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第2話「悪役令嬢と夜空の景色」

「まず生活するうえで必要なのは、衣食住です。お洋服はコウコが小さくしてたくさん持って来ていますし、食料も当面はしのげるだけの量を所持しています」


「ふむ、問題は住居じゃな。ベッドが一つではやはりさみしいの」


「とりあえず木を探すのがよろしいかと。私たち3人でも、掘っ立て小屋程度ならできるだろうとも思います」


「では、絨毯に乗って近場の森林地帯でも探すかの」


 コウコは畳んだばかりの絨毯を広げ、ケティと共に後ろへと乗り込む。

 わらわは風に頼んで、絨毯を浮遊させると同時に風に近場の森の位置を訪ねる。


「30キロほどのところにオアシスと森林があるとのことじゃ。しっかりつかまっておれよ。飛ばすぞ!」


☆ ★ ☆


 数分後、


「わ~、綺麗そうなお水ですね。よく干からびないなあ」


「地下水が湧いて溜まっているのではないか?」


 水のない乾いた砂の上へと静かに降り立つ。

 右にはオアシス、左には木が沢山あった。


「乾いていますが、樹齢も丁度よさそうですし、硬度もあり木材としては良いものかと思われます」


 コウコが木に触れて説明をしてくれた。さすがに博識よ。


「では、少しだけ頂戴しよう。二人とも離れておれ」


 扇子を広げ、わらわは風の力を少しだけ借りる。


「低風の舞!」


 鋭い風の刃が木を簡単になぎ倒していく。


「お見事です。小さくしても?」


「うむっ、頼んだぞ」


 コウコは左手で触れ、スキルを発動して倒れている木を次々にスモールにして行った。


「カグヤさん、あれ……」


 後ろからケティに袖を引かれ振り返る。

 見た目はワニだが、紫の煙を漏れ出しているということは……


「ほう、こんなところにも魔物がおるのか。低能な奴らじゃ。隠れていればやられずに済むのに」


「あたしがやります!」


 ケティは両手を合わせ、


「砂波!」


 地面の砂に手をつく。文字通り、砂の波を作り魔物はそれに飲み込まれた。さすがレアな土魔法使いよ。ケティにとって石や砂は武器にもなり、身を守る手段にもなる。


「あのくらいのレベルなら問題はないようじゃな。レベルは上げておくに越したことはない。わらわが二人は全力で守ってやるが、弱者より強者の方が何かと都合がよいからの。闇の教団や闇の騎士なんていう悪はこの世界にも多くいるようじゃ。ではゼロの町へ戻るかの」


 ☆ ★ ☆


 戻ってからは、丸太のようにした木でベッドを囲いこむように並べた。それだけで日は落ち、パンと紅茶という簡単な夕食を済ませ、濡らしたタオルで体をお拭き、歯磨きをしてベッドに入り込む。わらわの左右にケティとコウコが体をくっつけた。


 天井はぽっかりと開いたままだったが、それが功を奏し見上げると一面の星空が瞳に映る。


「うわ~、綺麗ですね。何も邪魔されずにこんなロマンチックなものが観られるなんて、少し感激です。男の子が傍にいたらやばい感じです」


 ケティは目を輝かせ、星が光る空の感想を述べた。


「うむっ。暗がりに星空を映し出す。星座の説明も兼ねねば案外、人を集められるやもしれんな」


 わらわの言葉に反応し、コウコはさっとメモ帳に走り書きしてくれる。


「素晴らしい案です。カグヤ様」


 わらわは柔らかいコウコのほっぺをつついてやる。


「この町に作るものリストに加えておこうかの」


「カグヤさんはどうして町づくりに興味があるのですか?」


「少し前に転移してきた者に会ったのじゃ。その者はわらわの知らないことを色々知っていた」


「転移者?」


「別の世界から飛ばされてきた人のことだよ、ケティ」


「別の世界?」


「この世界は1つではないのじゃ。その転移してきた者には当たり前の物が、この世界では当たり前でなかったりする。だからその者が当たり前の物がこの世界にあったらどうなるかと思ったのじゃ。美味しいものや便利なもの、この世界にあったらどうなるのかを見てみたい。何もないゼロの町なら作りやすいじゃろ。まあまずは自分たちの一番必要なものを作るが。わらわは巨大な図書館を作りたい。ケティとコウコは?」


「あたしは温泉施設かな。たくさんのお風呂に変わりばんこに入ってみたいな」


「よいではないか。追加しよう。コウコはどうじゃ?」


「……映画館」


 少し恥ずかしそうにコウコは答える。


「映画館かぁ。この世界にはあまりないからの。よしよし、追加しよう……ところで、わらわが今一番必要だと思っているものがわかるかの?」


「電気ですね。今は開いていますが、天井を付けたら、夜空は見えませんし。生活するうえでやはり電気は抱えません。あたし、真っ暗は苦手だから、早急に何とかしましょう。旦那様に電線工事を依頼するとか」


「家から出た身じゃ。あのお父様が素直に聞いてくれるとは思えぬ。交渉する材料が必要じゃ。一晩寝ればすぐに思いつくじゃろ。それから建築スキルを所持している者を見つけて手を貸してもらわぬと、作業が進まぬな。いつ、加盟ギルドの召集がかかるかわからぬしな」


「カグヤ様はお忙しいですからね」


「何を言っているのじゃ、コウコ。お主もギルドに一緒に登録しておいたぞ」

「えっ!」


「ケティもじゃ」

「えっ!」


 二人ともぽか~んと口を開けびっくりした様子でお互いを見合わす。 

 うむっ、わらわと行動を共にすると決めた以上、ギルドも一緒なのは同然のこと。


 それにただ町づくりをしたのでは、面白くないからの。

この世界にないもの……プラネタリウム。

別世界にはあるもの……プラネタリウム。


魔ワニ……倒して手に入ったものは『ワニ革』

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