第81話 ナツヤスミアケショニチ ソノニ
「えーと・・・、大丈夫か?園崎」
俺は青白い顔でチョココロネをもそもそと食べる園崎にそう声をかけた
夏休み開け初日
午前の授業が終わり、今は昼休みの時間だ
朝のうちは普通に見えた園崎だったが、時間が経つにつれ徐々にぐったりとしてきた
どうしたのかと尋ねると、同じ空間に人が大勢いる環境が久しぶりで・・・酔ったらしい
「けーご以外の全員、木っ端微塵に消し飛べばいいのに・・・」
そんな物騒な呟きを漏らしながらも、園崎は大人しく席に着いていた
そんなこんなで、やっと訪れた昼休み
逃げるように教室を出る園崎に引っ張られ、俺達は購買でパンと飲み物を買ってからこの中庭へとやってきたのだ
空いたベンチに並んで腰掛け、それぞれ買ってきたパンを頬張った
「疲弊した身体に糖分が染み渡る・・・」
チョココロネをもすもすと咀嚼しながら園崎がそんなことを言っている
顔を見ると僅かに血の気が戻って来てるように見えた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
パンを食べ終えた俺たちは一息ついた
昼休みでもこの中庭にいる生徒はまばらだ
「日陰でもやっぱ少し暑いな・・・校舎の中に戻らないか?園崎」
少し汗ばんできた俺は園崎にそう提案した
「うん。だけど教室はな・・・、どっか静かで人のいないとこ無いかな」
園崎は眉を寄せ、そんな希望を口にする
「図書室とかはどうだ?」
「んー、確かにそこなら静かかもしんないけど・・・出来れば・・・誰もいないとこがいい・・・」
園崎が条件を絞ってきた
「あるかな、そんなとこ。・・・とりあえず探してみるか?」
俺は立ち上りながらそう言った
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二人連れ立って校舎内をさ迷い歩く
しかし、園崎が言うような条件を満たす場所はなかなか見つからなかった
準備室の類いの小部屋は大体が施錠されている
そうこうしている内にも昼休みの終わりが近付いてきた
「園崎、もうそろそろ午後の授業が始まる時間だ。諦めて教室に戻ろうぜ」
「・・・」
俺は前を歩く園崎の背中にそう声をかけるが・・・返答がない
「なあ、園崎」
再び名を呼ぶ
「・・・もう、この際ここでいい」
「え?・・・うわっ!?」
急に手を引っ張られ、強制的に移動させられた先は・・・階段下の小さな空間だった
ほんの僅かではあるが周囲から隔絶されたスペース
そこで俺と園崎は10センチと離れない距離で向かい合った
「えっと・・・園崎?」
意図が読み切れず、俺は困惑するばかりだった
園崎が俯きがちに視線を泳がせたあと・・・上目使いで
「魔素〈ソーマ〉・・・補給したい」
と言った
「え?・・・・・・・・・・・・・・え!?いま!?ここで!?」
「こ、声が大きい。誰か来ちゃうだろ」
慌てた園崎が俺の口を片手で塞ぐ
口許が園崎の柔らかい手の感触に包まれる
と同時に・・・胸元にはそれを遥かに上回る柔らかさが密着してくる
「・・・でも、学校の中だぞ。いくらなんでも・・・不謹慎だろ?」
手のひらの下から小声でそう訴える
「っ・・・・・・・・・・経吾。前にも言ったと思うが、この術式は人間の男女が行うキ、キ、キスなどという・・・俗っぽい行為とはまるで違うものだ。人目を避けて行うのは、決してやましいコトをしているからではなく・・・それを理解しない凡夫どもからあらぬ誤解を受けるのを回避する為の措置で・・・」
「わ、分かった。分かったから」
思わず勢いに飲まれて承諾してしまった
