赤の令嬢
東京軍事教育高校、略して東高。
俺は、その校舎の2年III組の窓側の一番後ろの席に座っている。
今は、誠と2人で登校後学年も教室も違うため別れて、ぼーっとしている。
仲の良い友達も読む為の本すら持って来てなどはいないためすることがない。
別にナイフや銃の手入れしようと思えば出来るのだが司令科の女子や他の学科の女子が怯えたり怒ったり睨んで来たりそれぞれアクションで圧力を掛けてくるため何もできない。
結果的に言うとおそらく悪い噂を立てられる俺が悪いんだろうがどうしても思ってしまう。軍人ならそれぐらいで変なアクションを起こすなよと。
そして、俺は覚えていなかった。俺の妹を俺の前で侮辱したやつを意識が無くなっても殴り続けたことを覚えていなかった。
などと特段何でもないことを適当に考えていると赤い何かが目の前に来て止まった。
その赤い何かがいる方向を見ると見覚えがあると言うかこの学校にいるならば絶対に知っている美少女がいた。
立華華恋(たちばな かれん)あの『華』の一族の子女だ。
いわゆる令嬢って呼ばれるようなやつだ。
才色兼備なおかつ令嬢で顔は男が好みそうな母性が溢れていながら年相応の可愛らしさもある。スタイルは胸の辺りもスレンダー気味だが程よく肉も付いておりむっちりとまではいかないが女子特有の柔らかそうな白い肌がチラチラ見えている。運動神経は抜群で魔術適正も
キャパシティーも群を抜いて高い。
学校の中でも家柄や彼女のスペック的にも容姿的にも有名で一部ではファンクラブも造られるレベルだ。
それ以外にも戦闘力の高い者にしか貰えない異名なんて言う恥ずかしい2つ名を持っていて《紅蓮の皇女》と言えば彼女となる。
まとめると金持ちで可愛くて何でも出来る娘ってことだ。
ただし彼女に話しかけるような人間はいない。
なんせ彼女は『華』の一族。日本国内屈指の魔術師一家の一員だ。その中でも彼女は才能に恵まれた。
だがそんな化け物じみて見える完全少女は他人から賞賛、憧れ、嫉妬などをされなおかつ他人から避けられている。
俺は彼女の笑顔と言うものを見たことがない。
「黒山くん、お話があります」
透き通った美しい声。それに胸をドキっとする訳も無く、ただ単調に返す。
「残念、こっちは話したいことはない。丁重にお帰り頂けますか」
そう抑揚を一切付けず表情を一切出さず、立華の席を指差す。
「そうはいきません。私にとっては大事な事ですから」
「俺にとってはどうでも良い事だ」
「黒山くんは私の事嫌いですか?」
「・・・は?」