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クラスメイトが昼食に誘ってきた

 四限目の授業が終わり、俺はいつものように鞄から弁当を出そうとした。

「……ない」

 何度も鞄の中を探るも、そこに弁当は存在しなかった。

「弁当を忘れるとは、一生の不覚……。とりあえず寝るか」

 俺は空腹を忘れるために、机に突っ伏して寝ようと試みた。

 この学校には購買というものが当然存在するが、俺は普段利用しない。というかお金は一切持ってきていない。たまにこのことをクラスメイトに話すと、緊急時にはいったいどうするんだとか言われ、たいてい驚かれるが、俺としてはなぜ驚かれるのかよく分かっていない。別に金なんて使うつもりがなければ一切使わないものだと思うし、金が必要になるような緊急事態が一体どんなものなのか想像もつかない。

 そんなわけで、俺は昼飯を買うこともできないため、寝ようとしているのだった。

「よお、××どうしたんだよ。弁当忘れたのか?」

 声につられて机から顔をあげると、クラスメイトの男子B君が俺のことを見下ろしていた。

 特に嘘を言う必要も感じなかったので、俺は素直に答える。

「ああ、弁当忘れたんだ。知っての通り金は持ってきてないから昼飯買えないし、とりあえず寝ようと思ってな」

 じゃあお休み。そう言って俺は再び眠りにつこうとした。が、Bは突然手を打つと俺に提案してきた。

「そうだ、だったら俺達と一緒に食べないか。俺らの昼飯分けてやるし、たまにはお前といろいろ話してみたかったんだよ」

 Bの陰りのない笑顔を見ながら俺は思った。正直面倒だと。

 俺はほとんどテレビも見ないし漫画も読まない。本も読んでいるふりをしているだけで実際ほとんど読んでいない。なので、他人とたわいない会話をすることが苦手、というかできないのだ。もちろん勉強の話や授業の話程度ならできるが、その話だけで昼休みをつぶしきるのは無理だろう。また、俺自身の話をするのもめんどくさい。そもそも話すほどの出来事がないので、多少作り話を混ぜないといけないからだ。

 俺は相手が不快にならないよう細心の注意を払いつつ、断りの言葉を告げる。

「誘ってくれてありがとう。でも昨日夜遅くまで本を読んじゃってさ、実は朝からものすごく眠かったんだ。だから悪いけど今日はこのまま寝させてもらうよ。もしかしたら昼飯忘れたのも、俺に寝ろっていう神様からのお計らいかもしれないしな。それじゃあ、できれば授業が始まる五分前になったら起こしてくれると嬉しいな。頼んでもいいかい?」

「あ、ああ……。まあそういうことなら分かったよ」

 うまい言い訳が言えたと内心でほくそ笑みながら、すまなそうな顔をしてBに再び礼を言った。と、その瞬間、俺の腹が大きな音を立ててなった。

「……」

 俺がちらりとBを見ると、Bは満面の笑みで俺を見ていた。

「なんだよ、やっぱりめちゃくちゃ腹減ってんじゃねぇか。遠慮すんなよ。どうせ腹減ってたら眠れないだろうし、飯分けてやるから一緒に食べようぜ」

 何とか断りの言葉を考えようと、言い訳を考えているうちに、Bは俺の手をつかんで机から引きはがした。

 結局言い訳の言葉は思いつかず、俺はBに手を引かれるまま、クラスメイトとの昼食イベントに突入することとなった。


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