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とりあえず事なかれ主義  作者: 天草一樹


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悪魔の存在はどうすれば否定できるか

「ふむ、どうやら我が使い魔はアンドレアルフスのことを甚く気に入ってしまったようだな。なれば仕様がない、その使い魔はアンドレアルフスの好きにして構わんぞ」

「いや、俺はこいつを持ち帰ってくれるように頼んでんだが……」

 俺が助けを求めて叫んでから数秒後、颯爽と姉が現れ、俺の部屋で起きていた怪奇現象を止めてくれたのだが、何だか意味不明なことを言い出した。

 姉に召喚された悪魔が俺になついている? 会ってまだ数分と経ってないのに?

 俺は何とか姉を説得しようと言葉をかけようとするが、姉は何もない壁の方を見つめながらしたり顔でうなずいている。

「ふむ。どうやらアンドレアルフスの驚きよう、いや、ビビりようが随分と面白かったらしい。せっかくだからもっと仲良くなりたいそうだ。我としては残念だが、なに、この程度の使い魔程度ならまた呼び出すこともできるだろう。では我が弟よ、使い魔と仲良く暮らすんだぞ」

 一方的にそう言うと、姉は部屋を出て行った。と、すぐに戻ってきて、

「そうだ、せっかくだから使い魔にも何か名前を付けてやるといい。その方がより絆を深められるだろう」

 と告げると、今度こそ本当に部屋から出て行った。

「……別に絆を深めたくなんかないんだが」

 俺は考える。悪魔なんてものが実際に存在するのだろうか?

 悪魔なんて非科学的な存在はいない、そう断定するのは簡単だ。だがそうすると、ついさっき俺の部屋で起こった怪奇現象に理由がつけられなくなる。現に俺の部屋の物は誰も触れていないにもかかわらず、ひとりでに動いていた。俺の持ち物に付喪神が宿ったという、悪魔並みに非科学的な事態が起こったのか、もしくは何かトリックが仕掛けられているのか。

 常識的に考えれば、姉が俺の部屋に何らかの細工をしておき、悪魔がいるように見せかけたいうのが最も現実的な解釈であろう。だが、姉が部屋から出て行ったあと机の周りやクローゼット周辺を調べてみたが、特に何かが仕掛けられていた痕跡は見当たらなかった。

 となると、とにかく厄介な話になる。

 仮に悪魔がいようがいまいが、これが姉が仕掛けたいたずらであろうが、俺にその仕組みが分からない以上また再びさっきのような怪奇現象が起こる可能性があるのだ。まして姉はついさっき悪魔をこの部屋に置いていくと言いやがった。つまり、悪魔が実在していなかったとしても、悪魔の存在を俺に見せつけるために今後も姉からのいたずら(?)が続くということ。まああり得ないと思うが、悪魔が本当にこの部屋にいるのならなおさらだ。

 なんにしろ、悪魔の姿もトリックの痕跡も見えていない今の俺にできることは何もない。

 姉の言っていたことに従うのは癪だが、万が一にも悪魔が実在している可能性を考慮して、悪魔の名前を考えることにする。

「特にひねらずにアクマ君。いや、さすがにひねりが無さすぎるな。姉貴が呼び出したんだし、姉貴の名前を少し捩ったのでいいか。姉貴の名前はクレアだから、そうだな……、エクレアとかでいいか、美味しそうで怖さも和らぐし」

 使い魔の名前を思いつき、俺が満足げにうなずいていると、突然右腕に噛まれたような痛みが走った。

 ……どうやら喜んでくれたようだ。

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