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リシアンの契約 ~呪われた世界と聖なる夜の仔~  作者: 水森已愛
第二章 『リシアンの契約Ⅱ』
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第1話 ~すべてに呪いあれ、ときみは望んだ~

「――誰もがお前みたいに、きれいでいられるわけじゃないんだよ!!」


そう叫んだリキアの表情は、悪鬼のような凄まじいものだったけど。

それでも、どこか泣いているようで。


ぼくは思った。


泣かないで。


どうか。


どうか……。


そんな悲しいことは言わないで。


言えなかった。


“しあわせの世界”を生きるぼくに、そんな残酷なことは。

そんな“きれいな”同情をしてしまったら、押しつけてしまったら。


今度こそ、リキアは壊れてしまう。


「……っ!」


ぼくは声を詰まらせ、手を伸ばし、その指を引きつらせた。


できない。

ぼくには、リキアを救うことなんて――。



「“お前なんか死んでしまえ”!!」



リキアの言霊ことだまが、ぼくに襲いかかった。



リキアの掌から飛び出た何万本もの鋭利えいりな針が、

致死量ちしりょうの呪いをまとって……。





ああ、ぼくの喉笛のどぶえき切った――。




“お義母さん……”









「……そうは、させないでやんす……!」



ぼくをかばうように、猛然もうぜんと踊り出た存在がいた。



「紫緒……!」


にらみつけるように、

その瞳孔どうこうが赤い燐光りんこうまとったのに、

かばわれたままのぼくは、もちろん気づかなかった。


リキアの毒針が、まるで石化するように、ひび割れてゆく。


「――ばかな……。

 ぼくの魔術が……っ、ぅあぁあ゛ぁっ」


リキアの陶磁器とうじきのような肌も、みるみるとひび割れてゆく。



「“やめて、紫緒……っ”!!」



「……っ」


ちっ、と舌打ちして、紫緒はそれをやめた。



リキアの血走った瞳が、飢えた獣のように、

ぎょろり、とぼくと紫緒とを、行き来した。


「……くそ……っ、許さない、許さないからな……!!

 絶対に……、絶対に殺してやる……!!」


そう吐き捨てたリキアは、びた赤の煙と共に、姿を消した―-。


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