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プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~  作者: 阿津沼一成
第2章 サマータイム・ラプソディ
90/90

第90話 園崎ちゃんのセーラー服 そのに

「しまったあああああああああ!!!!!!!」


日付捏造写真を何枚か撮ったあと、画像を確認していた園崎が突然叫びを上げた


顔に片手をあて、よろけながら数歩後ずさり…


《ドッ》


壁に背中を打ち当てる


「ど、どうしたんだ園崎」


芝居がかったその行動に多少引きながら、俺は園崎に尋ねた


「経吾…お前は気付かないか?この写真の違和感に…」


そう言って、いま撮影したばかりの自撮りツーショット写真を示してくる園崎


デジカメ背面の液晶に…学ランを着た俺とセーラー服姿の園崎が互いに背中を合わせ、片目をつむった顔の前に指を変な形にした手を添えたポーズで写っている


…なんだ、この写真…


「…いや、強いて言うなら全てにおいておかしな事だらけなんだが…」


改めて自分を客観視した俺は思わず冷静にツッコミを入れた


「そう…お前は詰め襟学生服…そしてボクは半袖セーラー服…つまり、冬服と夏服が混在した不自然極まりない写真になっているんだ」


俺のセリフに含まれたニュアンスを全く汲み取ることなく、園崎はそう言ってワナワナと身を震わせた


「あー…、そう言われてみれば確かにそうかもしれないけど…別に気にする程のことでもないんじゃないか?」


それよりも先にツッコむべき事があり過ぎて、その程度の事どうでもいいというか…


「ダメだ!!一分の隙も無い完璧なクオリティのものでなければ!!僅かな綻びでも見逃すと、そこから全てが瓦解することにもなりかねん!!」


気の抜けた返事を返す俺とは対照的に、園崎は握った拳を震わせながら熱く力説した


誰に見せる訳でも無いだろうに…何故そこまで捏造のクオリティを追求するのか…


いいかげん精神的疲労が溜まっていた俺はやれやれと溜息をついた


「なあ、もうそろそろ終わりに…」


「と言う訳でボクは今から冬服に着替えてくる」


「え?」


「ん?」


園崎…いま、なんて言った?


「…冬服って…セーラー服の…冬服?」


俺は自分の耳が聞き取った言葉に間違いが無いか確認を取った


「え?…もちろんそうだけど…」


「!!!!」


瞬間、俺の全身を激しい衝撃が突き抜けた


「どし…たの?」


俺の纏う空気が急変したことを敏感に感じ取った園崎が躊躇いがちに聞いてくる


「…確かにお前の言う通りだ園崎。お遊びの写真撮影とはいえ、リアリティは大事だよな。全面的に同意しようじゃないか」


「え、あ、うん。ありがと?」


手のひらを返すように意見を翻した俺に、園崎は一瞬戸惑いを見せるが…


「ま、まあいいや。じゃあ着替えてくるから待っててくれ」


気を取り直すようにそう言うと、ひとり部屋を出ていった


…。


………。


………………。


自然と俺の口の端が上がっていく


「くく…くくく…」


知らず、含み笑いが漏れる


これは…なんたる僥倖か!


夏服に続いて冬服のセーラー服姿までもが見れるとは!


今日の俺はどこまで幸運なんだ!!



やはり『制服』といえば本来、冬服こそが正式の仕様であり夏服はあくまでその簡略版だ


確かに生地の薄さや肌の露出が多い夏服が魅力的なのは間違いない


だがしかし!!


