寝る瞬間は意識できない
ファミレスにて夕飯を食べた後、俺と妹はそのまま家に帰った。
図らずも得た情報から今後の方針を立てるべく、まとわりついてくる妹を振り払って自室へ閉じこもる。
部屋に入った俺は、いつも通りベッドにダイブすると、思考を開始した。
Aさんが撮っていた動画に映っていた二人の生徒。一人は黒縁の眼鏡をかけたおかっぱの女子生徒。もう一人は髪を茶色に染め、耳にピアスをかけた男子生徒。
うちの学校はそんなに校則が厳しくないので、髪の毛を茶髪に染めた生徒も、耳にピアスをしている生徒もそれなりにいる。正直他の細かい特徴をは覚えていないので、茶髪の男子生徒を探すのは少し面倒そうだ。もし探すのなら、おかっぱの女子生徒の方だろう。いくら自由な校風とはいえ、今の時代おかっぱの髪型でしかも黒縁眼鏡の少女などそう多くはいない(気がする)。
「まあ探し当てたからといって、特に何するわけでもないんだが」
すでに二人、あの場面を目撃していたがために絡んできた前例がいる。放置しておくよりもこちらから動いて不安の種は早めにつぶしておいた方が得策だろう。
ただ、あの動画には妹の姿は映っていなかったし、一部死角になっていて誰がいるのか分からない箇所も存在した。つまり、まだ他にもあの場面を目撃していた人がいる可能性があるわけだ。
「そういえば、何でアリアさんはあんなとこで動画を取ってたんだ?」
たまたま俺が老婆を蹴飛ばして逃げるシーンを目撃したというのは分かるが、動画まで撮る暇は普通ないはずだ。
「もしかして俺が来る前から倒れてる老婆を撮影していたのか」
だとしたら理由はいったいなんだ?
いくつか可能性を考えるも、どれも正しいかどうか確証はつかめない。
まあ明後日学校に行ったときに聞いてみればいいかと思い、俺は少し目を閉じて考えるのをやめた。
……いつも眠りは唐突にやってくる。俺は自分が寝ているのを自覚することなく、次の日の朝を迎えた。




