すでに非日常
学校をずる休みする、またはさぼる。実際問題どの程度の人がやったことがあるだのろうか?
誰だって一度くらいはやったことがあるのではないかと思うが、俺みたいなやつからすると、そもそもさぼる必要が思いつかないわけで、どうしてさぼったりするのだろうかと不思議に思ったりもする。
とはいえ、今の考えからわかるようにさぼる必要性がないからさぼらないだけであり、何か理由ができたのならさぼることに躊躇いはないのだ。
だから今、学校を勝手に抜け出し家に帰るという行為に、特に後ろめたい気持ちを感じたりはしない。それでも、今自分がやっている行為は普段の俺なら絶対にしないであろうことなのを考えると、どうにもむず痒いものがある。
まして今、俺の隣には同じ学校の女子が歩いているのだから。
常に無言で歩き続けることに気づまりを覚えだした俺は、さりげない口調で書記に話しかけた。
「書記さんはさ、何で生徒会になんて入ったの? どっちかっていうと、そういう委員会とかを避けそうなタイプに見えるんだけど」
「私の名前はトマトと言います。書記とは呼ばずにトマトと呼んでください」
俺の質問には答えず、呼び方に関しての文句を言ってくる書記さん。
役職名で呼ばれるのは確かに気分のいいものではないかもしれないが、わざわざ訂正してきたことに関しては少し驚いた。
「ああ分かったよ。でもトマトって本名なの? なんか信じがたい名前なんだけど」
「自分の名前は自分で決めることはできませんから」
ロボットのように一切の感情を表に出すことなく、淡々と告げる。今の言い方からすると、自分でもあまり気にいってる名前ではなさそうだが、書記と呼ばれるよりはましだと考えてるみたいだ。単純に自分の名前を諦めているだけなのかもしれないが。
さて、再び話が途切れてしまった。というか書記さんは俺とあまり話をしたくないらしい。話しかけてもこちらを一切向いてくれないし、わざと会話がすぐに終わるように仕向けているようにも見える。
小さくため息をつくと、俺は一つ言っておいた方がいいことを思い出した。
「そうだ、俺の姉さんとこれから会ってもらうわけだけど、まず一つ驚かないでほしいのが、多分姉さんは裸でいると思うんだ。身内としては非常に残念だけど、家で裸でいるのは昔からの癖になっててさ。だから、姉さんが裸で現れてもあまり驚かないでね」
「はい、分かりました」
俺の方を向かずにこくりと頷く。まあ、あまり感情に起伏の無そうな書記さんなら、裸の姉に会ってもたいして驚いたりはしないように思える。というか驚いた姿を想像できないと言ったほうが確かか。
その後は、一言二言俺から書記に話しかけることもあったが、その都度一言で言い返され、特に話が弾むこともなく、俺の家に着いた。




