第4話 ~聖女の系譜~
「せい、るちあ?」
「ああ。聖ルチア。古代ルチア教の聖女――。
聖なる癒やしの力を持ち、そのたぐいまれな美貌と人格により、
民衆を、夜明けの世界へと導いたとされる、偉大なる始祖。
まあ、簡潔に言って、
わたしの祖先にあたる人だな」
「そせん?」
「ああ――。その求心力を恐れた、
聖カソリキア教の有力者たちにより、弾圧され、
無残にも名前をむしり取られ、魔女、異端者と呼ばれてもなお、
民衆を守ったとされる、我が母なる存在だ。
――まあ、おまえには、まだわからないかもしれないな。
だが――いずれ、この秘術を、おまえにも教えてやろう」
「……うん!」
ぼくのはじけるような笑顔に、
お義母さんは、目許をあまく緩めた。
「……ふふ、そうだリシアン。そうしたらおまえも一人前だ。
心配はいらない。
“彼”がきっと、おまえを導いてくれる。
ルチアのようには、わたしがさせまいよ。
そうしておまえは、この常闇の世界に、光を与える。
そう――古の魔法使い……
“蝋燭の灯しびと”として――……」
………………
…………
……
「――リシアン!」
「……リシアン、返事をするでやんす!!」
「……ん……ぅ……」
重いまぶたをこじあけ、みえたのは、
まるで手負いのキツネのように、目を激しくつり上げた紫尾だった――。