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プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~  作者: 阿津沼一成
第2章 サマータイム・ラプソディ
78/90

第78話 Summer Date final part_05

「けーご・・・、ボク・・・もう我慢できないんだ・・・けーごが・・・欲しい・・・」


「そ、園崎・・・?」


思い詰めた表情の園崎が俺を見下ろしていた

その頬は朱に染まり、瞳は潤んでいる


その姿はまるで・・・愛を告白する可憐な少女のようだ


いや、ちょっと待て


今のセリフって思いっ切り愛の告白っぽくなかったか?

それもかなり情熱的な


え?・・・マジ?


俺、園崎に告られてるの?


にわかには信じられず、俺は改めて自分の置かれている状況を確認してみる


俺の身体は・・・敷かれた布団の上、仰向けで寝た状態にある


そして園崎は・・・そんな俺の上に覆い被さるような体勢で両手を突いていた


・・・って、まるで園崎に押し倒されたみたいになってんだけど!?


何がどうしてこうなった!?

この状況に至るまでの過程が思い出せない


園崎が身につけているのは薄手の浴衣


しかも前が大きくはだけ・・・その豊満な膨らみは、かろうじて先端部が隠れているのみだ


その上、四つん這いの体勢を取ったことで、その部位は重力の影響を受け・・・数倍にも大きく見えた


生物的本能により俺の目はそこに釘付けになる


「経吾が欲しいの・・・いいでしょ?」

「ふぇっ!?」


思わず変な声が出た


俺はゆさゆさと揺れる二つの薄桃色の房を凝視したまま、園崎の言葉を反芻する


「・・・欲しい?・・・俺のことが?」


著しく低下した思考力でその言葉に込められた意味を類推する


しかし、導き出したその解釈が果たして合っているのか・・・自信が持てない


「んっとね・・・ぐたいてきにいうと・・・いれたいの」







「え?」





園崎、いま何て言った?


耳に入った園崎の言葉がにわかには信じられず、俺の脳は聴覚からの音声情報を漢字変換することがすぐには出来なかった


まさか・・・『入れたい』って言ったのか?


「んふ、正確には『挿入』って書いて『挿入れたい』ね」


俺の思考を読んだかのようなセリフで説明をしてくる園崎


マジか!?


俺が導き出した解答・・・『性行為を求める意味のセリフ』で正解だったというのか!?


夢にまで見たDT卒業が・・・まさかこんな形で・・・しかも好きな女の子の方から求められて・・・だなんて



いや、待て待て。慌てるな俺



エロい展開と思わせてといて違うオチってのはラブコメなんかじゃお約束のパターンじゃないか


ここは慎重にいくべきだ


「えっと、入れるって・・・どこに・・・なにを?」


俺は念のため確認してみるが・・・


「やだ・・・経吾の意地悪・・・、それを・・・ボクの口から言わすの?」


園崎は真っ赤な顔になって言い澱む


こ、この反応は・・・間違い無い!


「そんなのもちろん・・・








経吾にボクの×××を挿入れるのに決まってるでしょ?」






「へ?」




俺に?園崎の・・・×××!?


主語と述語がおかしくないか?