冬服の『いかにも制服』という存在感と様式美は、夏服とはまた違った魅力に溢れている


ああ…、実に楽しみだ


俺の胸の中で期待がどんどんと膨らんでいく


気を落ち着かせるため深く息を吸い込んだ時、ドアの向こうから園崎の足音が俺の耳に届いた


《ガチャ》


「お待たせ、経吾。着替えてきたぞ」


そんなセリフと共に、園崎がドアを開け部屋の中へと入ってくる


夏服の時とは違い躊躇なく姿を見せた園崎に、俺は不意を突かれる形になった


「ほら、これなら経吾の学ランと並んで立っても違和感ないだろ?」


そう言って得意げな顔を見せる園崎


だが、俺は目の前の光景を前に、息を吸い込んだ口のまま呆けたように言葉を返せないでいた


園崎が…冬服のセーラー服を身に着け佇んでいる


基本的なデザインは夏服と同じで、茶系の配色を濃くしたような長袖セーラー


そこまでは俺の予想した通りだった


しかし予想と違っていたのは…


セーラー服の上に羽織るように身につけたベージュのカーディガン


そして、膝下丈のプリーツスカートから伸びる2本の脚には・・・黒のタイツ


園崎の姿は楚々とした雰囲気を纏い、まさにお嬢様然としていた


淡いソフトフォーカスが掛かり、うっすらと光を放っているようにすら見えるのは俺の気のせいだろうか…



「…尊い」


「え?なに?」


無意識で漏れた俺の呟きに、園崎がキョトンとした表情を返す


「ななな何でもない何でもない何でもない」


我に返った俺は慌ててその場を取り繕う


「くふふ、変なの。…まあいいや、準備も整ったところで早速撮影を再開するぞ経吾」


挙動不審な俺をさして気にも留めることなく、園崎はそう言ってカメラを示してくる


惑わされるな俺、中身はいつもの園崎だ


決して崇拝の対象ではない


「それじゃあ、日付も冬服の時期に設定し直して…と」


そう言いながらデジカメ背面のボタンを操作する園崎


俺はこっそりとその姿を改めて盗み見る


カーディガンで目立たないが相も変わらず上衣の中は窮屈そうだ


そして・・・両脚をラッピングしている黒のタイツ・・・


(※最初に断っておくが俺は別にタイツフェチではない)


ポリエステル素材独特の光沢と陰影が園崎のふくらはぎの曲線を芸術的なまでの美しさに高めている


黒の濃度からみて140デニールといったところか…


素晴らしいチョイスだ、園崎


「…いすにすわってあしをくんでほしい」


「ん?経吾、何か言った?」


「げふんげふんげふん。何でもない何でもない何でもない」


いかんいかん、うっかり願望が口から漏れ出た


「椅子がどうとか言ってなかった?」


「き、聞き間違いじゃないか?そ、そんなことより日付の設定は済んだのか?」


俺は話題を逸らして変態的な失言を誤魔化す


「あー、そのことなんだが…例えばこの日付で撮るとして…実際はなにか別の事をしていた、とか…アリバイがあったり…するか?」


急におずおずとした態度でそんなことを聞いてくる園崎


「アリバイて・・・いや、そんなこと言われても、そんな細かい事いちいち覚えてるわけ…」


そう答えながら園崎が示してきた設定画面の日付を見る


日付の表示は2年前の…


「12月24日・・・クリスマスイブ?」


「いや、だからな、えっと…ほら、アレだ、ボク達は親友だろ?親友同士ならこんな日は共に過ごしていてもなんら不思議ではあるまい。いや、むしろそれが自然というものだろ?」


真っ赤な顔でそんな説明を入れてくる園崎


「…そういうもんか?」


まあ、思い返してみれば…確かに去年のクリスマスはタナカ、サトウと男3人で街に繰り出し、『カノジョ欲しいなー。クソー。カップル共絶滅しろ。』とか言いながら道行く男女に怨嗟の念を送ったりしていたが…


