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プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~  作者: 阿津沼一成
第2章 サマータイム・ラプソディ
77/90

第77話 Summer Date final part_04

「ふいー、極楽極楽・・・」


心地好さを感じる適度な熱さの湯の中、全身を弛緩させた俺は定番のセリフと共に長い息を吐く


胆試しから旅館へと戻ってきた俺達は、園崎の提案により再び温泉に入ることになった


と言っても今度は混浴なんかじゃなく男湯と女湯が別になった大浴場の方だ


湯治は数回入るものらしいし、そもそも温泉自体がそうそう来る機会のある場所じゃない

せっかくだからもう一回くらい入っとこう、と意見が一致した結果それぞれ別々の暖簾をくぐり現在に至る


「ああ・・・沁みる・・・」


やっぱ温泉はこうでなきゃ


俺はお湯の中、リラックスした気分で手足を伸ばした


こんな事を言うとバチが当たるかもしれないが、最初に入った園崎との混浴は色々と刺激的過ぎて肝心の温泉を味わう余裕なんて全然なかった


混浴・・・マンガなんかじゃお約束ともいえる定番の展開


現実的には起こりえないそんな美味しい場面を見るたび、主人公を羨ましく思ったりしたもんだが・・・


いざ自分がそんな状況に放り込まれてみれば、軽いパニック状態で喜ぶヒマも無いという体たらくだった


お互いに全裸を異性に晒す状況になった場合・・・肉体の一部に著しい形状変化を伴う男の方が遥かに不利ではないだろうか?


