部屋の無音は愛せない
空室 空いた空間 無音なスペース
人の気配を感じさせない 意味を持たせない
持つことに興味を感じない そういう部屋
そこでじっと座り込み 体育座りで顔を伏せ
空間と一体になるまで
自分と自分以外のものとの境界が一切なくなるまで動かず
静かに呼吸していると
孤独が耳元でささやくように 語りかけるように
ひっそりとした声ですらすらと 意味もなく吹き込んでくる
その声にうっすらとした鳥肌が立つようなら
自分はまだ寂しさを味方に出来ていないのだ
自分と自分以外のものだけじゃない 別の誰かが
間に在ってくれればと 心のどこかで渇望しているのだ
一体ではなく個としてまだ 自己を保有したいと
そう願ってやまないのだ
孤独が怖い 一人は嫌
誰かと誰か 不特定多数の人々に認識されていたい
そう思っている内はまだ 部屋の無音は愛せない
もちろんその空間を理解することもできない
自分の心と向き合うことなんて
一層出来やしないのだ