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第12話「悪役令嬢と過去の自分(5歳の時)」

 久しぶりに彼の顔を見たからかはわからないが、その夜、少し過去のことを思い出してしまった。


 クロガネが邸に出入りする回数が減少しだしたころから、わたしは魔法の修行を開始していて、読書と魔法の訓練で1日の大半の時間を割いていた。


 魔法を扱えるようにするには、体の中の術式に各魔法を記憶し、使用したいときに呼び出せばいい。

 術式にはすぐに書き込めるが、それを使用するには自らの魔法力とそれなりの訓練が必要なのだ。


 ルルブ家のお庭の訓練場にて魔法使いの書と僧侶の書などを積み上げて、黙々と記憶しては、術式に記述し、各魔法を的に目掛けて試し打ちをする。


「ファイラァ」


 右手を前に出し、炎をイメージし、名称を口にすると勢いよく炎が手から放たれ的に命中する。


「う~ん」


 的の焦げ跡から威力を計算すると、どうやらわたしの属性は、

 風→水→火。という順番らしい。

 決して火属性が苦手というわけではないのだが、風の属性が他に比べて相性がいいと言うべきか。相性がいい属性を極めていった方が、魔法使いとして名を上げられる気がする。


 次は僧侶の書を読んで回復魔法等もできるようにしておこう。

 本を積み上げていた木の陰には2人の女の子がいて、それぞれページをめくっていた。


「カグヤさん、遊ぼうよ」

「遊びましょう」


 ケティとコウコが本から顔を上げる。2歳年下の二人はわたしにとって妹みたいな存在だ。

 二人のご両親がルルブ家と仕事上で関りがあり、物心ついたころから2人ともよく遊んでいる。


「今は修行中なの」


「修行ってこの魔法のご本読んで、使うこと?」

「私、このご本全部読破しました」


「そう。えっ、コウコ読破ってこれ全部?」


「はいっ」


 すごい、わたしはまだ半分くらいなのに。


「じゃああたしもカグヤさんと一緒に修行、修行する」

「私もお付き合いします」


 1人よりも3人の方が楽しいかもしれない。二人の両親にはいい顔はされないかもしれないけど、何か言われたら説明、説得はわたしがすればいいか。


 この日から三人での修行(訓練)の日々が始まった。


☆ ★ ☆


 3人での魔法訓練をするようになって1週間が経過したころだ。


 土魔法の書から顔を上げたコウコが、わたしとケティに自信満々な顔を向け、


「あたし、土魔法使えるようになるね」


「ケティ……土魔法使いはいわば特殊な属性で、使いたくても使える魔法じゃない」


「コウコの言う通り。わたしでも出来なかった」


「よおぉし、見ていてよ」


 何のおまじないなのか、パンと両手を合わせ、ケティは地面に掌を向ける。

 それだけでぼこぼこと地面がえぐれ、土が少し舞った。


 予想しないことが目の前で起き、わたしとコウコは思わず顔を見合わせる。


「ほら出来たよ! やっぱりあたし土魔法の使い手になるよ」


「そうね。素晴らしい才能。伸ばさない手はない」

「コウコはすごい大器なのでは……」


「そういえば、最近クロガネ君あんまり見ないね。カグヤさん、喧嘩でもしました?」


「してないわ。あいつ、なんかわたしより強くなるからって修行してるみたい」


 ケティとコウコは、んっ? という顔をして視線を合わせた。


「ひょっとして、自分より強い人と結婚するっていいませんでしたか?」


「えっ、コウコすごい。なんでわかるの?」


「そりゃあわかるよ」


 ケティは吹き出しそうになるのを何やら我慢している様子で、わたしの頭の中は不思議だらけに陥る。

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