烏の兄さんと朝の挨拶
「兄貴、おはようございます!」
見張り担当の若手の声で目が覚めると、森に朝日が射し込むいい天気だった。
「おう。問題はなかったか?」
「はい、何も問題ありません。ホー族の連中も昨夜は大人しかったようです」
昨夜は月がなかったからな。連中の狩りも捗ったか。知ったことではないが、こっちにちょっかい出さないのはいいことだ。
「わかった。お疲れさん。呼び出し掛けるまでは塒で休んでていいぞ」
「へい、失礼します!」
俺は羽根を拡げて伸びをすると、水場に向かって飛び降りた。
「おはようございます」
「おう、おはようさん」
「よお。おはよう」
「ああ、おはようさん」
水場には三々五々カー族の連中が集まっていた。
俺はこの森の昼を牛耳る、カー族の所謂若頭と言ったところだ。
昼間はヒト族にも文句を言わせない森の支配者だが、残念ながら夜はホー族が幅を利かせている。
なんせ俺等は夜目が効かないから、こればっかりは仕方がない。
あいつ等とは度重なる抗争の末、昼と夜とで棲み分ける紳士協定を結んでいる。
とは言え、昔からの恨みもあるから小競り合いは絶えない。まして、ホー族は俺等がヒト族から物資を調達しているのが気に入らないらしい。
あいつ等にはヒト族がどでかい箱に集めている袋の中から物資を取り出す器用な嘴がないからな。
なんて考えていたら腹が減ってきたな。隣のヒト族の棲家までちょっくら調達しに行くか。
「あら、カー族の兄さん。おはよ」
「よう、ニャー族の。元気か?」
ヒト族の箱のところには先客がいた。ニャー族の三毛姉さんだ。
ニャー族も本来競合相手なんだが、向こうさんは個人主義だから俺は三毛姉さんとは親しくさせて貰っている。
「昨夜は盛り上がっていたようよ。ほら、そっちの袋もコケー族のお肉が一杯」
「ははは、違ぇねぇ、ヒト族様様だな」
「でも蓋が邪魔なのよね」
「よし、任せろ。ここをこうやってだな。そら!」
俺はどでかい箱のちゃんと閉まっていない蓋から覗く大きな袋を、結び目を咥えて箱の外に引き摺り出した。
「ナ~イス、これいただいていくわね~」
三毛姉さんは袋を切り裂くとたっぷり肉がついたままの骨を咥えて建物の陰に走っていった。
俺は俺で、暫くその場で肉を突いたり芋を齧ったりした。
がちゃんと音がしてどでかい箱の向かいにある窓が開いて、顔馴染みのヒト族が顔を出した。
「おはよう」とかなんとか言っているんだろうけど相変わらず何が言いたいのか分からない。
いつも「何言ってるのかわからねぇよ」って言っているのにこっちの話を聞きやしねぇ。
まぁ他のヒト族と違って俺達を追い立てもしないし、敵意はなさそうだからいいんだけどな。
おっと、ヒト族の乗った箱が走って来たぞ。あれだ、このどでかい箱の中身を持って行く奴だな。
今日はここの箱の日か。それじゃ、邪険にされる前に退散しますかね。
お馴染みさんよ、それじゃまたな。
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「あの烏、いつもの奴だな。資源回収の日はごみ処理車を無視するのに燃えるごみの時はとっとと逃げ出す辺り、曜日でも分かっているのかね」
「まさかぁ、回収の人の顔でも覚えているんじゃないの?」
「そんなもんかもしれないな。俺に文句言ってるみたいだし」
遅れ馳せながら、鳥視点第二弾です。今度は「黒いの」こと烏視点です。
猫と結託して可燃ごみのコンテナを漁っていたのは事実です。梟との小競り合いなんて知ったこっちゃないんですがね。
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