三話
食堂の料理は人気があり、多くの職員が利用している。何故ならアウルの知識を活かした料理を出したところ、大人気になり、利用する職員が増えた。
「今日はトマトパスタにしようかな」
「私はシーフードパスタにします」
二人は受付で注文をして、空いてる席を探した。職員が料理を掻きこんでどうぞどうぞと言い席を空けた。ありがとうと言い座って、周りを見ると空白地帯となっていた。
「兄さま、お昼からの予定は?」
「救導隊の新兵訓練と開発部の視察かな。開発部は試作ライフルが出来たらしいからね」
アウルとミラが話しているとウェイターが二人分の料理を持ってきた。その後ろから一人の男が近づいてきた。
「相席、良いですかね?」
「どうぞ、モルト」
アウルからモルトと呼ばれた彼はサージの代からカラミタ商会に仕えており、主に情報と商会の暗部を取り仕切り、影から商会を支える人物である
「ピグロ辺境伯は上手い具合に王国上層部に取り入っています。半年後にはアウル様は貴族の仲間入りです」
「お金で買える爵位なんて笑えるな」
アウルは事前にピグロ伯や周辺の重要人物に賄賂を渡し、男爵に任命させるように手をまわしていた。
「私は賄賂などの狡い手はお嫌いと思っておりました」
「嫌いってわけではない。その賄賂をもらった人間が自分の仕事をこなし、世のためになるなら俺は賄賂はあってもいいと思う。しかし、貴族やそれに連なる騎士どもは一部の富裕層しか助けず、更には無辜な民を傷つける。いらないだろ、そんな人間」
食事を終え、報告を終えたのかモルトは席を立ち、お先に失礼致しますと言って食堂を出た。後ろ姿は少し満足気であった。
「相変わらず、掴めない人だよね。モルトさんって」
「モルトは爺さんの頃から仕えてるからな。信頼はできる」
厨房にお礼を言い、新兵訓練の見学の為、訓練場に向かった。
「私はフラルゴさんのところに行くねー」
「気を付けてな」
フラルゴは開発部に所属している技術者の一人である。銃の開発と同時に進行しているプロジェクトの中核を担っていた。訓練所の方から小走りで来る人影が見えた
「アウル様、ここにいらっしゃいましたか!」
「アルディート、わざわざ迎いに来てくれたのか?」
「はい、久しぶりにアウル様が視察にいらっしゃると聞いたので居てもたまらず」
がっはっはと笑っている大柄の武人は元は自分で傭兵を率いていたがサージに才能を見込まれ、サージの護衛をしていたがサージが引退したため、アウルから今は救導隊と騎馬隊の指揮を任されている。
「では、行くか」
「お供します」