「・・・なら、早くして。時間がもったいない」
そう言うと園崎は瞼を閉じて顎を少し上げた
事ここに至っては覚悟を決めるしかない
俺は素早く階段下から廊下へと首を伸ばし、左右の確認を行う
近くに他の生徒は・・・いない
状況を確認してから、園崎に向き直る
学校の中でそんな事をしてるのが見つかったら・・・・かなりマズイ状況になるだろう
こうなったら、手早く短時間で終わらせてリスクを最小限に抑えるしかない
そうだ・・・一瞬だけ触れて、すぐにパッと離れればいい
そう自分に言い聞かせ、その両肩に手を添える
無防備に俺を待つ、艶やかな唇・・・かつて無いスリルと背徳感の中、自分のをそこへと重ね合わせた
瞬間、頭の中で脳内麻薬的な快楽物質が爆発的に分泌され、溢れ出す
意識がぐにゃぐにゃになりそうな感覚の中、それでも理性はしっかりと欲望の手綱を握っていた
その時までは
ちょっとだけ・・・そのつもりで挿し入れた舌先に
・・・甘いチョコの味がした
理性はあっさりと瓦解し・・・俺は園崎の甘露な唇を夢中で貪る行為に没入していった
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
予鈴の鐘の音で我に返った俺は茹でダコのようになった園崎の手を引いて慌てて教室へと戻った
あの『術式』を始めると、つい周りの事など何もかも忘れて没頭してしまう
特に今日なんか・・・『チョコ味の園崎』とか反則もいいとこだ
それにしても、さっきは本当に誰にも見られて無くてよかった
今更ながらに自分達の軽率さに肝が冷える
チラリと隣の席に座る園崎へと視線を向けると、彼女は机に突っ伏したまま微動だにしていない
どうやら午後の授業は寝て過ごすようだ
やれやれ・・・
俺はそんな園崎の頭を撫でたくなる衝動と闘いながら真面目に授業を受けたのだった
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「む・・・やっと放課後か?経吾、今日の部活だが・・・」
チャイムの音と同時に伏せていた顔を上げ、伸びをしながらそんなセリフをのたまう園崎に俺はジト目を返す
「ん?なんだ、その顔は?」
俺の表情に園崎が眉を寄せた
「あのな・・・、さっきホームルームで決まったことなんだけど・・・やっぱお前、話聞いてなかったな」
「え?・・・あー・・・寝てたしな」
案の定な返答を返す園崎に俺は溜め息をついてから説明を始める
「来週、毎年恒例の全校球技大会があるんだが・・・クラスから代表一人、実行委員を出さなきゃならん。で・・・ジャンケンの結果、俺が選出された」
「ほう、そんな事が・・・」
顎に手をやり、フムフムと頷きながら話を聞く園崎
ちなみにそのジャンケンの時、園崎は机に突っ伏していたため免除された
公平さにこだわる委員長は当然起こそうとしたのだが、仮に委員になってもマトモに仕事しないだろう、との意見が採択された結果、そのまま放置されることになった
物事を円滑に進めるためには多少の特例は許されるということだ
「そんな訳で俺、来週までは放課後は委員会の集まりがあるから・・・『部活』はナシだ」
「なんだと!?」
俺の説明に園崎は愕然とした表情になる
「俺だってやりたくないけどな・・・だからと言ってやらない訳にもいかないんだよ」
俺は溜め息と共に諦観のセリフを吐く
『嫌だ、やりたくない』では話は進まない。世の中は回らない
それは社会の縮図たる学校においても同じだ
誰かが貧乏クジを引かねばならんのだ
「てな訳で俺は今から会議室だ。遅くなるかも知れないから先に帰っていいぞ」