顔だけいくらクールに装ってもソコを見れば一目瞭然・・・欲情しているのがバレバレになるのだ


そんな姿を恋人ならまだしも、片思いの相手なんかに見られたとしたら・・・恥ずかしさで軽く死ねる



・・・いま隣の女湯でもこうして同じように園崎が湯の中に身を沈めていることだろう


その情景を妄想の中で思い描くくらいが今の俺にはちょうどいいのかもな


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「あー、いい湯だった・・・」


温泉から上がった俺は上機嫌で部屋に戻る廊下を鼻歌混じりに歩いていた


なんとなく中学の時の修学旅行を思い出す


そういえば園崎って中二の夏休み明けにはあんな感じになってたらしいけど、修学旅行の時とかどうしてたんだろう


やっぱ、クラスの中で浮いたりして微妙な感じになってたんだろうか・・・


そんなことをぼんやりと考えながら部屋の前に着いた


扉を開け中に入る


スリッパが無いのを見ると園崎はまだ戻ってきてないようだ


普段は言葉使いとかで男キャラを演じてたりしてても、こんな風に風呂が長かったりとか・・・色んなとこが普通に女の子なんだよな


ま、お茶でも飲みながら待ってるか・・・


そう思いながら部屋の中に一歩踏み込んだ俺は・・・予期してもいなかったその光景を前に、心臓がどくんと大きく跳ねた


部屋の真ん中にあった座卓


それが部屋の隅に片付けられており、その代わり・・・二組の布団が綺麗に敷かれていた


恐らく旅館の中居さんが敷きに来てくれたのだろう


俺の鼓動が急速に高まっていく


「そう・・・だよな。俺達、今夜ここに・・・同じ部屋に泊まるんだったよな・・・」


分かってたこととはいえ、改めてこうして目の前に示されると・・・なんとも生々しい


並んで敷かれたそれぞれの布団の間は30センチと離れていない


俺の頭の中にR18的な妄想が勝手に溢れ出てくる


そもそもこんな状況になった部屋の中、どんな顔をして園崎を出迎えればいいんだ


・・・。


・・・・・・・・・・・・。


ああああああああ、ダメだ


精神的に耐えきれなくなった俺は・・・園崎が戻って来ないうちに逃げるように部屋を出た


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ふう・・・少し落ち着いた」


ロビーの自販機の前


購入した缶入りの炭酸飲料を一気に半分ほど飲み下した俺は、なんとか人心地つくことが出来た


炭酸の刺激と冷たさのお蔭で、のぼせたようになっていた頭が少しずつ冷えてくる


「ったく・・・テンパり過ぎだぞ俺。ただ隣同士の布団で寝るくらいのこと・・・混浴の時に比べたら全然どうってことないだろ」


俺は自分自身に言い聞かせるようにブツブツと呟きを繰り返す


・・・園崎、もう部屋に戻っている頃だろうな


あまり遅くなっては余計な心配をさせるかもしれない


腹を括った俺は一度大きく息を吐いて・・・飲みかけの缶を手にしたままロビーを後にした


・・・・・


部屋の前まで戻ってきた俺はその扉に手をかけたまま、もう一度深呼吸した


充分に気を落ち着けてから・・・扉を開け、部屋の中へと一歩踏み出す


今度はスリッパがある


そして部屋の中には・・・当然だが園崎の姿があった


「あ、経吾。ずいぶん遅かったじゃないか」


櫛で髪を鋤いていた園崎が振り向き、そう言って微笑んだ


・・・メチャメチャ可愛いんですけど


風呂上がりのしっとりとした黒髪


いつもの十字架を模したヘアピンを外した左右非対称の前髪


それが顔の半面を覆い隠し・・・湯上がりの火照りを残した頬と相まってなんとも色っぽい


俺の平常心が早くも掻き乱される


「あんまり遅いから、湯あたりでもして倒れてるんじゃないかと心配したぞ」

「悪い。心配かけたか?」


俺は内心の動揺を悟られぬよう、努めて平静を装う


「あ、そうだ。経吾、旅館の人が、お・・・お布団・・・敷きに来てくれたみたいだよ」


ちょっと上擦ったような声で園崎が報せてくる


「ああ・・・そうなんだ」


既に知っていることに対し、俺は白々しくそう返した


改めて見るまでもなく部屋の中央にはぴったりとくっつけられて敷かれた二組の布団が・・・


・・・。


あれ?


さっき見た時と微妙な違和感が・・・


「ど、どうかした?経吾」


俺の表情を目にした園崎がそう聞いてきた


「え?・・・いや、その・・・」


俺は違和感の正体を記憶の中に探すが・・・


「あーっ!ズルいぞ、経吾。自分だけ」


突然上がった園崎の声にその思考は中断される


俺が手にした飲料の缶を指差し唇を尖らせてくる園崎


「わ、悪い。園崎の分も買ってくるよ。・・・何がいい?」


慌てて弁解する俺に対して園崎が表情を和らげる


「んー・・・て言ってもそんなにたくさん飲みたいわけじゃないし・・・それ、ちょっと貰えればいいよ」


「ん、そうか?」


俺はまだ半分くらい中身の残っている缶を園崎に手渡す


「アリガト。・・・こくこく。ふはっ・・・サッパリした」


風呂上がりの上気した頬でニッコリ笑う園崎


俺は返された缶をそのまま自分の口元へと運ぶ


フッ・・・もはや『間接キス』などと言ってあたふたしていたような、かつての俺ではないのだ


だが・・・その飲み口に目をやった時、うっすらと唇の跡が残っているのに気付いて心臓が跳ねた


園・・・崎・・・色付きのリップっぽいの塗ってる?