「って、なにそれ!?なにそれ!?ナニそれ!?」


それまで上半身ばかりを見ていた視線をふと下げた俺は・・・それの存在に気付いて面食らった


浴衣の前をはだけさせた格好の園崎


その隙間から見える白い肌のお腹


その下に・・・肉色をした棒状のモノが反りかえっていた


「あは・・・。見て、経吾のこと想い過ぎて・・・こんなにカチカチになっちゃったんだよ」


両足の付け根から生えたソレは、別の生き物かのように時折ぴくんぴくんと震えた


「経吾・・・ボクのこの子がね、早く経吾の中に入りたいって」


そう言いながら俺に身を寄せてくる園崎


「ひっ・・・ウソだろ?」


俺は逃げようと身を捩るが・・・手足がその場に縫い付けられたように動かない


「経吾・・・痛いのは最初だけだからね・・・すぐによがり狂わせてあげる」


「ちょ、待っ・・・」



「いいから、・・・つべこべ言わずに足を開け」


「ま、待って、待って待って!?」


「くくっ、ほら、入れるぞ・・・力を抜け・・・」


「う、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」



◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


「せめてローションを塗ってからにしてくれえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



絶叫しながら俺は激しく身を起こした


ゼエゼエと肩で荒い息をつく


吹き出した汗でTシャツがぐっしょりと濡れ、それが肌に不快に張り付いていた


視界に映ったのは・・・見慣れた自分の部屋


園崎の姿は・・・どこにもない


「・・・夢・・・か」




はあああああああああああああああああああああああああああああ



俺は長い長い安堵の息を吐いた


ってゆーか普通に考えて夢に決まってるだろ


園崎に『あんなもん』が付いてるとか・・・どう考えても現実の訳がない




・・・いや、待てよ




本当にそう言い切れるか?


確か・・・天使は『両性具有』だって聞いたことがある


「園崎がもし『天使』だったとしたら・・・両方ついてる『ふたなり』である可能性も・・・って、んな訳あるかあああああああああああああああああああああ!!!!!」


俺は自分で立てた仮説に間髪入れずツッコミを入れた


確かに園崎は天使と言われても納得せざるをえない愛らしい姿を有しているが、そんな棒状のモノなど付いないことは自信を持って断言出来る


もちろん直接目視で確認したわけではないが・・・


思い出すのは、いつだかのスポーツクラブでのアクシデント


あの時、サツキの悪ふざけで水着の下を剥ぎ取られた園崎が俺の上に倒れかかってきた


俺の太ももに跨がるような格好で


ぴったりと密着してきたその部位は・・・確実にオンナノコのものだった


じんわりと火照るような熱を帯びた・・・園崎の××××・・・



・・・。



・・・・・・。



こふん


それはそれとして・・・あんな夢を見るとは、俺もかなり変な方向に片想いを拗らせてるな・・・


ラストのオチはともかくとして・・・一緒に温泉旅館にお泊まりデートして・・・その夜、園崎の方から迫られる・・・とか


まったく、夢とはいえどんだけ都合のいい設定だよ



・・・



夢?



・・・あれ、えっと・・・夢・・・だよな?



夢の中での出来事が、所々やけに鮮明に・・・実感を伴って思い出せる


なんとも形容しがたい奇妙な感覚に頭を捻っていた時、それが視界に入った



机の上に・・・箱が一つ置いてある



俺は眉間をぐりぐりと揉んでからもう一度見直すが・・・やはりそれは・・・そこに確かに存在していた


あれは夢の中で俺が買った・・・土産物の温泉饅頭?



いまの・・・どっからどこまでが夢だ?


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


食卓に一人、俺は朝食のパンをモソモソと咀嚼しては牛乳で流し込む


経口摂取した炭水化物がブドウ糖に変化し、それが脳へと吸収されていくにつれ・・・寝起きだった頭が段々はっきりしてきた


それに伴い曖昧だった記憶が徐々に甦ってくる


園崎と温泉旅館に泊まった・・・それが紛れもない現実の出来事だったことを俺は思い出した


といってもそれは『お泊まりデート』などという恋人同士がやらかす甘あまなイベントなどではなく・・・俺達がいつもやってる謎部活の一環


マンガやアニメなんかじゃ定番のお約束イベント・・・いわゆる『合宿』というやつだった


今朝見た夢は、その記憶を元に俺の願望が加味され脚色されたものだったというわけだ


だいたい、実際に俺達がやったことといえばせいぜい・・・



温泉で混浴して身体を洗いっこしたり・・・



暗い夜道を抱き合って歩いて、神社の境内で接吻したり・・・



その後、ひとつの布団の中、抱きあって朝まで過ごしたり・・・しただけだ




って、これじゃまるっきり『お泊まりデート』じゃねえか!?


思い出は美化されるものというが・・・昨日の今日でここまでとは・・・俺の記憶も改竄が著しいようだ




・・・こふん




落ち着け俺


客観的な視点で・・・冷静に事実だけを思い出すんだ


えっと確か・・・それから翌日は土産物屋を見て回ったりしたんだよな・・・


◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


「お。あれはなんだろうな、経吾?」

「・・・っと、急に引っ張るなよ、園崎」


いきなりの方向転換を強いられた俺は、身体のバランスを整えつつ園崎の後へ続く


朝食を済ませ宿を引き払った俺達だったが、せっかくだから帰る前に土産物屋でも散策しようということになった


興味の移ろうままに歩き回る園崎に手を引かれながら、二人で土産物を見て歩く


あ、念のため断っておくが俺達が指を絡ませ合うようにしてしっかりと手を握り合っているのは、はぐれたりしないための予防措置だからな?


