華は咲く
1858年。世界で最も猛威を振るっているアディ・リターナ国の皇帝“アディ・レトネル・チリス”に愛娘が誕生した。彼女の名は“アディ・レトネル・アーネス”母親譲りの栗毛色の綺麗な髪、父親譲りの青い目。とても可愛らしい、そして、美しい姫であった。
しかし、彼女は寂しかった。常日頃から外に出ることの多い父。皇帝が不在の間仕事をこなす母。彼女には兄弟もおらず、ずっとひとりぼっちだった。
そんなある日、そんな様子を見た召使のひとり“ウィレル・ランカ”は、彼女にくまのぬいぐるみをプレゼントした。彼女と同じくらいの大きな茶色のくま。アーネスはとても嬉しかった。初めて遊ぶ相手が出来たことに。アーネスはくまに“ハーグリー”と名付けた。それからというもの、アーネスはずっとハーグリーと一緒だった。寝るときも、食事も、もちろん、遊ぶ時も。
しかし1862年。アーネスが4歳のとき、事態は急変する。同盟国であったカシェル国が反旗を翻し、リターナ国へ。なんとか勝利したものの、皇后であるアルネは亡くなり、帝国一の強さを誇ると言われていた戦士長は大怪我を負った。そう、今までアーネスを守っていた人々はこの事件により深傷を負ってしまった。
アーネスを守れる者はリターナ国にはいない。そう思ったチリスは、アーネスとハーグリーを古くからの友人であるリチャードに預けることにした。
そしてアーネスたちは人生を大きく変えることになる。