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第14話「悪役令嬢の初実践(7歳の時)」

 迷子の森。一度踏み入れると戻れなくなるという迷信みたいなところから昔の人が名付けたらしい。

 中は本当に入り組んでいて、魔物も出現する場所なので、近寄るのは騎士団員くらい。


「カグヤお嬢様、大丈夫ですか?」


 アキコのズボンをぎゅっと握っていたので、心配で団長は声をかけたのかもしれない。


「平気。カラスの鳴き声が嫌いなだけ。それとカグヤでいいわ」


「手を繋ぎましょうか。いつでも風魔法を唱えられるようにしておいて」


 わたしはズボンから手を離し、アキコの右手をぎゅっと握る。


「ねえ、どうして魔物は存在するの? 倒しても浄化しないとまた現れると聞いたけど」


「この世界には魔王という者が存在します。魔物は魔王の手により作り出された生物と言っていい。倒しても魔王がいる限り、再度構築していく仕組みですが、それはすべてに当てはまるものではない。例えば今回のこの森にいる魔物は再度構築されないでしょう」


「どうして?」


「大量生産型でないというのが、あたしの意見かな」


「つまりその魔物は単体しか存在していないと」


「その通り。作り出す過程が異なるのだと思います」


 わたしはアキコを見上げて、


「もう一つ聞いてもいい。どうしてその魔王、そして闇の教団って悪が存在するとも聞いたけど、誰も討たないの?」


「まず第一に居場所が特定できていないこと。闇の教団はわれわれ騎士団よりも上の力を有しているとう話をある人から聞きました」


「じゃあ、その教団よりも上の力を持てばいいんじゃない」


 アキコ団長はびっくりしたように目を見開きわたしをみる。

 なにか変なことを言ってしまったか?


「もしかして、カグヤは……」


 ばきっと木の枝を踏みしめる音が聞こえ前方を見ると、トラのようなものが三体。紫の煙見たなものを出し、こちらに今にも向かってきそうな感じだった。


「手を離していいわ。それと1体はわたしが」


「大丈夫ですか? あれは結構攻撃力がありますよ」


「問題ないわ。対峙しても脅威は感じない」


 わたしは両手に風を集め玉にして、右、左と魔物に投げる。

 2体の魔物が玉に吸い寄せられ、バキバキと木をなぎ倒しながら遠くに飛んで行った。


「ごめんなさい。2体をわたしが貰ってしまって」


「末恐ろしい」


 どこか嬉しそうな表情で、アキコ団長は残った一体を剣で切り裂いた。


☆ ★ ☆


 奥へと進み、問題の魔物の姿を目の当たりにする。

 口からは唾液を垂れ流し、果物をむしゃむしゃと口に入れている。


 大きな熊のようで、葉で作ったようなマントと鎧を付け、こちらに気が付くと視線が飛んできて、大きな斧を手にした。


「森のくまさんだったね。たしかにここのボスみたいな雰囲気がある」


 わたしは恐れずに2歩前へ。


「アキコ団長、試したい戦闘方法があるの。やらせてくれる?」


「ケガだけはお気を付けて。旦那様と奥様にあたしが顔向けできない」


 ここに来るまでの戦闘を見て、団長はわたしを信じてくれているのかもしれない。


「了解」


 まず試したいことその1は近距離での戦闘。両手、両足に風をまとい、その力で間合いを詰め、魔物の顔面に右こぶしを振り切った。


 拳は痛くはない。触れるのはあくまで風でコーティングしている部分だし。

 敵は数歩後退した程度か。まだまだ威力という意味では改善が必要だし、大きいだけあってなかなかタフ。


 敵は私を敵と認識したようで、大きな斧を振り下ろしてきた。


(臆してはダメ。大丈夫なはず)


 試したいことその2。風のガード力。全身を風で覆い攻撃を吸収し、反発させてみる。

 ピシっという音がして、斧の刃の部分に罅が入ったようだ。

 ガードの感覚を受け止めている斧の部分に集中すると完全に斧は折れた。


 足に風を纏い、ジャンプして熊のあごの部分をアッパーする。


(ダメだ。まだまだ威力が弱い。イメージ通りにはいかない。元々の筋力が足りていない感じだ)


「近距離より遠距離の方が戦いやすいかな」


 地面に着地し、両の手に風の球を作り、それを合わせると自分の髪まで物凄いなびく。

 狙いを定めるのが難しいけど……


「風の裁き!」


 押すというより、感覚的には放つ感じでそれを足元がふらついている魔物に発射した。

 森を壊すのは何となく気が引けるので、イメージを下から上に突き上げる感じに修正して、魔物を上へ上へと上げていった。


 しばらくして地面に落下してきた魔物はそのままふっと消えた。


 わたしに騎士団員たちから盛大な拍手が浴びせられる。


 しまった。つい出しゃばった真似をしてしまった。初実践はサポートに重きを置こうと決めていたのに。


 こうして7歳になったわたしの初戦闘は終わりを告げた。

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