人探しは目立ちやすい
おかっぱ眼鏡少女の捜索。言葉にすればそれだけのことだが、実際に行うとなるとかなり大変だ。
探す方法としては学校中を探し回るか、地道に聞き込みをするか、教師に聞くかの三択。
最も無難なのは教師に聞くことだろうが、できれば今はやりたくない。地道な聞き込みに関しては、俺の性格的にやりたくはない。ということで、一番効率が悪い方法だが、学校中を探し回ることにする。
「学校中を回るのって初めてかもな」
一教室ずつ中を覗いていき、おかっぱ眼鏡少女がいないか確認していく道すがら、ふとそんなことを考える。普段学校に来ても自教室と近くのトイレ以外にはほとんどよらないため、学校内のほとんどの場所に触れていないのだ。
そんなわけで、きょろきょろと物珍しそうに学校内を探索していたら、突然声をかけられた。
「君、さっきから何をしているの?」
俺が驚いて振り返ると、そこには学校中の誰もが知っている生徒がいた。自立園学園の生徒会長様である。凛とした佇まいが、生徒会長としての貫録を感じさせる。
壇上に立って話している姿を見たことは何度もあるものの、言葉を交わすのは初めてである。俺は幾分か緊張しながらも、平静を保って言う。
「いえ、少し人を探しているんですけど、なかなか見つからなくて。生徒会長様が気にかけるほどのことじゃないですよ」
生徒会長は少し不快気に眉を顰めつつ、落ち着いた声音で質問してきた。
「そうか、なら構わないんだが。ただ随分と物珍しそうに見て回っていたように思えたからな、気になってしまっただけだ。ところで人探しをしているんだろう? 僕でよければ手伝わせてもらうが」
「そんな、わざわざ手伝っていただかなくても結構ですよ。それに名前が分からないので生徒会長様に手伝ってもらうと言っても、あまりしてもらえることはないので」
「名前が分からない? 君とその生徒はどういう繋がりなのかな?」
少し口が滑ったなと後悔しつつ、俺は何でもないといった風に装う。
「以前俺が落とした財布を拾ってくれた人なんですけど、名前を聞く前に立ち去ってしまって。やっぱり一度お礼がしたいと思い探しているんです」
「ほう、それは随分と殊勝な心掛けだな」
俺の嘘に気づいたかどうかは分からないが、生徒会長は少し考えるそぶりをした後、真剣な表情で俺を見つめてきた。
「やはり僕にも手伝わせてもらおうか。僕は生徒会長として困っている生徒を助ける義務があるからね。まして、君のように崇高な目的で動いている人のためならなおさらだ。そういえば、君の名前をまだ聞いていなかったね。こうして出会えたのも何かの縁だろうし、ぜひ聞いておきたいな」
「……××って言います。生徒会長様」
俺は考える。またしても面倒なことになってきたと。いつの間にか俺に選択の拒否無く、生徒会長が同行することが決まってしまった。
この自立園学園における生徒会長は、全校生徒の憧れ的存在である。一緒にいるだけで非常に目立ってしまうことは請け合いだ。俺としては、目的の人物に見つかる前に自分から接触したかったのだが、どうやら無理そうである。……まあ、生徒会長に目をつけられたように、すでに目立つ行動をとっていたようだが。
俺は生徒会長にばれないように小さくため息をつくと、精いっぱいの笑顔を作る。
「それじゃあ人探しの手伝い、よろしくお願いします。俺が探している生徒の特徴は、黒縁の眼鏡におかっぱの髪型をした女子なんですけど」
俺がそこまで言った時点で、生徒会長が突然手をたたいて俺の発言を中断させた。
「分かった。それはおそらく書記のことを言っているのだろう。今は生徒会室にいるはずだ、ついてきたまえ」
無理やり手を握られると、俺はそのまま生徒会室に引っ張られていった。




