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三十三話

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 魔物暴走(スタンピート)から三か月が経ち、南辺境も安定を取り戻していた。ミラはアウルを避けるようになっていた。


「しかし、領地が増えても運営する人間が少ないんだよ」


「そうですね、行政官の育成も急務ですわ」


 ミラと入れ替わるようにエリーゼがアウルを助けていた。ミラは帰還した次の日には事務長をエリーゼに変わった。もとからいつでも変わっていいようにエリーゼに事務の仕事を教えていた。


 混乱はあったがエリーゼも仕事になれて、収束した。しかし、兄妹喧嘩が領地運営まで支障を及ぼすとはアウルは考えていなかった。


「最近、すまないな」


「気にしなくていいですよ。アウル様の妻として、頑張ります!」 


 アウルもS・R(セヘル・リッター)の訓練も減らし、執務に力を入れていた。ミラが離れたことにより、ミラが望んでいたことが叶っていた。


「S・R改の生産も順調、今年の冬は領民も飢えることも無く、年越しが出来る」


「お父様も今年は豊作だったから民の生活も安定していると手紙に書いてありましたわ」


 カラミタ領は冬を迎え、春に向けて力を蓄えていた。アウルもまた、来年に向けて行動を開始していた。


「モルトの工作もまだ終わってない。俺も出来る限りの努力をしよう」


 遠くの山は雪が積もり、町には雪で遊ぶ子供たちの声が響いていた。


「アウルー、ちょっと来てー」


「わかった、今行く」


 アマンダは外で孤児院の子供達と雪ダルマを作り、遊んでいた。アマンダが手を振ると周りの子供も手を振る。その後ろでは申し訳なさそうに職員が繰り返し頭を下げていた。


「どうした?」


「この子がね、S・Rに乗りたいんだって」


 アマンダは子供を一人、アウルの前に連れてきた。その子供の瞳は夜のように黒く、髪は雪のように白かった。


「名前は?」


「クラウス」


 クラウスと名乗った少年は短く答える。


「じゃあ、クラウス。お前はS・Rを何だと思う?」


「武器」


「そうだな、確かに武器だ。もっと簡単に言うと人殺しの道具だ。軍人は銃やS・Rを使い、人を殺す職業だ。領地や好きな人を守る為に結局は人を殺さなければならん。覚悟が無い者は軍に必要ない」


 アウルは大人げないと思いつつ、わざと人を殺すことを強調してクラウスに話していた。カラミタ領は危険な軍に入らずとも職に困ることはなかった。


「領主様もその、殺したのか?」


「二十三人だ。今でも人の肉を切った感触と殴ったときに骨が砕けた音は夢やふと瞬間に思い出す」


 同時に砲撃した時に死んだ人間もいるかもしれないからもっと増えるはずとアウルは思った。


「夢を持つことは良いことだが、先ずは先生の言うことをよく聞いて、友達と良く遊べ」


 クラウスの頭を乱暴に撫でるとアウルは屋敷に戻った。何故かクラウスがミラに重なって見えた。


「俺も疲れてるんだろう。ゆっくり休むか」


 後ろからはアマンダが子供達にまた、遊ぼうねーと言い、着いて来ていた。そして、追いつくとアウルを抱きしめた。


「アウルも不器用だね」


「本当のことを言ったまでだ」


 ふふんと笑うアマンダに少しだけ苛立ちを覚えたが忘れることにした。


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