要点はおおよそつかんだ
「俺も被害者なんだ」
またしても唐突に話しだした俺に、男たちは苛立ちと戸惑いを含んだ視線を向ける。
「この期に及んでまだ言い逃れするのか。いい加減にしないと……」
「俺はアリアさんに脅されてこの家に呼ばれたんだ。お前らは俺がアリアさんの恋人だからこの時間に彼女の家にきたんだと考えてるみたいだが、とんだ見当違いだ。もし俺が本当に彼女の恋人なら、学校が終わってから堂々と会う。こんな時間に学校をさぼってまで来たのは、彼女に脅されているからだ」
隣にいるAさんが驚いた表情で俺を見てくる。
男たちは困惑した表情で顔を見合わせた後、俺ではなくAさんに聞いてきた。
「こいつの言ってることは本当なのか? 正直に答えろ」
「その、それは……」
Aさんは戸惑い顔で口ごもった。まあ気持ちは分からなくもない。なにせ、俺を脅していたことは事実だが、今日俺がここにきているのは脅されたからではない。
なんにしろ、これは俺にとって非常に都合のいい展開だ。
「今のアリアさんの態度がすべてを物語ってると思うけど。それで、お前らも俺同様アリアさんに――いや、アリアとあの老婆にはめられて人生を狂わされた口か」
男たちはいまだ警戒を崩さずに、しかし俺の言葉に対して素直にうなずいた。
「そうだ。あの老婆を囮にして、無理やり老婆に手を上げざる負えない状況を作り、そこを動画に収めて脅してくる。しかも際限なく何度も……」
男はそのまま恨みを語り続ける。何というか、すごく喋りたがりな男だったおかげで、俺の知りたいことを次々と話してくれた。
要するに、最近俺を悩ませ続けていた一連の老婆問題は、老婆とAさんの自作自演によるものだったと。そしてAさんは老婆が殺されたことを知り、今度は自分が復讐の対象に会うと思い、俺に助けを求めたと。
なんで俺に助けを求めたのかが謎だし、いろいろと間に合っていない点で(Aさん的には間に合ったのか?)俺からしてみたら最悪な状況になったわけだが、これで謎は全て解けた!
心の中でガッツポーズをしつつ、ふと俺はいまだ喋り続けている男に呼び掛けた。
「そういえば、お前らってさっき誰に電話かけてたんだ?」
途中で語りを遮られたことで、不満そうな顔を浮かべつつも男は答える。
「俺たちのボスだよ。もうそろそろここに到着するはずだが……。と、これ以上はお前に何か教えるわけにはいかないな。お前が本当にこの女の彼氏でないと決まったわけではないからな」
「別にいいけど。ただし、俺が唯の被害者だって分かったあとで、たっぷり後悔することになると思うから覚悟しとけよ」
男たちはひるんだように一歩俺から距離を取る。
そして訪れる硬直状態。妹の助け待ちの俺としては、非常に喜ばしい展開だ。
それから約十分後、妹の助けが結局来ないまま、男たちの言うボスがやってきた。
「お前は……」
やってきた人物は、Aさんが見せてきた動画にも映っており、そしてつい最近俺も探していた茶髪の男子生徒だった。




