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Re:サイクル  作者: yuu
〈2.地雨〉
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〈3.俄雨〉

あれから教室へ戻ると、俺の席で郁哉と直斗が待っていた。

「ユミに会って、聞いてきた…」

俺はそれだけ言うと、イスに座って机に突っ伏した。

「どうだった?」

自分の中でもまだ整理できていないのに、どう説明すればいいんだろう?

俺はとりあえず、ユミの言ったことをそのまま伝える。

「中学の時の、ただのクラスメートだって…」

「それだけ?他に何か言ってなかったの?」

「由佳利が本当に大事なら、もうその名前は忘れろって…」

頭を思いっきり殴られたような衝撃だった。

「なんだよ、それ。意味深すぎるだろ」

郁哉が呆れたように言う。

「様子はどうだったの?」

直斗にそう聞かれ、ユミの顔を思い出していた。

「すごい驚いてたよ、全然余裕なくなってて。あんなの、訳ありですって言ってるようなもんだ」

あの時もそう思っていたのに、最後の一言で何も言えなくなった。

そんな自分が情けない。

「それで?お前はこれからどうすんの?」

「気になるよ。由佳利のことは何でも知りたい」

「うん」

「でも、ユミの言ったことも一理あるのかもって、思って。どうしたらいいのか、分からなくなった…」

頭が真っ白になりそうだ。

おれが、千早つぐみのことを知る、千早つぐみのことを忘れる。

どちらの選択が由佳利にとって幸せなんだろう。

今の俺には、それがわからない。



そこでチャイムが鳴った。

教室中で、ガタガタとイスを引く音が聞こえる。

「直斗?」

郁哉はもともと、俺の前の席だからいい。

でも、直斗はまだ俺の机の隣に立ったままだった。

「もうチャイム鳴ったけど…」

俺がそう言うと、直斗はうんとうなづいた。

「諒平」

「何…?」

「どうしたらいいかは、誰にも分からないんじゃない?」

至極、当たり前のことだった。

けれど、俺はそれをすっかり忘れてしまっていた。

「諒平はどうしたいの?俺は、諒平がいいと思ってやったことなら、いい結果にも、結びついていくと思うけど…」

直斗はそれだけ言い残して、自分の席へと戻って行った。

"諒平はどうしたいの?"

授業中、直斗の言葉がずっと頭についていた。

俺は一体、どうしたいんだろう?

それでも、答えは出なかった。



チャイムが鳴り、休み時間に入る。

すると、由佳利がうちのクラスにやって来た。

「諒平」

「由佳利、どうした?」

全然平気ではなかったけど、無理矢理、平気なフリをした。

「どうしたの?なんか今日、疲れてるみたい」

やっぱり、そんな上っ面だけの装いは、由佳利には通用しない。

「大丈夫。テスト疲れがまだ残ってるだけだから」

「そっか、それなら良かった」

由佳利は笑顔だった。

「今日ね、みんなと遊ぶ約束しちゃったから、一緒に帰れない。ごめんね」

どうやら、由佳利はそれを伝えに来たようだった。

「わかった」

そして由佳利は自分のクラスへと帰って行った。

「なんだ、榎本笑ってたじゃん」

由佳利の姿が見えなくなると、郁哉が俺の方を振り返ってそう言った。

「お前が気にしすぎてただけなんじゃない?」

「違うよ」

即答だった。

「全然、笑ってなかった」

そう、由佳利は全然笑ってなかった。

笑っていたけど、笑っていなかった。

これも、俺だからわかる違いなのかもしれない。

あの笑顔は、作られた偽物だった。



その時、俺は決心した。

"千早つぐみ"について調べることを…。





俄雨(にわかあめ)…突然に降ってきて,すぐに止んでしまう雨

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