大切なのは思いやり
生徒会長に無理やり連れられ、生徒会室に到着。
中に入ると、そこには本当に俺の探していたおかっぱ眼鏡少女がいた。
やや唖然としておかっぱ眼鏡少女を見つめる俺をよそに、生徒会長はつかつかと彼女のもとまで歩いていく。
「どうだい、君が探してた人物はうちの書記ちゃんのことで間違いないかな?」
「……そういうことか」
俺は感情のこもらない視線を向けてくる書記の姿を見て、ある考えに思い至った。
「要するに、今回も探してたのは俺だけじゃなかったわけですね。書記さんも俺のことを探していたと。そしてそれを生徒会長様に手伝ってもらっていたと」
非難を込めた視線を生徒会長に向ける。生徒会長はそんな俺の様子を無視し、唐突に変なことを言ってきた。
「君は超能力というものを信じるかい」
「は? 超能力ですか?」
自称霊能者と、黒魔術から召喚された悪魔の次は超能力と来た。最近の俺はこうした非科学的なものと随分縁があるようだ。
「まあ信じてないこともないですけど、それが何か?」
「ほう、君は超能力に対しては肯定的なのか。少し意外だな」
今さっき会ったやつにそんな印象を持たれていたことに、いろいろと戸惑いを覚えるが、特に気にしないことにする。
「俺は超能力を見たことはありませんからね。あると肯定する根拠もなければ、ないと否定する根拠もありません。どっちかといえば超能力くらいあっても不思議じゃないだろうと考えてるだけですよ」
生徒会長はそんな俺の言葉に満足したのか、フンフンと頷くと、書記に向かって言った。
「さて書記ちゃん、そろそろ君が見たことについて彼に話してあげたらどうだい。彼も書記ちゃんのことを探していたということは、あの件に対していろいろと興味を持っているということだろうしね」
書記は小さく頷くと、相変わらず感情のこもってない視線を俺に向け、口を開いた。
「まず確認します。あなたは、約一週間前に自身で蹴り飛ばした老婆について知りたくて、私を探していたのですよね」
俺は肯定とも否定ともとれる曖昧な頷きを返す。老婆に関してはもちろん知りたいのだが、書記を探していた理由は、下手に脅されたり利用されたりする前に先手を打って会いに行こうと思っていただけである。
まああえて否定するほどのことでもない。俺は先の曖昧な頷きを取り繕うように、やや明るめの声を出して言った。
「そうなんだ。知ってると思うけど、俺が蹴り飛ばした老婆がどういうわけか死んでたんだよ。いろいろとその現場を目撃してた人に話を聞いて、俺の蹴りが直接の原因ではないと分かったんだけど、どうにも気になってしまって。それで、君があの瞬間を目撃していたっていう話を聞いたから探していたんだ」
書記は視線を俺から一切そらさず、無表情で聞いている。なんだか観察されているみたいでどうにも落ち着かない。
そんな俺の気持ちを一切気にすることなく、視線を俺に向けたまま、書記は話し出した。