周りからは『ちょっとひなびた観光地を仲睦まじくデートする高校生カップル』に見えているのかもしれないが実際は全然違う


だからそこの年配夫婦の方々、微笑ましいものを見るような視線を向けるのはやめて下さい


「む。経吾、どうした?顔が赤いぞ」


妙な気恥ずかしさに顔が赤らんだのを目ざとく見てとった園崎がそう聞いてきた


「え?いやその、なんだ・・・、ちょっと暑くなってきたかなー・・・なんてな」


俺は咄嗟に上手い言い訳も思い付かず、そんなありきたりな理由で誤魔化した


「・・・ちょっとこい」

「え?園崎?」


俺の言葉をどう受け取ったのか、園崎は俺の手を引いて歩き出す


・・・・・・・・・


「ほら、ちゃんと水分を摂っておけ。熱中症になるぞ」


観光客で賑わう店並みから少し外れた木陰へと移動すると、そう言って園崎がペットボトルを差し出してきた


「あ、・・・おう」


俺は素直にそれを受け取りゴクゴクと二口三口飲み下す


「アリガトな、園崎」


そう言って返すと園崎も同じようにそれをコクコクとあおった


艶やかな唇がペットボトルの先を咥えるところについ目が引き寄せられ・・・慌てて逸らす


って、『間接』キスなんて・・・今さら意識するほどのことでもないだろ


俺達はもう何べんも『直接』のキスをしているんだ


・・・・・・・・・。


・・・恋人でもない女の子とそういうことをするのは良くないことだとわかってはいる


しかし、俺はいつも状況に流されるままにそれを始めて・・・そして歯止めが効かなくなってしまう


『キス』にあんな麻薬みたいな中毒性があるなんて思ってもみなかった


今みたいに・・・ふと園崎の唇を意識した時、強烈に口づけたくなる衝動が沸き起こってきて堪らなくなる


「・・・熱中症は深刻なケースでは命にも関わる。汗をかくことにより身体の中から水分はもちろんだが塩分やミネラルなど人間が生命を維持するために重要な成分が失われるためだ」


「お、おう・・・」


スポーツドリンクの宣伝文句のような園崎の説明に俺は半分うわの空で返事を返す


「それに加え・・・我ら魔の者にとっては、魔力の根源たる魔素〈ソーマ〉までもが失われていく」


「おう。・・・・・・・・・・・ん?」


なんか今、サラッと脈絡もなく中二設定絡めてこなかったか?


魔力って汗と一緒に失われるものなの?


「だからなおさら・・・暑い夏はこまめな『魔力補給』が・・・大事だ・・・」


「・・・お、おう?」


って、このパターンは・・・!?


ハッとして隣に視線を戻すと・・・




まぶたを閉じた園崎が唇を差し出すように顔を向けてきていた




キスしろってことですか!?


いま!?ここで!?


正にたった今、自分が望みを抱いた事とはいえ、あまりに急な展開に心の準備が追い付かない


「はやく・・・・・・だれかきちゃう・・・」

「・・・っ」


急かすような園崎の言葉に、俺は反射的にその唇へと自分のものを重ね合わせた


「・・・んっ・・・」


柔らかな園崎の唇


僅かに開いたその隙間から漏れた吐息が舌先をくすぐる


舌が蕩けるようなその甘さに脳が痺れていく


導かれるように俺はその隙間の中へと自分の舌先を挿し入れていく


お互いの舌先が触れ合ったとき・・・人の近づく気配を感じ、俺達は慌てて身を離した


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「あは、バスの中涼しー。・・・あ、一番後ろ空いてる。けーご、あそこ座ろ」

