五話
訓練場を出た、アウルとアルディートは馬に乗り、カラミタ商会本部の南にある第一鉱山に向かった。廃坑となって放置されていたのをピグロ辺境伯から買い取り、商会の研究所兼実験場となっていた
。
「しかし、品種改良されたとはいえ丈夫な馬ですな」
「そうだな。これも開発部の成果の一つだ」
商会の騎馬隊に使っている馬は開発部より品種改良がおこなわれ、丈夫で大柄の体格となっている。もはや、新種であった。
「魔導機動歩兵隊の条件を満たす兵士はなかなかおりません」
「少数精鋭の部隊だからな、条件は厳しくなる。アルディートも機動実験の時はみていたろ?」
「はい。私の知る戦いは無くなるとあの時、確信いたしました」
アウルの主動になって開発部の事業が二つある。一つが現代武器の開発である。これは銃火器の開発が主である。
もう一つが魔導装備の開発である。銃の開発により、これまでの鎧などが使い物ならないことは明白である。既存の鎧に魔方陣による強化を施していたがそこまで効果が無かった。アウルは根本的に計画を見直すことにした。
銃弾に耐えきる装甲、戦闘がスムーズに行えるだけの機動性、魔方陣を活かした強力な火力、この三つが重要だと考えた。
そして、この三つを元に考えだされたのがセヘル・リッター計画であった。
開発は順調であったが最大の問題が解決が出来ずにいた。それは魔力量の不足であった。搭乗者だけの魔力で補おうとすると成人男性四人分の魔力が必要となる。
これは軍の上級魔術師の魔力量に相当する。少数精鋭とはいえ、ある程度の数は必要である。暗礁に乗り上げていた時、一つの進展があった。
魔粒子理論の完成であった。魔法協会はこれまでは体内にある魔力を呪文により発動しているとされているが、ほぼ同一の魔力量を有するはずの同種の動物達が魔物化する個体としない個体に分かれてしまうのか解明されていなかった。
この疑問点を研究し続けていたのがアマンダ博士であった。アマンダ博士は魔法ギルドから異端とされ迫害されていたところをアウルがカラミタ商会の開発部にスカウトした。
空気中には魔粒子があり、それを人体が吸収し、魔力の回復や発動に利用していることが解明された。証明のために開発された、魔粒子を魔力に還元するための魔方陣を転用することでセヘル・リッターの魔力不足を補おうとした。
しかし、還元魔方陣の効率が悪かった。だが、二人目の天才が現れた。ミラである。魔方陣を作り直し、最適化と効率を上げることに成功したのである。そして、アマンダ博士とミラによる、魔力コンデンサ〈アウル命名〉の開発でセヘル・リッターの稼働時間は巡航状態で六時間、戦闘状態で三時間まで上がった。
「ということだ。アルディート」
「半分以上分からないことですな」
「俺もアマンダ博士の報告書が辞書に見えた」
話している間に開発部の拠点である第一鉱山に着いた。道中には畑も多くの実りをつけていた。これも開発部における品種改良と肥料の恩恵である。
「アウル様、待っておりました」
「出迎え、ありがとう。ダンテ」
ダンテは銃の開発を任されている、ドワーフの技術者である。酒豪以外で少々問題がある男であった。
「アルディート殿もどうぞ、中へ」
「お邪魔する」
鉄の門が開いたが暗く奥は見えず、まるで地獄の門から地獄を覗いているようだった
時間が進まない
殆ど説明です。申し訳ない
魔粒子についての説明は別に書くかもしれません
セヘル・リッター計画は魔導装備開発の一部という認識