休日は外に出ないのが基本
「……朝か」
どうやらいつのまにか寝てしまったらしい。
今日は日曜日。普段の休日は特に部屋から出ずにごろごろするのが俺の流儀だ。
昼食まではしばらく時間があるのを確認して、俺はベッドの上でゆったりとまどろむことにする。
が、最近の俺はとことんついていない。まどろみ始めたのもつかの間、部屋の扉が開き、姉が入ってきた。
今日は全裸ではなく、黒いローブに加え、いわゆる魔女帽子と呼ばれるとんがり帽子をかぶっている。
反応するのが億劫なので、特に声もかけず放置していると、懐(?)から魔法陣の書かれた紙のようなものと、水晶(おそらくただのガラス玉)を取り出し、部屋の中央にそれらを配置し始めた。
姉の奇矯な行動は今に始まったことではないので、気にせずにまどろみを再開する。と、突然チクりと腕に鋭い痛みが走り、俺は驚いて飛び起きた。
痛みの走った部位を見てみると、姉が注射器らしきものを俺の腕にさし、血を採取しているところだった。
「てめぇ、一体何してんだ」
氷のように凍てついた視線を投げかけるが、姉は無反応で血を採取し続ける。
今の姉に何を言っても無駄だと思った俺は、とりあえず注射器が腕から離れるのを待った。
で、注射器が外れると同時に俺は再び言葉を投げかける。
「今回はいったいどんなお告げがあってこんなことしてるんだ」
「自分と最も身近な異性の血を、我が用意したこの魔方陣にかけろと。ゆえに、デカラビアの血をもらうことにした」
「だから俺の名前はそんなんじゃねぇって。たまには名前で呼べよ」
「それを言うならベリアルだって我の名前を呼ばないじゃないか」
確かにここ数年、姉貴とかお前とかてめぇとしか呼んだ記憶がない。
なんとなくばつが悪いように感じ、頭をかきながら久しぶりに姉の名を呼ぶ。
「悪かったよ、クレア」
姉は満足そうにうなずくと、微笑みながら言った。
「素直なことはいいことだぞアムドゥシアス。まあ我が僕なのだから当たり前だがな」
「……」
Aさんに絶対服従するまでもなく、すでに俺は姉の下僕だったらしい。
俺は姉とのまともな会話は望めないと考え、再びベッドに横になる。
「じゃあ、さっさと今やってる黒魔術が終わったらこの部屋から出て行けよ。俺は昼食まで寝る予定だから」
「ああ。できるだけ迷惑をかけないように配慮する」
すでに迷惑をかけられているのだが、それはノーカウントらしい。
俺は深々とため息をつくと、目を閉じた。
目を閉じて数秒後、ドカン、という爆発音が俺の部屋に響き渡った。