俺はそう言いながら椅子から立ち上った
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あれ、義川くん?・・・もしかして義川くんも実行委員?」
会議室の手前でそう声をかけられた
振り向くと見知った顔の女子生徒が歩いてくるのが見えた
「ああ、なんだユミか・・・。『も』ってことは、ユミも実行委員なのか?」
「そーだよ。・・・義川くん、またジャンケンで負けたんでしょ?」
ニンマリとした顔でそう言ってくるユミ
「う、何故それを・・・」
「あはは、相変わらずジャンケン弱いんだねー」
けらけらと笑うユミに俺はジト目を返す
「そういうお前だってジャンケンで負けたからここにいるんじゃないのか?」
「ふふん、残念でした。あたしはジャンケンでなんか負けてないわ。あたしがここにいるのは・・・アミダの結果よ」
ユミはそう言うとドヤ顔で胸を反らした
制服のブラウスにブラのプリント柄がうっすら透けて目のやり場に困る
・・・コイツ、結構派手なの着けてるな
っと、いかんいかん
「け、結局ハズレを引いたからここにいるんだろ?お前こそ相変わらずじゃないか」
ヨコシマな思考を誤魔化しながらそう言うとユミがイーっと顔をしかめた
ホント、コイツは変わってな・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・随分仲がいいんだね?」
「!?」
突然、背後から耳元でそう声をかけられ、俺は心臓が止まりそうになる
驚いて振り返ると・・・すぐ真後ろに、つい先ほど教室で別れたはずの園崎が立っていた
だが・・・
何故か、その纏っている空気は 打って変わってとても冷たい物へと変貌していた
「誰なのかな?その女。・・・ユミ、とか気安く呼んじゃって」
無表情で淡々と問いかけてくる園崎に、言い様の無い恐怖を感じる
虹彩が消えた真っ暗な瞳は底の見えない空洞を思わせた
「そ、園崎。なんでここに・・・?」
「経吾の用事終わるの待って一緒に帰ろうと思って・・・・・・・それよりこの女は?誰?」
氷のような視線でそう問い詰めてくる
・・・あー、久しぶりの学校だったから忘れてた
園崎は俺に親しく近付く人物に対して、極度に警戒してくるんだ
『敵側の転生者かもしれん。決して気を許すな』・・・とか言って
特に相手が女だった場合、その警戒心は敵愾心にまで高まる
「・・・えっと、こっちは一年の時、同じクラスだったユミ。ユ、ユミは名字な?」
俺は園崎を下手に刺激しないように、やんわりと説明した
「んー、誰?その子」
今度は反対側からユミが聞いてくる
同じ質問だが、纏っている空気も声のトーンも園崎とは正反対の物だ
「えっと、彼女は・・・クラスメイトの園崎」
「ふーん、そっか。あたし弓削紗衣佳、よろしくね園崎さん」
「園崎・・・柚葉だ」
屈託無く自己紹介するユミに対し、園崎は憮然とした表情でぶっきらぼうに応える
「あはは、警戒されてる。猫っぽくて可愛いー」
園崎の無愛想な態度を好意的に解釈してけらけらと笑うユミ
相変わらず相手の反応など意に介さない奴だ
おおらかというか・・・大雑把な性格なんだよな・・・
でも『空気を読まない奴』って訳じゃなくて・・・空気を読んだ上でそれを気にしない・・・そんな奴だ
「・・・前の・・・クラスメイト・・・ただの・・・クラスメイト・・・単なる・・・クラス・・・メイト・・・」
ユミとは対照的に園崎は暗い表情でブツブツと呟きを漏らしている
「あたし、義川くんとは一年の時、よくペアを組んでてねー」
ギリッ!!