「それともなにか?この日お前は…誰かと一緒に過ごしていたとでもいうのか?」


睨むような眼でそう聞いてくる園崎


「2年前っていうと…中3の時のクリスマスだろ?」


わざわざ思い返さずとも恋人と過ごしてた…なんて事実は100%無い


そもそもが俺にカノジョがいた事なんて一度も…


「・・・あ」


「ん?」


「えーと・・・いや、何でもない」


「・・・何かあったんだな?」


言い淀む俺に何かを察した園崎が追求してくる


「…いや、その、別にたいしたことじゃ…」


「話せ」


「いや、ホントたいしたことじゃ…」


「いいから・・・話せ」


「わ、わかった。わかったから無表情で胸ぐらを掴むのをやめて下さい」


俺の襟首を締め上げる園崎の目から虹彩が消えたことに命の危険を察知した俺は包み隠さず正直に話すことを選んだ


「えーと・・・前に二人で…図書館で勉強会したろ?」


「ああ、あったな」


「その時の帰り、俺の中学の時の知り合いに会っただろ?」


「ん?…ああ…!?…あの時の女か!」


思い出したらしい園崎が険しい目になる


「それで…あの女と何があった!!」


「いや、だから、その…」


俺は一瞬躊躇ったあと…


「呼び出して・・・告って・・・・・・・フラれた」


「・・・」


「・・・」


「・・・クリスマスに?」


「・・・・・そうだよ」


「・・・・・・・・」


「なんだよ!その目は!」


憐憫とも蔑みともいえない微妙な眼差しを送ってくる園崎


「そういえば『自信満々に告った』って言ってたっけ?」


「うぐ!?」


「それでよりにもよってクリスマスイブに…。なるほどなぁ、あわよくばそのまま…とか考えてた訳だ」


「・・・そ、そんなことは」


好きな女の子相手に過去の失恋話をする羽目になった俺のハートはズタズタになっていく


「告って、フラれて、それでその後は?どうしたんだ?」


無情にも、なお古傷を抉るように尋問を続ける園崎


「・・・家に帰って…布団に潜り込んで…寝ました」


心を折られていた俺は情けない話を素直に話した



うん。だんだん鮮明に思い出してきたぞ


家に帰ったら姉さんと友人達がクリパしてて、俺も混ざるように言われたんだけど体調悪いからって断ったんだ


いつもなら無理矢理でも引っ張り込むのに、俺の表情があまりにも死んでいたためか、あいつらあっさりと引き下がったんだよな


俺はそのままノロノロと自分の部屋に入り布団に潜り込んで・・・階下から聞こえてくる≪3次元の男なんかいるかー!!≫なんてシュプレヒコールを耳に、いつしか眠りに落ちていったんだ・・・


くっ・・・、あの時の苦い気持ちが甦ってきた


「経吾」


「・・・なんだよ」


「座って」


指で床を指し示す園崎


「はい」


俺は従僕のように、ただ素直に従った


悪魔か!?これ以上、どんな責苦を味わわせるつもりなんだ!?


覚悟した俺は園崎の次の行動を待つが…


「!?」


不意にその両腕が俺の頭の後ろに回されたかと思うと…ぎゅっと抱きしめるようにその胸の中へと引き寄せられた


「・・・そ、園崎?」


「あの時も言ったろ?ボクが慰めてやるって」


冷酷な尋問官から、まるで慈母神の姿へと変貌した園崎は慈愛に満ちた声で俺に語りかける


「経吾、2年前のあの日…お前は家には帰らず親友であるボクの家へとやってきた。そして自らの愚行をボクに打ち明けたんだ。心の底から悔い、むせび泣くお前の事をボクはこうして慰めてやったんだ」


慈愛に満ちた声で捏造した過去を語る園崎


「いや、だから泣いてねえって・・・」


園崎の胸に顔を半分埋めながら俺は反論する


「そうだったか?わんわん泣いてたように記憶してるが?」


あくまでも『醜態を晒す俺』という改竄された過去を確定したいようだな・・・


しかし・・・なんて脳が蕩けそうな感触なんだ


『人間をダメにするクッション』てのがあったが・・・これはそんなものの比ではないぞ


反論する気力が奪われていく




なんかもう…




頭の中が園崎の胸のことで一杯になって・・・





他の事など・・・どうでもよくなってきた・・・





園崎のおっぱいやわらかい


園崎のおっぱいあったかい


園崎のおっぱいいいにおい…


園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい

園崎のおっぱい…



「くふふ、かわいいなぁけーご…よしよし、気の済むまで泣いていいぞ」


俺を胸に抱いたまま、そう言いながら頭を撫でてくる園崎


「けーご、これに懲りたら・・・今後誰かを好きになったとき、告白とかする前にちゃんとボクに相談するんだぞ?」


優しい声でそう語りかけてくる園崎


「ああ…わかったよ、園崎…」


ぼうっとした頭で、俺は素直に頷く


「絶対だからな?もし告白するつもりになったら・・・まずボクに許可を取ってからにするんだ」


「園崎に・・・許可を取ってから?」


「そうだぞ・・・ボクが許可するまで告白はしない。約束できるか?」


「うん。わかった・・・約束する」


夢見心地の中、俺は園崎とそんな約束を交わした


----------------------------------------------------


「くふ、くふふふふふふ、いい写真がいっぱい撮れた。これを見れば、誰もがボク達の結び付きの強さを知る事になるだろう」


デジカメ背面の液晶に映る画像をひとつひとつ確認しながら園崎は満面の笑みを浮かべる


いつの間に撮ったのか…俺がだらしなく顔を緩ませて園崎の胸に顔を埋めている写真まである


「ちょ、待て、園崎。いつの間にそんな写真撮ったんだ!?」


「くふ。実にいい表情だぞ、けーご。ボクに身も心も委ね切っているかのような無垢で可愛いらしい顔だ」


ニヤニヤ笑いで俺をからかってくる園崎


くっ・・・一生の不覚だ。あんな写真誰かに見られたら間違い無く誤解される。・・・・・・いや、見られて困るのはむしろ園崎の方じゃないのか?


