可愛い妹
東京軍事教育高校、東高と略されるこの学校は、第三次世界大戦での人員や自衛力の不足を考え国立のこの学校を作った。だが自分から兵士になって死にたがる奴はいない。故にこの学校では学科の選択はいつでも変更出来るうえに高い自由性で有名なのである。
午前6時30分いつもの起床時間だ。起きなければならない。そう思い身体を起こすと先程までは気付かなかった布団に膨らみがあった。それをめくって見るとそこには触り心地の良い黒髪と可愛らしく整った顔つきの美少女が俺を抱きしめていた。
俺の妹の黒山誠だ。
「誠、起きろ起きろって」
ぶっきらぼう言い方とはべつに優しさの込もった手つきで軽く揺さぶるが起きない。
起きてくれないと俺が走りに行けないんだけどなぁと考えていると更に強く抱きしめてくる。
そして、その行動で疑問が確信に変わった。
「ま〜こ〜と〜狸寝入りは良く無いな〜」
ほっぺを優しく横横縦縦丸描いてちょんと、つねる。
「痛い痛いお兄痛いって許して〜」
そう言いながら抱きしめていた腕を解く。
「お腹空いたのか?」
「ううん、そうじゃないんだけどちょっと怖い夢みちゃったんだ」
そう作り笑いで答える。
誠は偶にこんな感じで甘えて来る時がある。
やっぱり両親が居ないから無理している部分があるのかも知れない。
俺は、誠の頭の上に手を置いて撫でる。
「大丈夫、お兄ちゃんが居るから大丈夫だ」
「うん」
今度は、作り笑いなんかじゃなく可愛らしい笑顔を見せてくれる。
この笑顔を守る為なら何を捨ててでも戦える。そう自分の命すら捨てて良いと思える程。
もう二度と大切な人を失わないように。