ユミが口にしたセリフに園崎が歯軋りを立てた
「・・・・・・・・・・・・・・ペア?・・・ペアって何?」
園崎の眼球がぐりんと俺の方を向いた
・・・こ、こええ
「いやいやいや、ほら俺ら同じ『や行』で名前近いからさ、よく週番とか掃除とかで一緒になったって意味で・・・」
「そーそー、それとあたしらジャンケンがめちゃくちゃ弱いんでさー、しょっちゅう色んな係とか当番とかにされてさー」
やましい事は何一つないはずなのに、なんか言い訳じみた説明になってる俺のセリフにユミがセリフを被せてくる
「なんだかんだで、ほぼ一年中ふたりで色々やりまくってたんだよねー」
「・・・ほぼ一年中・・・・・・・・・・・二人でヤリまくってた?」
ユミのセリフの一部を繰り返して呟き、片頬をヒクヒクと引きつらせる園崎
「いや、あのな園崎・・・」
俺は様子のおかしい園崎をなんとか宥めようと口を開くが・・・
「あ。もう会議始まるっぽいよー」
横からユミにグイッと片腕を引っ張られた
「え?ユミ、ちょ、待っ・・・」
「義川くん、義川くん。折角だからとなり座ろ。となり」
相変わらず人の話を聞かないユミにグイグイと引っ張られ、俺はそのまま会議室の中へと連れ込まれてしまった
廊下に取り残された形になった園崎の瞳には・・・燐光を思わせる青白い炎が揺らめいて見え・・・俺は背筋に冷たい汗が伝うのを感じた
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ふー、終わった終わった。さあ帰ろー」
隣で椅子から立ち上がったユミが伸びをしながらそう言った
俺も配られた資料を手に立ち上がる
会議自体は滞りなく30分ほどで済んだのだが・・・
扉の小窓から、親指の爪を噛みながら恨めしそうな視線を送る園崎の姿がチラチラと見え、俺は会議に全然集中できなかった
おっかなびっくり廊下に出るが・・・そこに園崎の姿は無く俺は些か拍子抜けする
「いやー、けっきょく委員の役割分担も義川くんとペアになっちゃったねー。またしばらくよろしくねー」
・・・いま思い出したが、ユミの奴いつも何だかんだで仕事押し付けてきて、8割くらい俺がやってたような気がする
俺は前を歩くユミの背中にジト目を送った
「ねー、義川くん。せっかく久々に会ったんだからさー、一緒に帰んない?そんでなんか驕ってよ。コンビニのアイスとかでいいからさー」
「お前なあ・・・、なに勝手なこと・・・ぐおッ!?」
その時、急に襟首を掴まれ強い力で引っ張られた
「・・・静かにしろ。騒ぐんじゃないぞ」
何者かに背後から口を塞がれ、耳元でそう囁かれる
いや、何者かに・・・というか、こんな事をするのは俺が知る限り一人しかいないのだが・・・
そしてそれは背中に押し当てられている柔らかい感触からも断定できる
「ねー、義川くん聞いてる?・・・ありゃ、いない」
ユミの困惑した声が聞こえた
・・・それにしても背中に当たるこの弾力は実に素晴らしい
口元に張りついているこじんまりした手のひらの感触も悪くない
「ちぇー、逃げられたかー。・・・まあ、いいや。他に誰か驕ってくれそうなヒトいないかなー」
ユミの足音が遠ざかっていく
と同時に俺の拘束が解かれた
・・・もうちょっとこのままでも良かったんだが
物足りなさを感じながらも後ろを向くと・・・相手はやはり園崎だった
まだ表情には不機嫌そうな色が残っている
「えーと・・・」
俺は言葉が見つからず、周囲に視線を泳がす
どうやら俺が引っ張り込まれたこの場所は、使ってない空き教室のようだ
そこらじゅうに雑然と物が置かれている
「経吾」
「はいっ」
急に名前を呼ばれ、俺は思わず背筋をピンと伸ばして返事を返す
改めて園崎を正面から見ると、まだその瞳は睨むように俺に向けられている
「あー・・・、うー・・・。ーー・・・」
何か言おうとして口を開いた園崎は・・・だが上手く言葉に出来ないみたいに開きかけた口を閉じ・・・また開きかけたりという動きを繰り返した
