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リシアンの契約 ~呪われた世界と聖なる夜の仔~  作者: 水森已愛
第三章 『リシアンの契約α』 ~アフター・エンドロール編~
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第4話 “篠乃” ~真相は闇のなか~

「ドリームダイバー?」


篠乃しの先生こと、篠姫しのひめさんは軽く目をみはる。


「セドリックのやつがそう言っていたのか。ふむ……なるほどの」


「やっぱり知っているんですね! 詳しく教えてくれませんか?」


「それをわらわに聞くのか?」


「う……っ」

確かに、ぼくは、一度紫緒を使って、篠姫さんをこてんぱんにしている。


ヒーローにはならない、とかっこつけておきながら。


やっぱりぼくは、どこかヒーローに憧れていたのだ。


そう、超常ちょうじょうの力さえあれば、なんでも変えられると……。

傲慢ごうまんに、子ども心に、妄信もうしんしていたのだ。


つまりは、辛い現実から、逃げようとしていた――……。


「――まあ、いいじゃろう。

 ぶっちゃけ、わらわは、なにも知らないのだからな」


「え……っ」






そんなはずは。

だって篠姫さんは、あの時、確かにすべての黒幕で――。

まるで、この世のすべてを掌握しょうあくするような、

悪役……だったのに。


「まだそなたはわかっておらんようじゃな。

 この世のすべてを知る者なんて、いるわけないじゃろう?


 物語の黒幕が、もしそうじゃったら。

 それこそ魔王や魔神がそうじゃったら。


 とっくに世界など滅亡しておる。


 それこそ、勇者という不穏分子ふおんぶんしが生えて来る前に、

 み取っておろうよ。


 自分を無闇むやみ妄信もうしんするものなど、

 結局のところ、なにもわかっておらんにひとしい。


 さらに言うなら、この世に絶対の善がないように、絶対の悪もない。

 そなたが思うほど……、世界は簡単ではない」


そう老獪ろうかいに微笑む篠姫さん――篠乃先生は、

やはり三十代にはみえない。


篠姫さんこそ、賢者なのかもしれない、とぼくはふと思った。

自分がわかっていないと断言できる篠姫さんこそ。

正しく智者ちしゃで……。


――あれ、だとしたら――?


物思いにふけるぼくに、篠姫さんは重ねて言う。


「ただ言えるとすれば、

 おそらく、常闇の世界のような場所は無数むすうにあるんじゃろう。

 そのなかで、わらわが虹の神になれたのは、まあ偶然じゃろうな。

 あるいは、本物の神の御業みわざか」


――まさか……!


「常闇のことわりを編んだのは、あなたじゃなかった…!?」


その前提ぜんていが崩れれば、つまり篠姫さんは……!


「……まあ、おおむねハッタリじゃ」


「……なぜ、そんなことを……!」


それじゃあ、まるで。


(わざと、ぼくに倒されたみたいじゃないか…!!)


「……まあ、そなたも大人になったらわかるじゃろう」


そう言って笑んだ篠姫さんは……。

案外、人好きのする、なつっこい目をしていた――。



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