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リシアンの契約 ~呪われた世界と聖なる夜の仔~  作者: 水森已愛
第一章 『リシアンの契約Ⅰ』
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~第?話 過去と未来のぼくへ。~

「紫尾……。

 ねえ、紫尾……――紫尾?」


「なんでやんすか、ひとが寝ているときに……」


「……紫尾は……。」


そう言って、ぼくは言いよどんだ。


「……うじうじしないで、ハッキリ言ったらどうでやんす」


「紫尾は……ぼくをひとりにしないよね……?」


ぽつり、と言ってしまってから後悔した。


「ごめん!なんでもない!」


泣き笑いのぼくに、紫尾は言った。



「――しないでやんす。おまえをひとりになんか」


「紫尾――、」


言いかけたぼくに、

慌てたように、いつもの「ぷふん!」をしてから、紫尾は言う。


「おまえは、まだまだ半人前で、危なっかしいでやんすからね!! 」


「――そっか。」

涙を拭って、ぼくは微笑った。


たとえ、この旅が終わるまでの――、

約束を果たすまでの関係だとしても。


ぼくは紫尾が相棒でよかった、と思う。


その思い出は、そのしあわせは、

きっと、ぼくのなかで、消えないあかりとして輝き続ける。


いつまでも、ささやかに、……ひそやかに。


「……紫尾」


「なんでやんすか」

「……“ありがとう”……」


それだけ言って、ぼくはそそくさとうつむいた。


「……ふん」


紫尾は、それだけしか言わなかったけれど、

ぼくは、それで充分だった。


ぼくの頬に集まる、“うれしい”の気持ち。

なくさないように……たいせつに、この胸にしまっておこう。


いつか紫尾が、ぼくとの契約を満了したら……一体なにを贈ろう。


特別な……ぼくにしかあげられないものがいい。


これからの紫尾を、祝福してくれるような……、

この感謝を、両手いっぱいにして。


だから、未来のぼく、さびしくないよ。


きっと、思い出のなかで、ぼくの胸のなかで、

紫尾は生き続けるんだ。


そういったら紫尾は、ひとを死人にしないでほしいでやんす!!

とか言うんだろうけど。


ぼくはまどろみのなか、

もうすっかり嬉しくなってしまって微笑む。


きらきら、とその気持ちは、

夜空の星屑ほしくずみたいに、心に降り積もっていった。


そうだね、過去のぼく。


暗闇にいるからこそ、星は輝いてみえるんだね――。




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