第5話「悪役令嬢は煙の魔人をものともしない」
電柱を建てたり、電気を伸ばしてくる作業をぼっ~と見てはいられない。
砂漠一帯を風のカーテンで多い、作業員の人が円滑に動けるようにしておいて、わたしたちは絨毯で上空へと舞う。
「あれ、交渉がうまくいったのにカグヤさんご機嫌斜めですね」
「お父様……わたしがこの地に居ることを大々的に流したそうだ。婚約したいと申し出てきた男性に。個人情報を横流しされた」
「カグヤ様、強いですから。信用の表れかと。それにわざわざこの地までやってこなくては行けませんから、それだけ想っている、情熱あるとも言えるわけで」
「わたしと結婚すればわたしが持っているお金は旦那が自由にできると思っているのかもしれないぞ」
「――そこはカグヤ様の眼力で見破りください。ところでどこへいくのですか? 人材が見つかったのですか?」
「いや、そうではない。ケティが作った分厚く高い壁を破るかもしれないという輩がいるかもしれないから調査する」
「えっ、まさかそんな巨人いるわけがないじゃないですか? そんな大きさの魔物っているんですか?」
「わからんぞ。いても不思議ではないからな」
「やだぁ、やだぁ、そんなの。カグヤさん、あたしに安心を」
後ろから強く抱きしめられ揺さぶられる。
「風の波から外れる! 場所を考えろ。まったく、だからこうして調査に向かっている。ギルドにも寄せられている案件だそうだ。噂程度だから見向きもされないようだが」
☆ ★ ☆
砂漠の奥に砂の祠と湖があった。
噂の場所はこの辺りのはず。絨毯を降下させゆっくりと着地した。
よほど怖いのか、ケティは私の服をぎゅっとつかんだまま、左右を見まわしている。
「大丈夫。もし巨人などいても、わたしより弱いはずだからな」
「それはそうですけど……」
「入り口で待っているか?」
この問いにケティはブンブンと首を横に振り、
「カグヤさんと一緒が絶対に安全」
コウコは祠の砂をつつき、
「どうやら誰かが意図的に作ったようですね。自然に出来た感じではありません」
「この祠の歴史にさほど興味はないが、人工的ならケティと同じ土魔法使いの類か。中を調べるぞ」
たしかにこの祠の砂は砂漠のそれをただ固めたものではないようだ。
風でまったりしないのがその証拠。
光魔法で近距離を照らし進んでいくと、奥に台座がありランプのようなものがその上に乗っていた。
「ランプ……」
「ただのランプではないようです。魔力を感じます」
「どうやら、ひびが入っているようだな。中に何かを封じ込めたかしたが、時間経過するうちに少しずつ破ってきているというところか……」
「ひぃ、そのひびのとこから煙が漏れ出て、あれ、魔人じゃないですか!」
ビビりまくっているケティはわたしをゆすりながら、煙が具現化したそれを指さす。
「ふん、どうやら噂は本当だったようだ。巨人でなく魔人だったな」
「封じ込めたまではいいですが、ランプの方が音を上げている状況ですね。ケティ、出番だよ。砂であのランプを修復、強化して」
「するから、するから! あの煙のデカいの何とかして!」
「あんなのは見せかけじゃ。どうということはない」
ケティは今にも泣きだしそうに、両目に涙をためていた。
「わかった。泣くことなどない。この祠の天井をぶち抜く! ランプのついでに祠も修復しておいたほうがいい。あのランプの中にいるのとガチ戦闘も面白そうだが、ケティが腰を抜かしそうなのでやめておくか」
扇子を閉じたまま、具現化した煙に狙いを定め、小さな竜巻を起こす。
その竜巻に煙は吸い込まれ、上昇し祠の天井を突き破る。
「ほれ、邪魔者は消えた。修復を」
「カグヤさんもそばにいて」
「はあ~、ケティは子供だ」
「14歳だもん」
ランプを地面に置き、ケティが砂でランプを修復&強化した。
というか、もはやランプにも見えないように、完全にランプごと砂で固めてしまう。
「もうちょっと原型を残すとかはないのか?」
「念には念を。ガチガチに固めました」
わたしたちは祠から出て、ケティは祠自体を修復し強化した。
「カグヤさん、念のために監視をここにおいて」
「私もそうするのがいいかと。魔王と関連するものかもしれませんし」
心配性な二人の言葉を聞き、わたしは小さな魔法玉をそこに放つ。
お空に飛ばした煙の魔人は一応魔物扱いだったようで、袋に入った白い粉が手に入った。
煙の魔人……倒して手に入ったものは『白い粉』