横目で盗み見るとその唇は微かにピンクに色づき艶やかに濡れ光っていた


「ん?・・・どうかした?経吾」


「え?・・・いや、その・・・別に何でも・・・」


俺は妙な後ろめたさを感じながら園崎の唇の跡が残るその場所に自分の唇を重ねた


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


・・・眠れん


二人で「おやすみ」と言い合い、布団の中に入ってから既に30分ほどが経過していた


だが、俺は一向に眠くなる気配が無かった


そりゃそうだ


すぐ横で同年代の女の子が・・・それも『好きだ』とハッキリと自覚してしまってる相手が寝ているんだから


これであっさりグーグー眠れたらそっちの方が男としてどうかしている


園崎に背を向ける形で横になってるものの、静まり返った室内では布団の中で身を動かす音や微かな息遣いが耳に入ってきて、勝手に妄想が膨らんでいく


変な緊張感に身体が強ばり寝返りを打ちたくなるものの、園崎の方を向くのも躊躇われ・・・俺は代わりにモゾモゾと軽く身を捩らした


「・・・経吾・・・眠れないの?」


不意にそう声をかけられた


園崎もまだ眠りについていないだろう事は、なんとなく気配で分かっていたので特に驚きは無かった


「・・・お、おう」


一瞬、寝たふりをしようかとも考えたが、それは誠実じゃないと思い直し、正直に返事を返す


「えっと・・・、枕が変わると眠れないとかよく言うだろ?まあ・・・そんな感じ」


『お前の事、意識してて眠れないんだ』・・・なんてことまで正直に言える訳も無く、俺はとっさにそんな理由をでっち上げた


「そうか・・・、済まない。着替えまでは用意してきたけど、枕までは気が回らなかった」


「って、冗談だから。ホントにマイ枕持参で旅行する奴なんかいないから」


園崎の真面目な受け答えに、俺は慌てて訂正を入れた


「そういえば経吾は抱き枕を使っているんだったな」


俺の言葉を聞いているのかいないのか、園崎はなおも枕についての話題を続ける


「ああ、よく覚えてるな」


そう。もうお忘れの読者もいると思うが、俺は良質な睡眠を追求する一環として割と値の張った抱き枕を購入し愛用していた


「睡眠不足は体調不良を招く。特に気温の高い夏場・・・充分な睡眠が取れずにいたら夏バテになってしまう。・・・僕は親友として経吾の健康に留意する義務があったのに・・・そんなことを見落としていたとは・・・」


「いや、あのな・・・」


まあ、友達の体調を思いやるのは分かるが、そこまで重く受け止められても・・・


「経吾の安眠を確保するため・・・最善を尽くすのが・・・親友である僕の務め・・・義務だというのに・・・」


「いや・・・、だから大げさだって・・・」


なんか、また園崎が変な方向に暴走を始めてるような気が・・・


「この懸案事項の対応策として・・・僕から1つ提案がある」


「うん?」


「今夜は・・・





僕の身体を抱き枕の代替品として提供することを申し出たい」





・・・は?





「いやいやいやいや何言ってんのオマエ!?」


あまりに突拍子もない園崎の言葉に面食らい、思わず起き上がり後ろを振り返ると・・・至近距離で園崎と目が合った


身を起こして前に乗り出すような体勢になっている園崎


前髪で半面隠れた片方の目で上目遣いに俺を見つめてくる


いや・・・だからその髪型色っぽいんだって


俺はそのどこか妖艶ともいえる表情に思わず見とれ二の句が継げない


「経吾、もうちょっとそっちずれて」


「え?・・・ああ」


呆けていた俺は園崎の言葉に無意識に従い、身体の位置を後ろに下げる


その空いたスペースへと・・・園崎がその身をぽふんと横たえた


「え?ちょっ・・・待っ・・・え?」


一方的に進行していく事態に俺の頭は混乱して理解がついていかない


つまり・・・園崎のこと、抱きしめて眠れと?


隣で寝てるだけで悶々として眠れないのに・・・ハードル上がってんじゃねえか!?