やがて、深く息を吐いたあと・・・静かにポツリポツリと話し出す
「言いたい、事は・・・、色々と、あるんだが・・・」
「・・・うん」
俺は神妙な心持ちで園崎の言葉に耳を傾ける
「頭んなか・・・ごちゃごちゃして・・・考えがまとまんなくて・・・」
「うん」
「ドス黒い負の力が・・・胸の中で・・・ドロドロと渦巻いてるような気分で・・・」
「う、うん」
「これを・・・どうにかしたいんだが・・・自分ではどうすることも出来なくて・・・」
「うん」
「とりあえず経吾に・・・・・・・・・・・ちゅーしてほしい」
「うん・・・・・・・・・え?」
「え?・・・・・・・・・・あっ、いや、ちょ、ちが、違くて!だから、その・・・」
自分が直前に口にした言葉に対し、真っ赤な顔で言い訳を始める園崎
「ちゅ、『中和』。・・・この負の情動を『中和』してって言ったの」
「そ、そうか・・・」
あー、びっくりした
甘えた言葉遣いでキスをせがまれたのかと思ってしまった
「で、それは具体的にどうすればいいんだ?」
急に言われても俺はその『中和』とやらのやり方・・・設定を知らない
「け、経吾の魔素〈ソーマ〉をボクに注ぎ・・・二人の魔素を混合することで中和させる」
「・・・えっと、それってつまり?」
「い、いつもの魔素〈ソーマ〉の譲渡と・・・き、基本的なやり方は、同じ」
広義的にはキスねだられたのと同義だった
「理解したか?」
真っ赤な頬と睨むような上目使いで確認してくる園崎
「わ、わかった」
俺はコクコク頷き、了解を示した
「だったら・・・・・・・はやくちゅーして」
「あ、ああ」
急かされた俺は反射的に園崎の両の二の腕を掴み、引き寄せた
・・・てゆーか、今も『ちゅー』って言ったよな?
いや、呼称の問題などこの際どうでもいい
いま重要なのは園崎の中にあるという〈負の情動〉を『中和』することだ
そうすれば原因不明な機嫌の悪さも直るに違いない
そう確信した俺は、瞼を閉じてじっと待っている園崎の唇へと己のそれを重ね合わせた
「んっ・・・」
園崎が鼻にかかった声を漏らす
この柔らかな感触に触れるのもこれで何度目になるだろうか
繰り返すたびに・・・飽きるどころか益々病みつきになっていく
園崎が僅かに唇を開き・・・俺は導かれるようにその隙間へとゆっくり舌を挿し入れた
すでにチョコの味は残っていない
いつものプレーンな園崎の味だ
伸ばした舌の先に園崎の舌先が触れた
くすぐったいような・・・えも言えぬ快感が背中をかけ上がる
「んむ・・・んっ・・・」
園崎が俺の舌に自分の舌を擦り寄せてくる
・・・くちゅ・・・ちゅ・・・ちゅぷ・・・
淫猥な音を奏でながらお互いの舌と舌で戯れあう
快感と共に性的な昂りが膨れ上がってくる
恋人でもない相手と・・・
学校の中で・・・こんなこと・・・
冷静に考えれば不謹慎この上ない状況だ
・・・ちゅぷ
ひとしきり続けたあと・・・唇を離し、
「・・・中和・・・できた?」
そう確認を取った
『この行為はあくまでも術式であり、それ以外の意味なんかない』・・・という俺にとってのアリバイ作り
「・・・だめ・・・まだ・・・したんない」
ねだるような目と声に・・・俺の中で何かが弾け飛んだ
再び唇と唇を繋ぎ合わせる
背中に回された園崎の腕が俺をぎゅっと抱きしめてきた
柔らかさと温もりが心地よい
俺も園崎の背中へ腕を回し、抱きしめ返す
・・・ちゅく・・・っちゅ・・・ちゅ・・・
俺と園崎は貪るようにお互いの唇を吸い、舌と舌を絡め合わせる
園崎の〈負の情動〉がちゃんとしっかり中和されるように・・・
俺はじっくりと念入りに・・・たっぷりと時間をかけ『術式』を施した
(つづく)
皆様お久しぶりでございます。
二か月ぶりの更新です。
相変わらずの遅筆で申し訳ありません。
次回はいつになるやら自分でも分かりませんが、どうか気長にお待ちください。




