自称・コミュ障令嬢の慰めは
私は、シーニムル。公爵令嬢。
小さい頃人見知りしてたせいでいじめられてから、軽く人間不振ぎみ。
まぁいじめに関しては制裁したけどね。
私は唯一憧れている人がいる。我が国の王女、イーリス様だ。
イーリス様は凄い。
私と同い年なのに、勉強だって運動だって私の三倍はできる。
それに、とっても謙虚。
王室のなかでも明らかに優秀なのに、全く鼻に掛けることがない。
大人とも子供とも同世代とも、ニコニコと分け隔てなく話せるし。
とっても格好良い。私もあんな風になりたい。
だから、最近はパーティーのたびにイーリス様を見つめている。
勿論、遠くから。
……情けないとは言わないで欲しい。
私みたいな引きこもり予備軍には、これが限界なのだ。
☆***☆
ある日、王妃様からの命令……ではなくお誘いによって、イヤイヤ……ではなく喜んでお茶会に参加させて頂いた帰り道。
……なにやら、蹲っている人らしき物体が目に入った。
このまま放置しては………駄目か。
それは公爵令嬢としても人としてもアウトだ。多分。
仕方ないから、取り敢えず声をかけてみる。
「あのー……大丈夫ですかー……」
「グズッ……うう、姉上……」
……泣いてる……? しかも、この声、は……。
猛烈にする嫌な予感を頭から振り払い、私は再度呼び掛ける。
「もしもしーー大丈夫ですかー?」
「ああ……姉上……ズズ……スピ…」
はぁ~~。聞こえてない。
うん。面倒だし、一応声掛けたし、もう放置ってことで!
しかし、私がそう決めた瞬間、泣いていた人は顔を上げた。
「……誰だ」
「通りすがりですー……」
ったく、親切に介抱してやろうとした人間に、そんな不審者を見るみたいな目を向けてきやがって………おっと本音が。
まぁ私に気付いたのなら、大したこと無いだろう。
ここは逃げるが吉だ。
が、しかし。そうは問屋がおろさない。
私はがしっと手を捕まれ、逃げることが出来なくなった。
「俺の話を聞いていけ」
「……はい」
本当なら、蹴飛ばしてでも逃げたかった。
だが……今顔を見て確信した。
この人は、王太子様だ。
だから、蹴飛ばして逃げることは勿論、頷くしか選択肢はない。
コミュ障だって、意外と弁えるのだ。
☆***☆
「姉上が……結婚するんだ……」
「……はぁ」
王太子様の姉上、つまりイーリス様。
私の崇拝している方だが……まぁ別に結婚の話を聞いても全く心が動かなかった。
相手は王族だし。そりゃ結婚くらいするだろうさ。
それくらいで私の崇拝は止まらない。……もし、私が男だったら話は違ったかもしれないけどね。
それより、王太子様がこんなにも嘆いていることが不思議だ。
全く噂に聞いたことがないが……シスコン……というものなのかな?
「あの、女神の如く美しく、聖母のように優しい、姉上が…結婚。信じ、られない……」
成る程。まうごとなきシスコンだ。
よく世間に知られなかったな、というレベルで。
私の知る王太子様は、ただただ優秀だという噂しか知らない。
「姉上は、一つしか変わらないのにも関わらず、いつも大人で………賢くて……」
王太子様が馬鹿だったという説もあるのでは………っとゲホンゲホン。
駄目だ、シーニムル。彼は王族だぞ。
「どうだ! 信じられないだろう!?」
「……そうですね」
主に、王太子様の本性が。
………じゃなくて。話はイーリス様だっつーの。
あ、でも。
「大好きな姉上には、幸せになってもらいたいものではないのですか?」
「馬鹿か、お前は。幸せにするのは、俺でなきゃいけない」
ああそうですか。お熱いことで。
でも知ってます? この国、姉弟は結婚出来ませんよ。
心の中で悪態をつきつつ、涼しい顔で取り敢えず王太子様を宥め賺す。
「あなたは、国を幸せにする義務があるでしょう。それと同じで、イーリス様は決められたところへ嫁ぐ義務があるのです」
「でも!」
「我が儘を言ったところで無意味だと、あなた様なら分かっておられるでしょう?」
そう言って笑いかけると、王太子様は面白いくらいに苦い顔をして顔を伏せた。
しかししばらく経つと、王太子様は顔を上げた。
今度は、腹を決めたような顔をしていた。
「………そうだな」
「分かって頂けましたか」
「ああ。……ところで、お前、名は何と言う?」
「…………………名乗るほどのものでは……………失礼します………」
都合が悪くなれば逃げる。
これが一番。
私はさっさと王太子様を撒いて、家路についた。
このあと、王家主催のパーティーで身バレしたりしてね。
イーリス様と出会って一騒動あったり。
何故か王家と婚約することになったり。