「遠慮・・・しないで・・・ボクのことは・・・モノだと思ってくれていいから・・・」


「ゴフッ」


布団の上、無防備に身を横たえ理性崩壊級のセリフを言ってくる園崎


脳が揺れて意識が飛びそうになる


あかん・・・、ヘタレ童貞の俺にはとても身が保たん・・・


ここは無理をせず、この申し出は辞退したほうが賢明だろう


「えーと園崎、その案はちょっと無理があるというか・・・」


「経吾は前にも一度、僕の事を抱き枕代わりにしたことがあった」


「うぐ・・・」


言われて見れば確かにそんなこともあった


「でもあの時は寝ぼけてて・・・わざとやった訳じゃ・・・」


「経緯はどうあれ前例があることには変わりない。僕の身体が抱き枕として代替可能であることは実証されている」


・・・こういう風に変な理屈を言い出した時の園崎は頑として譲らない


「いや、でもな・・・」


「・・・つべこべ言わずここに横になれ」


「はい」


謎の圧力に押し切られた俺は園崎の言葉に従った


「ふむ・・・経吾が僕の事を枕扱いするのは気が引けるというなら・・・」


そう言いながら園崎が俺の二の腕へと頭を乗せてくる


「僕もこうして経吾の腕を枕代わりにしよう。これならお互いWINーWINだ」


鼻先がくっつきそうな距離でそう言って微笑む園崎に俺は為す術もない


「ほら、経吾も気兼ね無く僕の事を枕代わりするがいい。さあ、遠慮しないでぎゅっとしてくれ」


事ここに至っては覚悟を決めるしかあるまい・・・


「えっと・・・園崎、苦しくないか?」


「ん、へいき」


俺の問いかけに胸元から、くぐもった声が返ってくる


「もっとぎゅっとしても・・・だいじょうぶだぞ」


園崎が言葉を発するたび、その吐息で胸の表面が熱い


そこには浴衣の薄い布を一枚隔てただけで、園崎の唇がぴったりとくっついていた


「ぼくのだきごこち・・・どう?」


「わ、悪くない・・・」


エロい意味を連想しそうな質問に、わざとぶっきらぼうに答える


下半身は極力接触しないようにしているものの、上半身は俺の両腕の中にすっぽり収まった形で密着していた


その感触を一言で表すなら『やわらあったかい』だ


弾力と温度のバランスが絶妙過ぎる


俺の愛用している抱き枕は人間工学に基づいた形状と低反発素材を使用しているこだわりの一品だが・・・やはり生身の女の子の肉体にはとても及ぶものではないということか


そんな絶品の感触に加え、鼻先に触れんばかりの距離にある髪の毛からは甘い匂いが溢れ、俺の理性をじわじわと静かに蝕んでいく


ここまでで俺の許容量は一杯一杯だったのに・・・追い討ちをかけるかように唐突に気付いてしまった


園崎を抱きしめる形で背中へとまわした片方の手


その指先が伝えてくる園崎の滑らかな背中のライン


・・・何の凹凸もない滑らかな感触


そう・・・、そこには本来あるべきはずの・・・背中の中央を横切る帯状のものが・・・無かった


つまりこれって・・・





ノーブラですよね?




ヤバイ・・・メチャメチャ興奮してきた


こんな状態で理性保持したまま朝まで過ごせ、とか・・・どんだけハードなミッションだよ!?


今夜の己との戦いは想像以上に苛烈な物となりそうだ


◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


「う・・・ぐ・・・」


妙な息苦しさの中、俺はうっすらと意識を覚醒させた


俺は・・・一体・・・?


混濁した頭で自分の置かれた状況の把握を試みる


えーと・・・そうだ


俺は園崎と旅館に泊まることになって・・・そのうえ成り行きで同じ布団の中、抱き合って眠ることになったんだ・・・


そして必死に己の欲望と戦いながら眠れぬまま長い時間を耐え続けることになった・・・


いつ終わるともしれないそんな苦行に疲れ果てた俺は・・・いつしか眠りに落ちていたらしい


・・・えーと、じゃあ俺は結局耐え切ったってことでいいのか?


だが、今のこの状況はなんなんだ?


呼吸が上手く出来ない苦しさに加え、瞼を開けても何かに遮られ・・・見えるものが何もない


頭は何らかの力で固定され首を動かすことさえ出来ない


自分の身に何が起きてるのか分からず、俺はパニックを起こしそうになる心を必死に抑えた


訳の解らなさからくる恐怖・・・これを拭うためには、とにかく状況の把握が第一だ


腕は・・・?


動く


視界も・・・


僅かだが端の方は見える


俺は使える五感をフル動員して情報を集めた


そしてその情報を基に分析を行った結果、結論として導き出された答えは・・・




どうやら俺は、眠っている園崎に頭を抱きかかえられている状態のようだ


・・・


・・・・・・・・・・・・。


なんだってー!?


辛い試練の先にこんなご褒美が待っていたとは!


息苦しく俺の顔を両側面から圧迫し視界を奪っていたものの正体


それは・・・園崎のナマチチだったのだ


そのしっとりとした質感の肌触りに、俺の脳は蕩けそうな感覚に包まれる


これは正に・・・あの全ニッポン人男子憧れの『パフパフ』状態


俺は子供の頃に見たアニメ『龍☆玉』のキャラクター『タートル仙人』を思い出していた


主人公に稽古をつける師匠的存在であるキャラ『タートル仙人』


そのキャラを特徴付ける要素のひとつが『パフパフ』だった


改めて説明するまでもないと思うが・・・胸の谷間に顔を挟みこみ顔全体でその膨らみの感触を堪能するという方法・・・それが『パフパフ』だ


巨乳の女の子とみては見境なく『パフパフ』を要求していたタートル仙人・・・


なるほど・・・あれほどまでに執着していたのも頷ける


この感触は・・・至高


『亀の頭を胸の谷間に挟む』という絵面が、子供心にも何か揺さぶられる物があったが・・・いま思い返すと『ある別の行為を暗示していた』と解釈するのは考え過ぎだろうか


小学生が中心読者である少年誌でそんな裏テーマを織り込むとは・・・作者のバードマウンテン氏はなんてアバンギャルドなんだ


思春期手前でそんなものを刷り込まれたら・・・大概の男子はオッパイ星人にならざるをえまい・・・


そんな事を思い感慨に耽る俺


と、いかんいかん。考えが脇道に逸れた


いま俺にとって最も重要な事は少しでも長い時間この感触を味わう事だ


この状況が不可抗力によりもたらされたのは誰の目にも明らか・・・つまり俺に非は無い


園崎が目を覚ますまでの間、余すところなく存分にこの幸運を味わい尽くさねば・・・


園崎の規則正しい寝息が頭頂部にかかってこそばゆい


俺の頭をぬいぐるみかなんかと勘違いしてるんだろうか


抱えた手のひらで時おり俺の髪の毛をくしゅくしゅと玩んでくる


かわええ


愛しさが溢れ、抱きしめ返したい衝動が沸き起こるも・・・じっと堪えた


この時間を出来るだけ長引かせるには園崎を起こしてしまうリスクは極力避けるべきだ・・・


だがそんな時、


PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi・・・


突然けたたましく電子音が鳴り響いた!