そう考えると、いくら園崎でも誰かに見せるようなことはないか・・・


「と、とにかく・・・もう十分満足したか?」


いいかげん本気でこの異常な撮影会もお終いにして貰いたい


俺はそんな思いで終了を促した


「ん〜、そうだな・・・ところで経吾、ちょっと尋ねたいことがあるんだが」


「ん?尋ねたいこと?」











「さっき僕のスカートがずり落ちた時・・・シャッター音が聞こえた気がしたんだが?」


「ッ!!!!」



俺の心拍数が一気に増加するとともに全身から嫌な汗が吹き出した


「う・・・あ・・・・あ・・・・・・」


両の足はガクガクと震え・・・そのまま倒れるように俺は床に膝を突いた


と同時に両手も床に突き・・・打ちつけるような勢いで額も床へとつける


そして、


「すいませんでしたああああああああ!!!」


叫ぶように全力で謝罪の言葉を発した


「俺が悪かった。つい手が滑って・・・。もちろん撮った画像は今すぐ削除する。だから・・・許してくれ!!」


園崎に詫びながら、俺は自分のしでかした軽はずみな行動を激しく悔いた


シャッターボタンを押したのはわざとじゃないにしても、下着姿の写った写真をこっそり保存して持ち帰ろうとした事実は変わらない


これは絶交を言い渡されても仕方がない程の不義理な行いだった



そんな渾身の土下座で許しを乞う俺の肩に…


ぽん


園崎の手が乗せられ、俺はビクリと身を震わせる


早鐘のような心臓の音を耳の奥で聞きながら、判決を待つ被告人のように俺は園崎の返答を待った


「許すも何も・・・ボクは別に怒ってなんかいないぞ経吾。それに撮った画像だって、別に削除しなくて構わないし」


「・・・・・・え?」


信じられない恩赦の言葉に、俺は我が耳を疑い顔を上げた


そこにあったものは・・・


慈愛に溢れる微笑みを湛えた園崎の顔だった


天使?・・・いや、本当に女神なのか?


俺は園崎の神格的な慈悲深さに心が震えた






「ところで経吾。ボクに言ったあの言葉・・・覚えてるかな?」




にっこりとした笑顔のまま園崎がそう聞いてきた


「・・・あの言葉?」


「うん。確か・・・『親友であるボク達の間に不平等があってはいけない。公平じゃなきゃ駄目』・・・そんな感じのこと言ってたよね?」


「え?・・・あ、ああ」


それは先ほど園崎にセーラー服を着せるため、俺が弄した詭弁のことだと思い当たった


「ボクも全くその通りだと思うよ」


笑顔のまま、話を続ける園崎


「ところで・・・いま現在、ボクと経吾・・・かなり不公平な状態になってるよね?」


「え?」


「この著しく公平を欠いた現状を是正するために、いまから自分が何をすればいいか。・・・分かるよね?経吾」


片手に持ったデジカメを弄びながら、そう俺に問い掛ける園崎


何を言わんとしているのか・・・その意味を察した俺はゾクリと背筋に悪寒が走るのを感じた


そのロジックを今の状況に当てはめると、つまり・・・






「・・・・・・・許してください」


「え?なに?」


聞こえなかった体で俺の懇願を圧殺する園崎


顔は相変わらず微笑を湛えていたが、そこには絶対に拒否を許さぬ圧が籠もっていた



その重圧に屈した俺は絶望感に震えながら、のろのろと立ち上がる



そんな俺を前に鼻歌交じりでデジカメの電源を入れる園崎





全てを諦めた俺は・・・・震える指先でズボンのベルトを外した



(つづく)


【あとがき】


皆様こんばんわ。お久しぶりでございます。


前回よりは早めに更新できました。


・・・しかし次はいつになるやら


気長にお待ちいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おっぱい [気になる点] おっぱい [一言] おっぱい ご馳走様でした
[一言] 応援してます。
[良い点] 更新お疲れ様です。 もう早よ付き合えこいつら…! [気になる点] 経吾くんあなた話数が進むにつれてバカになってないか?(笑)
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