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リシアンの契約 ~呪われた世界と聖なる夜の仔~  作者: 水森已愛
第五章 『リシアンの契約0』 ~アウト・ヒストリア編~
47/51

『拝啓(はいけい)、うちの亭主は関白(かんぱく)にすぎる』 

~ブラックメイデンアフターロマンス特別掲載<新婚編>~です。

ブログにて開催していた企画で、読者さまに差し上げた作品です!

「剣を扱う時は、ポニーテールにするだろう?

 だが、結構うっとおしいので、切ってしまおうと思うのだが」


寝る前のひとときのことである。

わたしは自室で、一日の疲れに、り固まった体をほぐし、

軽くストレッチをしながら、セドウィグに話しかけた。


「なぜ切る」


新聞を読みながらセドウィグが言う。

いつものように、眼鏡めがねをかけている。

案のあんのじょう、男らしく、こちらをみたりはしない。


「だから、うっとおしいのだ。メイド達には止められたが……。

 というか、“メイサさまの美しい御髪おぐしが!!”

 と一部乱心していたが」


実は、<騎士乙女メイサさまファンクラブ>や、

<メイサさまをお守りする会・メイド部>

なる怪しげなコミュニティーが、

城内のあちこちに存在しているらしいという、

あの噂は本当だったのか……いや、きっとわたしの考えすぎだな……。


「そうか」

だが肝心のセドウィグは、結構どうでもよさそうだ


「……しかし、なぜ女は髪を切る」


「なんだその、なぜ人はパンを食らうのかみたいな質問は……」


あきれながら、こうこたえる。


「お洒落しゃれ、だろうか……。

 やはり、“馬子まごにも衣装、髪かたち”というからな……」


「そういえば、お前も女だったな」


他人ごとのように、ページをめくりながら言うセドウィグ。


今更いまさら何を……。

 というか、なら今まであなたはわたしをなんだと思っていたのだ」


ちょっと非難ひなんするように、頬を膨らます。


「そうだな」


新聞をぱたりとたたみ、セドウィグがこちらを向く。


「やっと話を真面目に聞いてくれ……」


なんだ?! いきなり頭をひっつかまれ、視界が反転する。


「おれの宝、かな」


そういって片眉を吊り上げ、満足そうに笑まれる


「な、なんだそれは……?」


「違った、おれの所有物しょゆうぶつだ」


言い直すようにいわれて、思わずしょんぼりする。


「なんかランクがいちじるしく下がったが……」


しょんぼりどころか、脱力だつりょくする。ちょっぴり涙目だ。


(わたしはモノなのか……)



「まあ、しかし、髪まではおれの言うことではないな」


そう言ってわたしの頭を膝に下ろし、おもむろになではじめる。


「まあ、個人の自由だし、好きにすればいいんじゃないか?」


更に、髪を長い指でき始めた。


その手つきはすこぶる優しいが……。


(真逆すぎるぞ! どれだけ面倒くさいんだあなたは……!)


そう言いたいのはやまやまだが、どうせ、

『面倒くさい女ナンバーワンの、お前に言われたくはないな……?』


とか、面倒くさいツン嫌み

(ツン・いやみ……照れ隠しに世の<つんでれ男>が言うあれだ……!!)

が返ってくるに違いないのだ!!


「むむ……! 切らなければいいんだろう、切らなければ!!」


ヤケになって立ち上がろうとすると、がっちり頭をつかまれた。

「いつ動けと言った……?」


ただでさえ、するどすぎる眼光がんこうが細められる。


(も……もう耐えられん……!!)


「この……亭主関白ていしゅかんぱく俺様男がーーっ!!」


その後一週間、セドウィグとは口を聞かなかったのは言うまでもない。





結論:セドウィグは面倒くさい。


甘やかすとつけあがるので、用法・容量を守って、正しく反抗しよう。


そんな風に決意した、新婚3カ月めなのだった……。




                        (了)

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