プロローグ
私、西内ミライは高校を卒業してすぐに就職することを希望していた。
今の時代、そのへんの大学を出たくらいじゃ、いい就職先にありつける可能性なんて低いことが明らかだし、大学でやりたいと思うことも取り立ててなかった。
正直、ここまで育ててくれた親には感謝しているし、「ミライ」なんて希望に満ち溢れた名前も嫌いじゃなかった。
でも、自分がどうしてもこの社会に適合していないことは明らかだった。
友達と遊んでいても何か物足りなさを感じるし、大学でまた友達作りをするのかと思うと、少しうんざりしてしまう。
いつの間にか一人でいることに落ち着いてしまった、と。
そんな風に、希望が持てないまま、就活のために志望している会社の前の横断歩道を渡ろうと踏み出したそのとき、
ドン!!!!
「あ。ひか・・・れた・・・?」
私はなんの痛みも感じず、ただスローモーションの光景を見ながら、気が遠くなっていくのを感じた・・・。
「・・・? なに・・・?」
体が動かない。
「そっか、私、車にひかれて・・・。」
「・・・ん!」
力をふりしぼって、なんとか目を開けると、そこには到底信じがたい光景が広がっていた。
現代社会の都市にはなじまない、あまりにも巨大な城が建っていた。
真ん中の塔が100mはあるだろうか、左右の塔も50mくらいはありそうだ。
そして、目の前にいる教会にいる人のような服装をしたこの人は・・・?
「あら、起きましたか?」
「あ、はい。 すみません、私西京都から就活で来たんですけど・・・」
「西京都・・・? お聞きしたことがありませんね。 どこか遠い地からいらっしゃったようですね。」 「あなたも、このヒュテルンバッハ城の官吏試験を受験しに来たんですか? 正装していらっしゃるようですし。」
「ひゅてる・・・え?」
どうやら、この城の名前らしい。官吏っていうのは、確か官僚とかつまり、公務員ってことだったような・・・。
私の着ているスーツが正装ということだろう。
でも、どうしよう。この人に正直に自分のことを話して通じるんだろうか。どうみても、自分がいた世界とは別の世界に見えるこの世界の人に。
とにかく、話を合わせてみるしかない・・・!
「はい。そうなんです。やっぱりこの不況の時代ですから、官吏を目指すのが無難だと思って。」
「そうですよねえ。ダークドラゴンが作物を荒らしまわったり、銀の商人達が自分たちの利益しか考えない活動ばっかりするから、国としては不況になっちゃってますものねえ。」
何をいってるか、全然わからない。どうしよう。
「ところであなたお名前は?」
「あ、ミライといいます」
「ミライさん・・・。 いいお名前ね。 私はセチトカといいます。さあ、そろそろ試験の集合時間が近いわ。一緒に会場に行きましょうか。」
その時の私は、もう元の世界にいてもつまらない日常が続くだけなんだし、こんなゲームやアニメーションの中のような、ファンタジックな世界で一体何が起きるのか、という少々の期待を胸にしていた。
そして私は、突然飛んで行ったこの異世界で、人生で初めての就活をすることになるのだった。




