埋めるだけの空虚な日々を過ごすようになった。まさにアルコールで空っぽな心を埋めるような生活である。

 確実に健康に悪いし、間違いなく早死にするような生活だ。

 でもこんなクソな世の中で長生きしても仕方がないし、恐らく年金だって貰えないだろうから、むしろ望むところではある。


 成人し、僕は合法的にエロい事が出来る年齢になった訳だが、やはり相手が現われる気配は一切ない。 

 かといって生活費と酒代を稼ぐだけでも精一杯なので、女遊びや博打みたいな金のかかる娯楽をやるゆとりはない。


 酒以外に成人してから僕がやった事といえば、精々TENGAとローションを購入した事くらいだ。

 世の中には女の子数人をとっかえひっかえして、内一人を妊娠させて精神的に追い詰めて人生を破滅に追い込んだ奴までいるというのに、僕にはそういう話は一切ない。

 まったくもって、神様って奴は不平等な事が大好きなんだと呆れてしまう。


 恐らく、僕にとってのそういう機会は高校時代に一人の女の子と親しくなれたことだけが最初で最後のチャンスだったのだろう。

 でも今は、もう彼女がどこでどうしてるのかさえわからないし、勿論彼女をあんな風に追い込んだ奴が今どこで何をしているかすらもわからない。




 っていうか、知りたくもない。





 退屈な学業とやりたくもない勉強から解放され、僕を虐めるリア充達や僕をキモがる女子達や贔屓する教師もいなくなり、嫌な家族とも離れる事ができ、誰も僕の事をモエと呼ばなくなったのに、それにも関わらずより陰鬱で過酷な現実が僕をあの手この手で攻撃してくる。

 僕を取り巻く環境は色々と変化したが、根本的なところは何も変わっていない。


 僕は誰にも迷惑かけずに普通に生きていきたいだけなのに、駄目人間の僕はやはり何処に行ってもつまはじきにされてしまう。


 


 ほんと、何も変わっていない……。


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