表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リシアンの契約 ~呪われた世界と聖なる夜の仔~  作者: 水森已愛
第二章 『リシアンの契約Ⅱ』
20/51

番外編 ~DAWN WORLD - やがて夜明けは訪れる~

……シ……


ーーシ……


なんや…?

なにかが聞こえる。

暗闇を裂くような、鮮烈な光が差し込んだ。


――……“ヒガシ”!


勢いよく差し出されたその手を、俺は取った…


「“俺”……?」


目の前に飛び込んできたのは、必死な顔をした、青年だった。

その顔に覚えがある。


「せつや……?」

せつやは、泣き出すのをこらえるように、眉をしかめると、

俺の頭をばしん、と叩いた。


「……っテ」


「……“ッテ”じゃねえよ……」


ばかやろう、とせつやは言った。



懐かしい顔。もう何ヶ月も――、

何年も会わなかった気さえする、俺の親友。


俺は、この世界にかえってきたんだ――。



「……夢をみたんだ」




「……は?」


目のはしを、ごしごしぬぐっていたせつやは、問い返した。


夢をみたんだ。

その世界では、12の色の国と、12人の王がいて。


そこに迷いこんだ俺は、いつしか琥珀こはくの機械王と呼ばれ。


現実世界で培った科学技術で、

動物たちと水晶の国を、最先端の機械で彩り。


生きて、生きたのだ。


「……はは」


帰ってきたことが、“残念”だなんて。

――傑作だな。


戻ってきたいとは、不思議と思わなかった。


俺は……確かにあの世界で生きていたのだ。


王としての生活は、

俺のすべてを塗り替えるようにまぶしく、その心を高鳴らせた。


たくさんの人々と話した。


あの常闇の世界を、少しでも暮らしやすくするための、

千もの策を、夜通し討論した。


酒を酌み交わし、未来を語った。


この世界の技術を、あの世界でも使えるモノにしたい……。


その情熱が、俺を高ぶらせた。


どこまでも、どこまでも飛べる気がした。


……あの世界は、もうないのだ。



俺は、自分の手を仰ぎみた。


指先からこぼれる光の粒。


俺の希望、俺の望んだもの。


それは――。


「……せつや」


「……なんだよ」


「会社を作ろう。俺とお前、そしてみんなで。

 最先端の技術を途上国にも行き渡るようにしたい。

 ――できれば、10年以内に」


「――いきなりだな。……まあ、お前らしいぜ」


苦笑したせつやは、俺のこぶしに、

その一回り大きなこぶしを合わせた。



夢をみていたんだ――。

その世界には、俺の求めたすべてがあって。


そこにまぎれこんだ俺は、魔法使いと約束をした。


『――契約をしないか。

 貴方はきっとわたしの国を、朝焼けに導く王になる。

 呪いのない、平和で、豊かな国にすることができる。


 魔法など、なにひとつ必要ない。

 なぜなら、貴方の、その新しい発想と、

 繊細な指先こそが、ひとつの魔法なのだから――』


俺は、こぶしをにぎった。


続きは、この世界にある。



なぜなら、きっと、あの常闇の世界こそが、

この世界の真の姿<リアル>であり、

もうひとつの顔<ダブルフェイス>なのだから――。


俺の、太陽の国は、終わりはしない。

長い夜の物語の、続きをみよう。


やがて来る朝焼けを、この世界に咲かすのだ。


そう、あの少年のように……。

俺も、この世界に火を灯すのだ――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