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とりあえず事なかれ主義  作者: 天草一樹


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分岐点はすぐそこに

 未来に行ける、過去に行ける。そんな夢のアイテム『タイムマシン』は完成するのだろうか?

 俺は完成しないと思う。もし未来でタイムマシンを作るのに成功していたならば、現在の世界にもたくさんの未来人がいてしかるべきだと思うからだ。パラレルワールドを考えるならば、別に作れても不思議ではないと思うが、それは要するに、俺が実際にいた世界の過去や未来には行けないことを表している。あくまでそっくりの別の世界に行けるというだけだ。

 とはいえ、俺たちは生きている限り、必ず十秒後の未来に行くことになる。これは紛れもない事実だ。だとしたら未来に行くことは可能だと言える。そしてその未来は、今の俺のちょっとした行動で簡単に書き換えられるものでもある。

 つまり俺たちは、常に分岐点に立たされていると言えるのではないだろうか?

 では、いわゆるフラグといわれるものはどうとらえるべきものなのだろうか?

 大きな分岐点、と言いたくなるところだが、そもそもフラグが立つということ自体が、ある意味では大きな分岐点を通り過ぎた後だと言える。フラグが立つずっと前に、必ず俺自身にとっての大きな分岐点は存在したのだ。そしてそこで選択ミスをしたがために、厄介なフラグを立てることになってしまう。

 では、つい最近の俺の行動における、選択ミスを犯した大きな分岐点はどこにあったのだろうか?

 考えても分かるわけないのだが、これが分からないと、また同じミスをする可能性がある。俺にとっての人生の最大の目的は、特に楽し過ぎることも辛過ぎることもない、なんとなくな一生を終えることである。

 そのためには、とりあえず事なかれな選択を続けていく必要がある。

 ただ、今回の一件を介して、俺は再確認したことがある。それは、ありとあらゆるイベントは人を介することで発生するということだ。つまり、以前と変わらず、必要以上にだれとも関わらないよう心掛けることが大事だということ。

 俺は今まで以上に、他人に不干渉の人生を貫くことを心にとめ、自宅の扉を開けた。

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