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第1話「悪役令嬢とゼロの町」

 そろそろ目的地が近い。少し絨毯の高度を下げ、下の様子が目で見ても判断できるようにする。


 ここはどうやら砂漠地帯のようじゃ。風のカーテンを解けば、途端に日焼けしてしまうであろう。どちらかと言えばわらわは色白の肌でいたいからの。紫外線は天敵じゃ。


「カグヤさんの風魔法に守られていなければ途端に外気温に音をあげそうですね」

「旦那様はなぜこのような土地をお持ちだったのでしょう?」


 絨毯の後ろに並んで正座姿で乗っているケティとコウコが少し楽しそうに口を開く。

 2人ともわらわのことを案じて、付いてきてくれた頼もしき2人よ。


「確かに外気温は人間が快適に生活できるレベルを超えておる。なぜという疑問は、お父様は砂漠地帯にエンターテイメントの施設を建設する案があったらしいのじゃが、もろもろの理由で着手できなかったのじゃ」


 わらわの風ではなく、自然の風で砂埃が舞っておる。

 人が住む場所としては好ましくないのは確かなようじゃ。わらわには関係ないが。


「この辺りじゃ。降りるぞ」

 絨毯をゆっくりと地上へと降下させていく。


「本当に何もないところじゃ」


 視界に入るのは、砂埃と永遠とも続いていそうな砂漠地帯。

 上空には頑張りすぎとも思える太陽。


「ではお止めになりますか?」

 ケティがからかうようにわらわの顔をのぞき込んだ。


「まさか。ここにゼロから町を作るのじゃ。興奮が止まらぬ」


「カグヤさんのその性格大好きです」


 ケティはしゃがみ込み、砂に触れる。


「おぬしらは自らわらわについてきたのじゃ。存分に力を貸してもらうぞ」


「そのつもりですよ。まずはカグヤ様の物になったこの土地の砂を舞わないように操作しましょうか。許可をお願いします」


「自由にやってよい」


 わらわの言葉を聞き、ケティは土魔法で大規模な土地一体の砂を操作した。


 ケティ。現14歳。栗毛の髪をカールし、生意気なことに年下にもかかわらず、わらわと同じバストを有しておる。わらわを諦めた男性がケティとコウコに口説くこともしばしば。


 わらわの理解者。何でも言える相談役で土魔法を鍛えさせておる。わらわのことはさん付けじゃ。


「ふぅ、わかりやすいように砂に光沢を混ぜておきました。では、カグヤさんとりあえず敷地内を快適温度に」


「わかっておる」


 わらわは右手を掲げ、敷地内温度を微風と風のカーテンで26度に設定した。


「涼しいです……とりあえずカグヤ様、おやすみになられますか?」


 ルルブ家で召使いをしていたコウコはリュックサックから小さなベッドとこれまた小さな枕を左手で取り出し、ベッドに右手で触れるとそれは元の大きさに変化する。


 コウコはスキル【拡大縮小】を所持していて、左手で触れたものを縮小、右手で触れたものを拡大できるのじゃ。


 コウコ。現14歳。人懐っこい子で、褒めると格段に伸びる典型的なタイプ。ショートカットの左右にそれぞれ緑とピンクのリボンを付けている。


 顔立ちは幼いが、美女じゃ。わらわのことは様を付けて呼ぶ。


 そしてわらわはルルブ家の長女カグヤ・ルルブ。現16歳。緑の艶髪のロングストレート。例の事件後にもかかわらず婚約者候補が押し寄せてきて敵わぬ。これは別に自慢などではない。


 あの事件以来、わらわのことを悪役令嬢などと評す輩が多いとケティとコウコが可笑しそうに話していた。なんと言われようが気にはせぬ。言いたい輩には言わせておけばよい。家を出る口実ができたのは良きことよ。


 最強の風魔法使いとはわらわのことじゃ。今まで一度たりとも戦闘で負けたことはない。

 わらわが結婚相手を選ぶ条件は事件以来変更した。それはわらわより強い殿方じゃ、加えてわらわの好みかどうか。


 さっ、この土地に最高の町を作ろうではないか!

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