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三十一話

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「フシル隊は魔物が射程に入りしだい、射撃開始。S・R(セヘル・リッター)隊は横から抜けてくる敵を迎撃しろ」


「「了解」」


 アウル達は朝には防衛陣を構築し、魔物を迎い撃った。冬も近づき、風は冷たいが寒さを感じさせないほどの熱気が南辺境軍を包んでいた。


 S・R隊もフシル隊を援護し、交代や補給を支える。他の領軍も魔物を屠り、戦線を支えるがこれまでの戦闘の疲労が溜まり、劣勢になりつつあった。


「攻撃の手を緩めるな。一分隊着いて来い、押されてる戦線を救援に行く」


「お供いたします」


 近くに居た分隊長がアウルに着いてくると言い、左翼が突破されそうなれば魔物を倒して立て直し、右翼に突撃し孤立した部隊があれば助け出し、それこそ東奔西走の働きであった。


 しかし、数は中々減らない。連日の戦闘なれば数で劣る人類側が負ける。時間は過ぎて、夜となっても戦闘は続く。


「時期に砦を放棄しなければなりません」


「フシル部隊にはあまり損害は出ておりませんが他の歩兵やS・Rには損害が出ています。防衛に徹して後、四日で戦線は崩壊すると思われます」


 両翼を配置した領軍の損害が酷く、その穴を埋めるべく支援したS・R隊も損害が出ており、予想より早く戦線が崩壊すると判断が出来た。打開策が出ないまま夜が明けた。この悪夢は覚めないのだろうか。


「オネスト分隊、俺に着いて来い」


「了解です」


 昨日からアウルと戦場を駆けている分部隊はフムス防衛戦も経験しており、練度が高く、多くの魔物の死体を積み上げていた。


 本当に死ぬかもしれないと思うが顔に出さないようにしていた。もし、自分が責任の無い歩兵だったらすでに逃げ出しているとアウルは思った。しかし、フシル部隊やS・Rに逃走兵は居らず、全員が戦場に立っていた。


「オーガ・ナイトを視認」


「撃破するぞ。援護を頼む」 


 何度目だろうか、朝から始まった攻防でジェネラルやナイトなどはかなりの数を倒したがキングは一向に姿を見せない。もしかしたら、まだ森の中に魔物が居るなら恐ろしいことだ。だが、一匹でも多く殺さなければ、こちらが殺さられる。全体が極限状態であった。


「士気は落ちる一方だな」


「終わりが見えないのは人間には苦にしかなりません。我々カラミタ領軍もギリギリの状態だと思います」


 アウルが溢した言葉にオネストが答える。この状態においてもオネストは冷静に判断していた。アウルにとって非常にありがたい存在であった。


「アウル様、海から未確認のS・Rが上陸したと情報が報告されています」


「なんだと?」


 稼働できるS・Rは全てこの戦場に投入している。アウルの脳裏に浮かんだのは奪取された最後の一機であった。まさか、ここで仕掛けてくるとは誰もが考えていなかった。


「こ、らは、、みたり、うぐ、。み、から、、。これ、、かん、ぽう射撃を行う。当戦域から退避せよ。繰り返す。こちらはカラミタ領軍。ミラ・カラミタ。これより艦砲射撃を行う。当戦域から退避せよ」


「全機、聞こえてたな!歩兵隊の離脱を支援しろ。味方の砲撃に当たるなよ!」


 ノイズ交じりの通信が鮮明になると恐ろしいことが聞こえた。ここに軍艦からの砲撃すると言っている。確かに軍艦は完成していたが乗員の訓練が完了していないために航海すら儘ならないはずだった。


「S・Rを識別を確認。S・R改のテスト機です。S・R改後方に歩兵の展開を確認、アビスポン領軍です」


「ミラはうちの最新鋭艦に他の領の人間を乗せたのか、、、」


 アウルは苦笑するしかなかった。打開策が無い今、突然の援軍に士気はうなぎ登りであった。全軍の離脱が確認されると海から黒煙が上がり、砲撃が始まった。砲撃は地形を変えても続いた。


「砲撃を終了する。要請があるまで海上にて待機する」


「支援、感謝する。さぁ、行くぞ。もうひと踏ん張りだ」


「「おう」」


 目に見えて、魔物の数は減った。そして、魔の森から黒いオーガが出てきた。


「オーガ・キングを確認!」


「出てきたな!」


 オネスト分隊が露払いをして、オーガ・キングまでの道が開かれた。アウルはキャノンをパージし、雑魚に構わずに疾走した。


「オノレ、ニンゲンメ。ジャマヲスルナ!」


「知るか!貴様らが森から出てきたのが悪いんだろうが!」


 キングははアウルの攻撃を真正面から受け止め、押し返した。睨み合いながらじりじりと距離が縮まる。


 他の部隊が援護に来たがとても戦闘に入れるレベルではなかった。互いのあり得る攻撃を読み合い、攻防を繰り広げる。


「魔物分際でやるな」


「キサマコソ、ニンゲントハオモエナイナ」 


 剣戟は神速に至った、その姿はまるで剣舞を舞っているようだった。次の瞬間だった、アウルの手から剣が離れた。


「モラッタ!」


 その場に居た全員がアウルの首が刎ねらると思った。しかし、アウルはオーガの剣を受け止めた。


「マホウノケンダト。コザカシイ」


「諦めが悪いのが人間なんだよ!」


 アウルが持つ剣は魔法で生成された剣である。S・Rは魔法を使うことを想定して作れていないため、一か八かの賭けであった。


「次で決める」  


「コイ!ニンゲン!」


 また、神速の攻防が始まった。キングが上段から切りかかり、アウルはそれを受け止めようする。アウルは笑みを浮かべた。


「ナニ!?」


 アウルは剣を消した。キングの剣は空を切り、大きな隙が出来た。


「死ね」 


 剣を再度、生成しキングの首を切り落とした。首が宙を舞い、胴体から血しぶきが上がり、辺りを染め上げていた。


 同時に魔物達の殆どが黒い霧となり、消えていった。


「オドロキダ、ニンゲン」


「お前、首だけで喋れるとか化け物かよ」


 キングはなんと首にだけになっても喋り続けた。


「モシ、コノマモノタチノシクミがシリタケレバ、モリヲシラベルコトダナ」


 意味深なことを言い、キングも霧となって消えた。


「皆者、勝鬨を上げよ!」


 ピグロの勝利宣言で全軍が叫ぶ。生き残った喜びと王国を守り抜いた誇りを胸に叫ぶ。しかし、アウルはオーガ・キングが言い残したことが心に引っ掛かり、喜べずにいた。



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