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ハッピーエンド

自称・コミュ障令嬢の慰めは

作者: 佐田くじら
掲載日:2019/03/25

私は、シーニムル。公爵令嬢。

小さい頃人見知りしてたせいでいじめられてから、軽く人間不振ぎみ。

まぁいじめに関しては制裁したけどね。


私は唯一憧れている人がいる。我が国の王女、イーリス様だ。

イーリス様は凄い。

私と同い年なのに、勉強だって運動だって私の三倍はできる。

それに、とっても謙虚。

王室のなかでも明らかに優秀なのに、全く鼻に掛けることがない。

大人とも子供とも同世代とも、ニコニコと分け隔てなく話せるし。


とっても格好良い。私もあんな風になりたい。


だから、最近はパーティーのたびにイーリス様を見つめている。

勿論、遠くから。


……情けないとは言わないで欲しい。

私みたいな引きこもり予備軍には、これが限界なのだ。




☆***☆





ある日、王妃様からの命令……ではなくお誘いによって、イヤイヤ……ではなく喜んでお茶会に参加させて頂いた帰り道。

……なにやら、蹲っている人らしき物体が目に入った。


このまま放置しては………駄目か。

それは公爵令嬢としても人としてもアウトだ。多分。

仕方ないから、取り敢えず声をかけてみる。



「あのー……大丈夫ですかー……」


「グズッ……うう、姉上……」



……泣いてる……? しかも、この声、は……。

猛烈にする嫌な予感を頭から振り払い、私は再度呼び掛ける。



「もしもしーー大丈夫ですかー?」


「ああ……姉上……ズズ……スピ…」



はぁ~~。聞こえてない。

うん。面倒だし、一応声掛けたし、もう放置ってことで!


しかし、私がそう決めた瞬間、泣いていた人は顔を上げた。



「……誰だ」


「通りすがりですー……」



ったく、親切に介抱してやろうとした人間に、そんな不審者を見るみたいな目を向けてきやがって………おっと本音が。

まぁ私に気付いたのなら、大したこと無いだろう。

ここは逃げるが吉だ。


が、しかし。そうは問屋がおろさない。

私はがしっと手を捕まれ、逃げることが出来なくなった。



「俺の話を聞いていけ」


「……はい」



本当なら、蹴飛ばしてでも逃げたかった。

だが……今顔を見て確信した。


この人は、王太子様だ。


だから、蹴飛ばして逃げることは勿論、頷くしか選択肢はない。

コミュ障だって、意外と弁えるのだ。





☆***☆





「姉上が……結婚するんだ……」


「……はぁ」



王太子様の姉上、つまりイーリス様。

私の崇拝している方だが……まぁ別に結婚の話を聞いても全く心が動かなかった。

相手は王族だし。そりゃ結婚くらいするだろうさ。

それくらいで私の崇拝は止まらない。……もし、私が男だったら話は違ったかもしれないけどね。


それより、王太子様がこんなにも嘆いていることが不思議だ。

全く噂に聞いたことがないが……シスコン……というものなのかな?



「あの、女神の如く美しく、聖母のように優しい、姉上が…結婚。信じ、られない……」



成る程。まうごとなきシスコンだ。

よく世間に知られなかったな、というレベルで。

私の知る王太子様は、ただただ優秀だという噂しか知らない。



「姉上は、一つしか変わらないのにも関わらず、いつも大人で………賢くて……」



王太子様が馬鹿だったという説もあるのでは………っとゲホンゲホン。

駄目だ、シーニムル。彼は王族だぞ。



「どうだ! 信じられないだろう!?」


「……そうですね」



主に、王太子様の本性が。

………じゃなくて。話はイーリス様だっつーの。


あ、でも。



「大好きな姉上には、幸せになってもらいたいものではないのですか?」


「馬鹿か、お前は。幸せにするのは、俺でなきゃいけない」



ああそうですか。お熱いことで。

でも知ってます? この国、姉弟は結婚出来ませんよ。


心の中で悪態をつきつつ、涼しい顔で取り敢えず王太子様を宥め賺す。



「あなたは、国を幸せにする義務があるでしょう。それと同じで、イーリス様は決められたところへ嫁ぐ義務があるのです」


「でも!」


「我が儘を言ったところで無意味だと、あなた様なら分かっておられるでしょう?」



そう言って笑いかけると、王太子様は面白いくらいに苦い顔をして顔を伏せた。


しかししばらく経つと、王太子様は顔を上げた。

今度は、腹を決めたような顔をしていた。



「………そうだな」


「分かって頂けましたか」


「ああ。……ところで、お前、名は何と言う?」


「…………………名乗るほどのものでは……………失礼します………」



都合が悪くなれば逃げる。

これが一番。


私はさっさと王太子様を撒いて、家路についた。

このあと、王家主催のパーティーで身バレしたりしてね。

イーリス様と出会って一騒動あったり。

何故か王家と婚約することになったり。 

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