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第11話「悪役令嬢はクロガネの前でのみ素が出る」

 悪との戦闘において、手を抜いて戦うなど言語道断だとわたしは思っている。


 目の前にいるのはクロガネ。わたしにとって悪ではない。今日で16戦目。最初の方は手を抜いていたと指摘されたらその通りだ。だが最近は隠している力をどんどんと見せていかないとわたしが敗北を味わうのではないかと危機感がある。


 一戦一戦確実に成長の跡が見えることは楽しくもあるが。


 わたしは昨日より、今日と戦闘能力を上げる努力をしているのだ。それでも以前と違い隠している力を見せないといけないのは、クロガネの努力(成長速度)が上昇していて、わたしのそれを上回っているということ。


 そんなことを考えながら、クロガネの雷を帯びた一太刀を強化している扇子で受け止めた。


「降参しろよ、カグヤ」


「冗談も大概にしなさい。強くなっているのはさすがに認めるけど、わたしと肩を並べるにはまだまだ甘い」


 わたしは体を風の障壁で覆い、クロガネをじりじりと引き離す。


「自然の力って偉大だよな。雨が降り、風が吹き、雷は降ちる」


「クロガネ、やはり極めつつあるようね。魔法を使用するのとはまた違う領域に」


 体は完全に電気を帯びているかのように、髪の毛が逆立っている。もともとクロガネの髪はとんがっているが、それが雷のせいで一層とんがっていた。


「言っただろ。俺はどうしてもお前に勝たなきゃいけないんだ。光の力で」


 距離を縮めてきている。近距離戦闘でもまだ負けることはないと思うが、余裕を見せすぎるとスキが生じてしまうかもしれない。


 仕方ない!


「強風の舞!」


 渦を巻く風の一撃を放つと同時に左手で水魔法をその中に混合させ、


「嵐の舞!」


 筋金入りの負けん気の強さ+根性でクロガネはそれを剣で止めていたが、わたしは正面からの嵐を四方からのそれに変える。


「なっ、そんなのありかよ!」


 留めきれなくなったそれがクロガネを上空へと運んだ後、しばらくして地面に落下してきたのを見て、ケティは土魔法で土を柔らかくし、ショックを吸収した。


「はい、16敗目」


「今回はかなりいい線いってましたね」


「くそっ。混合魔法まで出来るのか! 反則だぜ。また負けた」


 右こぶしを作り、柔らかな地面を叩き悔しがる。


(危なかった。また隠していることが一つ減った)


「クロガネ、一人でギルドに入ったよね、なんで?」


「決まってるだろ。カグヤが入ってるからだ。あとギルドメンバーにやばい奴がいないか見張れるからな」


「あっ、そう……」


 弱いくせに言うことは一人前だな。


「あれ、カグヤさん顔赤くないですか?」


 ケティがからかうようににやりとした視線でこっちを見た。


「本気で戦ったから、少し熱っているだけよ」


「出た! カグヤさん、それがツンです」


 なにかこの子は面白がっている気がするな。


「今度はこうはいかないぞ。こう少しで追いつく気がする」


 相変わらずのタフネスぶりで何事もなかったように立ち上がる。

 タフさだけなら間違いなく、わたしより上だな。


「出来れば来る間隔をもうちょっと早めてほしいんだけど。本気の実践感覚を忘れたころにこないで」


「クロガネさん、カグヤ様のリクエストですから言うとおりに」

「そうだよ、クロガネ君。待たせ過ぎは良くないからね」


 いや、別に待っているわけではないんだからね!


「じゃあまた近いうちに」


 クロガネは鳥の背中に飛び乗り、


「なんか最近闇の教団が人数を増やしているって話と魔物のレベルがやけに上がったって話を聞いた」


「そんなこと言われなくても気づいてるし、わたしには何の意味もない」


「なんかあったら、必ず助けに行くからな」


「いや、だから意味ないってば」


 無邪気な笑顔を向け、クロガネは上昇し私から離れていく。

 いつまで経っても、子供みたいなんだから。

 ケティとコウコが楽しそうにこっちを見ていた。


「なんだ、二人とも?」


「何でもないです。カグヤさんンはクロガネ君と話す時だけ、若返るんだなあと思って。素が表に出るというか、高貴なカグヤさん、あたしたちとのカグヤさん、素のカグヤさんとでも素敵」


「どうも、偉そうには出来ないし、子供のころの感じが抜けないだけだ。それにケティたちと話すときとクロガネとではさほど変わったりはしていない……と思う」

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