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リシアンの契約 ~呪われた世界と聖なる夜の仔~  作者: 水森已愛
第五章 『リシアンの契約0』 ~アウト・ヒストリア編~
45/51

- code.0 “その名を識れと彼らが囁く”  ‐





( リシアン  )



( ( リシアン ) )




“ぼく”を呼ぶ声だ、とぼくは思う。


静かに反響はんきょうする声。

ああ、ここは海だ、とおぼろげに思う。


ぼくの口から、こぽこぽ、とあわがもれる。


苦しくはない。

むしろ、心地ここちよい。


その深海は、羊水ようすいのようで、

その水底みなそこは、ぼくを抱く(かいなだ。


柔らかで静かな気配が、やがて近くに降り立った。



『リシアンサス』





彼女は微笑わらった。

ぼくは、ようやく目を開ける。


見なくても、ていた。


身なくても、ていた。


“きみ、は。”


とぼくは言う。

声はなく、泡のみが目の前をかざった。


『我は、×××じゃ』


と彼女は言った。


彼女の顔は、泡に隠れている。


その身体は、幻のようにたゆたっている。


泡が消える。


ぼくは視る。

いや、魅る。


彼女は美しかった。

でも、その姿はなぜか、りつぶされたように見えない。


見ることも、ることも。

ることも、ることもできない。


これは、そういう罰なのだと、第6番目の扉はささやいた。


これは、ぼくの罪なの? とぼくはたずねた。


いいや、違う、と彼女は言った。


『これは、我の罰なのだよ』


“あなたの、つみ?”


とぼくは問う。


“罪ではないよ。罰なのだ”


と彼女は軽やかに言った。


彼女の姿は、まだみえない。


でも、その姿はどこかなつかしかった。


ぼくは、彼女の名を、まだらない。



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