一話
「武器や食物、薬などの密輸は三年前から一切行っておらず、証拠も完璧に消されておりました。同時期に他種族の奴隷を買い集めております。こちらはついては現在も調査中です」
「ふむ。やはり、証拠は残ってはいなかったか」
宰相はある商会の調査の結果を聞いていた。
「また、同商会から販売されています、タバコという商品についてです。販売地域は我が国を含めた主要三ヶ国と周辺諸国。このタバコの売上だけで表の貿易業と裏の密輸業の売り上げを超えていると試算が出ております」
「タバコとやらには問題はあるのか?」
「毒性は殆ど無く、依存性があると治療ギルドから報告が上がっております」
宰相は窓から夜の帳がおりた、王都の町を見下ろした。
「カラミタ商会は明日の為に準備をしていたと判断するべきだな」
「世代交代を潤滑に行うために、国や他の商会から横やりを恐れた結果だと愚考いたします」
宰相は調査員から他の商会や周辺諸国の動向についても報告を受け、その日の仕事を終え、カラミタ商会の若き会頭のことをふと思った。
「若干十四歳で商会を継ぎ、何を思い、考え、率いるのか。楽しみだ」
出来れば、裏稼業に手を出さないことを祈りつつ、眠りについた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「先ず、会頭であるサージ様に一言頂きたいと思います」
「皆の知っての通り、来年からは倅の忘れ形見であるアウルに商会を継がせる。確かにアウルは若いがタバコの開発から販売や商会で管理している町や村での農業改革でピグロ辺境伯様からお褒めの言葉を頂いており、実力は十分だと判断した」
壇上には初老の男〈サージ〉とよく似た少年〈アウル〉が登っていた
「倅は嫁と息子を守り、逝った。そして、その嫁も才能豊かなアウルとミラを生み、逝ってしまった。しかし、残された二人は泣き言も言わずに儂や貴様らについてきた。こやつらの努力は儂に以上に貴様らの方が知っておろう」
お爺ちゃん、頑張ってと話しながら泣きそうになっているサージを励ます、少女〈ミラ〉を見ながら周りはサージの言葉に頷いていた。
「五年前から徐々にアウルに商会運営を任せていたらいつの間にかに儂より上手くなっていたわ。だが、アウルはまだ若い。他の商会からアウルが若いから舐めた態度をとられるかも知れない。そこで貴様らの力をアウルに貸してやってくれ。頼んだぞ」
サージが壇上から降り、椅子に座るまで拍手がなりやまなかった。
「続きまして、次期会頭であるアウル様からお願いします」
「爺さんの話が長くて、折角の料理長の料理が冷えちゃうので私は簡単に一言」
会場がアウルの冗談に笑みがこぼれる。そして、アウルはグラスを上げた。
「私はタバコにしろ、農業改革にしろ、全てが始まったばっかりだと思っています。では、全ては我らの富と繁栄の為に! 乾杯!」
グラスを高く上げ、乾杯した。酒を酌み交わし、陽気に歌っている。また、明日にはここの居る全員が自分の戦いの場所に戻る。誰もが信頼できる仲間たちであった。