「・・・ん、んむぅ・・・う・・・」


音に反応して園崎が身を捩らすように動かす


くそっ、一体なんなんだよ!?この音は!


ってゆーか枕元に置いた俺のケータイじゃねえか!


そうだ。バイトの時間に合わせてアラームを設定したのをそのままにしてたんだ


「ん~、あと5分~」


園崎が伸ばした手で枕元をもぞもぞと探る


俺は慌ててケータイを掴み取りボタンを押して音を止めた


夢の時間は自らの不手際でアッサリと終わってしまった


「はああああああああああああ・・・」


俺は失意に暮れ、長い長い溜め息を漏らす


そして、目を覚ましたであろう園崎を振り返り・・・心臓が止まる


片腕を伸ばしたままの寝乱れた格好のまま、動きを止めている園崎


浴衣の裾が捲れ、2本の白く美しい生足が根本近くまで露出している


そして、たった今まで俺が顔を埋めていた・・・二つの膨らみが余すところなくさらけ出されていた


細身の体つきには少々もて余すくらいのボリュームを持った双丘


色素の薄い白桃を思わせるその丸みの上にトッピングされた・・・ミルクチョコレートのような突起


窓から射し込む早朝の陽射しを受けた園崎の裸身は神々しいまでの造形美を誇っていた


奇跡のように訪れた更なる僥倖


俺は神に感謝しながら息をするのも忘れ、ただただ凝視するしか出来なかった


いま、この目に映るものを永遠に網膜へと焼き付けるべく・・・


そして、脳細胞へと刻み込むべく・・・



「!」



その時、悪魔的ともいえる閃きで・・・俺はそれに気付いてしまった




いま目の前にあるこの情景を永遠に保存する



それを可能とするものが・・・今まさに自分の手の中にあることに



この親指一本、ほんの少し動かすだけでこの素晴らしい情景を


いつでも


何度でも


好きな時に好きなだけ見ることが・・・


俺は震える指先を・・・


右上に配置されたボタンへと・・・




PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi


「うわああああああああああああ!!!」


極度に緊張が高まっていた所に再び電子音が鳴り響き、俺は飛び上がらんばかりに驚いた


スヌーズ機能おおおおおおおおおおおおおぉお


俺は思わず手の中からケータイを滑り落とす


布団の上へと落下し鳴り続けるそれを、慌てて拾い上げ急いでアラームを解除した


「はあああああああああああああああああぁ・・・・・」


深い溜め息とともに顔を上げると・・・、身を起こして目を擦っている園崎の姿があった


「ふにゃ?・・・けーご、おはよ・・・はやいね」


寝惚けまなこでそう言ってくる園崎


まるで警戒心がないその姿に、俺は沸き上がった罪悪感とともに・・・ギリギリのところで間違いを犯さずに済んだことに安堵していた


(つづく)

(あとがき)

皆様、お久し振りでございます

毎度ながら更新に時間がかかり申し訳ありません


自分の国語力では脳内妄想の言語化に非常に時間がかかります


ニポンゴトテモムズカシイネ


次回更新もいつになるか分かりませんが気長にお待ち下さるよう御願い申し上げます


とりあえずは暫くぶりに動画作ったりしてからになると思います


【どうでもいい設定】


『タートル仙人』・・・

外見的特徴は背中に背負った亀の甲羅。スキンヘッドにグラサン。そしてその名の由来ともなったタートルネックである。普段はタートルネックの襟を上に伸ばし顔の半分以上を隠しているが、本気を出す時はその襟を下げ頭を全て露出させる通称『一つ上の男モード』になる。しかし全力を出しきると一定時間戦闘不能になる『賢者タイム』という弱点がある。


武闘会に正体を隠して出場するエピソードでは、半透明で薄緑色のストッキング状の覆面を被った姿で参戦。そのヤヴァ過ぎるヴィジュアルでお茶の間を凍りつかせた。


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