「ん、わかった」


土産物をそれぞれ買った俺と園崎は、帰りのバスへと乗り込んだ


園崎の背中を追って最後尾の席へと移動する


ちなみに土産物だが、俺が買ったのは宿で食べたのと同じ銘柄の温泉饅頭


そして園崎は・・・『紫峰山』と文字が刻みこまれた木刀だった


土産物屋の片隅・・・それが視界に入った瞬間、俺は嫌な予感がしたんだが・・・

案の定、園崎は目を輝かせてそいつを手に取った


上機嫌で木刀を構えポーズを取る園崎に周りの観光客が微妙な視線を送っていたが、俺にとっては今更といったところだ


サマーワンピ姿の美少女と木刀の組み合わせという中二感がハンパない


そしてそんな園崎が堪らなく可愛いと感じてしまってる俺はかなりヤバイ


ともあれ・・・バスのシートに腰を下ろした俺は、ふうと一息ついた


やっと落ち着ける


乗り換えの駅に着くまで2、30分というところだろう


「経吾、疲れたか?」


隣に座った園崎が小声でそう聞いてきた


「んー、さすがにちょっとな・・・」

「じゃあ・・・、はい」


「ん?」


何が『はい』?


セリフの意図が読み切れなかった俺は園崎の方へと顔を向ける


園崎は・・・その顔の角度を真っ直ぐに俺の方へと向けていた


まぶたを閉じた状態で


・・・え?


こ、これって・・・まさか!?


さっきも言ってた『魔力補給』?


今?ここで?


言うまでもなく、バスの中には俺達の他に何人か乗客が乗っている


この状況で!?マジか!?


俺は素早く周りの様子を窺った


いま俺達が座ってる席は最後尾


他の乗客からは死角になっている状態ではある


「・・・」


・・・よし


覚悟を決めた俺は差し出されたその唇へと・・・素早く自分の唇を重ね・・・すぐに離した


急いで車内の様子を再確認する


・・・たぶん・・・誰にも見られてなかった、はず・・・


今まで味わったことのない種類のスリルに、心臓の音が早鐘のように耳の奥で響く


視線を戻すと・・・園崎も周囲を確認するように目を動かしている

そして俺と目が合うと・・・目を細めた悪戯っぽい表情で笑った


こっそりとイタズラをした子供みたいに


それを目にした瞬間、俺の中で何かが弾け飛んだ

ストッパー的な


再び園崎の唇を自分のそれで塞ぐ


「んむっ・・・!?」


二度目を予期していなかった園崎が驚きに目を見開く


一時的な思考停止に陥った園崎の・・・その無防備な唇の隙間へと強引に舌先を挿し入れる


しかし、それも一瞬


お互いの舌同志が触れた瞬間・・・俺は素早く身を離す


園崎の反応を見ると・・・頬を真っ赤に染め、慌てたように周りを窺っている


誰にも見られてないらしいことを確認して、ほっとした表情になる園崎



そんな園崎に・・・俺は三度目の接吻をした


◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


「・・・」


思い出した


そのあと・・・俺は園崎の言った中二設定を大義名分に、『こまめな魔力補給』を何度も繰り返したんだ


駅に着くまでの間は勿論のこと・・・


駅に着いてからも・・・列車を待つホームの片隅で


園崎を家に送る途中の路地裏で


人通りの途切れたタイミングを見計らっては何度も何度も、チュッチュチュッチュと・・・


あの時の俺は本当にどうかしていた


人目に隠れてそんなことをするスリルと短時間の接触しか許されない満たされなさ


俺はいつまでも癒されない渇きを癒すかのように、夢中で園崎の唇を求め続けた



「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」



俺は今更ながらに込み上げてきた羞恥に耐えかね、声にならない呻きを上げながらテーブルに突っ伏した


あんなケダモノみたいな醜態を晒して・・・次、どんな顔して園崎に会えばいいんだ


(つづく)

【あとがき】

皆様お久しぶりでございます

毎度の更新遅延、申し訳ありません


夏休み編もようやく終わりが見えてきましたが…リアルではもう何回過ぎ去ったのか…


なんとかリアルの新学期が始まる前にひと区切りつけたいところです


【追伸】

レビュー、並びに感想書いて下さった方々にこの場でお礼申し上げます


相変わらずのネットコミュ障でマトモにお返事出来てませんが感想頂く度に秘かに狂喜しております


飽きっぽい自分がなんとか書き続けてられるのも皆様のお陰です


これからもよろしくお願いいたします


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