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第6話「悪役令嬢は調合のスキルを持つ女の子を連れてくる」

 やはり電柱を立て、電線を引く作業は一日では終わらなかったので、昨晩も屋根を取り外し3人並んで眠りについた。


 翌朝、朝風呂に入り目覚めたわたしたちがストレッチをしているときに早くもわたしと婚約したいという候補者がやってくる。


 剣を左の腰に下げているが、装備を見る限り旅人の服装。

 この砂漠を剣士の装備では途端にのぼせ上ってしまうからな。


「あんたがカグヤ嬢か?」

 お付き合いしたい人の顔くらい覚えておけ!


「いかにも。はるばる来たところ悪いが、忙しい身の上だからな、手短に頼む」


「自分より強い人じゃなければ、フィアンセにしないそうだな。ということは、俺をフィアンセにするってことだ」


 何を言っているんだ、この目の前の男は……


「1点!」

「0点です!」


 ケティとコウコの二人が勝手に男を点数付けする。


 低すぎる点を口にした二人に対し、この男はにらみつけるが二人は全く気にするそぶりはない。


「まっ、わたしより強ければ婚約を考えよう。好みではないが」


「随分と余裕があるじゃないか。どうして俺がこの灼熱砂漠を歩きここまでこれたと思う?」


「興味がない。時間が惜しい。さっさとかかってこい」


 男が剣の柄に手をかけると、自分を囲む小さな円が出来、冷気があふれ出てくる。


「氷魔法。魔法剣士か。だが興味がない」


「綺麗な顔はやめておくぜ。早いとこ降参してくれ」


「そんな遠慮はいらん」


 男が振り下ろしてくる冷気の剣を閉じた扇子で受け止めた。


「またこの砂漠を自分の足で戻るのは大変だからな。手伝ってやろう」


 扇子で男の胸を突き、少し距離を離して、パッと開き、


「中風の舞!」

 至近距離からの風圧と風力によって、遠くへ、遠くへ飛ばしてやった。


「2人ともさっきの点数付けは何点満点なのか、聞きたい」


「10点!」

「100点です!」


 おいおい、コウコは100点満点中の0か。あの男も可哀そうに。


☆ ★ ☆


 朝ごはんを食べ終わった後、マルゲイの町に行き、作業員を連れてきた。今日は昨日よりもさらに多い。今日中には何とか電気を通してくれるかもしれない。


 ほぼ手付かずの新地を眺め、ゆっくりやればいいという思いと、早く形にしたいという思いが錯綜し始めたとき、ほっぽって置いた水晶玉に反応があったようで、わたしの前に向かってきた。


 昨日飛ばした小さな魔法玉はいわば目。この水晶玉にその視野が移り、わたしはそれをすべて把握できる仕組みだ。


「ケティ、コウコ」


 砂のお城を作っていたケティと読書中のコウコを呼ぶ。


「二人の意見に叶う子だと思うが、どうかな?」


 水晶には、きょろきょろと挙動不審な感じで左右を見まわしている女の子が映し出されていた。


「いい。カグヤさん、レッツゴー!」

「甘いものでおもてなししましょう。準備をしておきます」


 おもてなしの準備を始めた二人を残し、絨毯は使わず、空へと舞い上がる。一人ならこちらの方が速い。水晶を見て、女の子がいる位置を確認し、少し飛ばし気味なくらいの速度で進んでいった。


☆ ★ ☆


 帰りは移動魔法を使えるので、そう時間はかからなかった。


 女の子を連れ、戻ってきたときにはテーブルとその上にクッキーやら飴玉などが置かれ、ケティとコウコが戻ってきたわたしを出迎える。


「ここ、どこですか? なんでまみは連れて来られたんですか?」


 怯えているようだが、ぎゅっとわたしの服をつかんで離さない。

 子猫のようだ。

 青いウエーブのかかった髪。八重歯がチャームポイントかな。


 可愛い、可愛い妹のようだ。

 少し大きめのピンクのパーカーは泥で汚れていて、爪の中には砂が入り込んでいた。


「さっき話しただろ。力を貸してほしいと」


「な、な、なんで瞬間的に移動なんて出来るんですか? ここは一体どこなんですか!」


 とうとう大粒の涙をまみは流す。無理やりに連れてきたわけではないぞ。

 簡単に説明もしたのに……

 しくしく泣きだしたその子をケティとコウコが傍に来て優しい言葉をかけていた。


 いずれにせよ、少々精神に難があるかもしれない、この女の子を絶対に仲間にしなければならない。

 何しろ「調合」のスキルを持っている子は少ない。


 そうでないと町の建設が始まらないのだから!

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