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プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~  作者: 阿津沼一成
第2章 サマータイム・ラプソディ
76/90

第76話 Summer Date final part_03

「・・・園崎・・・この辺・・・か?」

「・・・ん・・・もうちょっと・・・下・・・だと思う・・・」


「・・・じゃあ・・・このあたり?」

「・・・うん・・・そのへんで・・・あってると思う・・・。そのまま・・・ゆっくり・・・入れて・・・」


「・・・わかった・・・じゃあ、入れるな?」

「・・・ん。・・・お願い・・・」


園崎の言葉に導かれ・・・俺はそれを慎重に彼女の中へと挿し入れていった・・・






「・・・ぱく。もぐもぐ・・・うん、美味しー」


園崎が満足げな声を出した


よし、箸は無事に園崎の口へと入ったようだな


・・・・。


のっけから紛らわしい音声で始まり恐縮の限りだ


だが勘弁してほしい


実際、俺の視界には何も写らず、そんな二人のやり取りしか聞こえない状態なのだから


そう、前回ラストの引きからお察しの事と思うが、俺達は今まさに二人羽織を実行中なのである


最初は園崎が食べる側、俺が食べさせる側でのスタートとなった


二人羽織がどういうものか知識として知ってはいても実際にやるのは初めてのことだ


俺は園崎からの指示を頼りに、料理を箸でつまんではその口元あたりへとおっかなびっくりたどたどしい手つきで運んでいた


それにしても・・・この体勢はかなりキツいな


いま俺は園崎の背後からその羽織の中へと潜り込み、その背中にぴったりと密着した状態になっているワケだが・・・


お互いの身体を隔てているのは浴衣の薄い布地だけ


華奢な見た目に反し、園崎の肢体は驚くほど肉感的な柔らかさを備えていた


未だ湯上がりの火照りを残した身体から漂う芳醇な香りが、羽織の中という閉ざされた空間内に篭っている


その甘く濃密な空気はまるでハチミツのようだ


園崎がいくら『僕は男だ』なんて言って嘯いていても、これら全てが『オンナのカラダ』であることを主張してくる


こんな状況で劣情を覚えないほうがどうかしている


嫌が応にも互いの身体が密着せざるを得ないこの状況において・・・


俺は硬化しきったその部分だけは決して触れさせぬよう、腰を引いた無理な体勢を維持していた


うぐ・・・


しかし、いい加減この不自然な体勢でバランスを取るのも・・・そろそろ限界・・・だな・・・


「・・・くっ・・・ふッ・・・」

「んっ!?・・・ぁん!」


俺がしんどさに耐え兼ね息をついた時、突然園崎が色っぽい声を上げて身体をピクンと震わせた


「ど、どうした?園崎」

「んッ・・・け、けーごの息が首筋にかかって・・・く、くすぐったい・・・」


驚いて問いかけると・・・園崎は身をよじらせながらそんな事を訴えてきた


言われてみれば薄暗い視界の中、目の前に園崎の白い襟足があった事に気付く


・・・そういえば園崎って・・・うなじ、弱かったんだよな


俺は前にネックレスの着け外しをした時のことを思い出した


・・・。


「・・・そっか、ゴメンな?(ふうっ)」

「んっ・・・くすぐったい・・・ってば・・・」


謝る俺に対し園崎が非難の声を向けてくる


「・・・こんな体勢なんだから・・・息がかかるのは・・・しょうがないだろ?(ふうっ・・・ふうぅ・・・)」

「ひゃんっ・・・けーご・・・わざと、やってない?・・・」


「・・・わざとなんて・・・(ふっふうう・・・)してないって・・・」

「・・・あん・・・あっ・・・うそだ・・・ぜったい・・・わざと・・・ぅあ・・・」


身を捩り震わせる園崎に嗜虐心が沸々と沸き立つ


「(ふっ・・・ふぅぅ・・・ふっふっふぅぅ・・・)」

「ひぅ・・・うぁあ・・・ゃぁ・・・」


「(ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・)」

「いじわる・・・けーごの・・・いじ・・・わる・・・あふぁ・・・」


園崎の声がだんだんと涙混じりになってきた


ヤバい


ちょっと悪ふざけが過ぎたか?


園崎の反応に興奮して、つい暴走した


我に返った俺は慌てて羽織から抜け出し園崎の様子を伺う


俯いた園崎はまだ少し肩をぴくんぴくんと小さく震わせ、俺が与えた刺激の余韻をその身体に残している


「えっと・・・その・・・ゴメンな?・・・ちょっと・・・ふざけすぎた」


恐る恐る声をかけた俺に、ゆっくりと振り向いた園崎は紅潮した頬を軽く膨らませ睨んでくる


「けーご・・・覚えてろよ・・・」

「ゴメン・・・。えっと、その・・・お前がくすぐったがってるのが面白くて、つい・・・」


俺はそんな言い訳で取り繕う


面白くて、というのは勿論嘘で・・・本当は性的な衝動に突き動かされていたのが正直なところだ


「もう・・・本当に経吾は酷い奴だな。大体・・・・・・あんなとこで止めたら・・・生殺しもいいとこだし・・・」


ぶつぶつと文句を呟く園崎はまだ怒り冷めやらぬという雰囲気だ


「ああ、もう!・・・今度は僕の番だ!経吾。さっさとしろ!!」


無理矢理気持ちを切り替えるように叫んだ園崎が俺を料理の前へと追い立てる


「わ、わかったってば。そんな押すなよ」


俺は怒りで顔を真っ赤にした園崎に背中を押され、座布団へと強引に座らされた


と同時に・・・園崎が俺の羽織の中へと下から潜り込んでくる


うっ・・・おうっ!?


柔らかな二つの弾力が背中に密着してきた


そして怯む間もなく袖口から白くほっそりした手が顔を出してくる


「ほら、経吾は腕引っ込めなきゃダメだろ」

「わ、わかったよ」


羽織の袖から二本づつ手が出た奇妙な状態になっている


俺は園崎の機嫌がこれ以上悪くならないよう、急いで腕を袖の中から引っこ抜くが・・・


むに


肘が何か柔らかいものにめり込んだ


わざとじゃないからな!?


だが園崎は『んっ』と微かな声を漏らしただけで、そのことについて責めてくることはなかった


俺はほっと胸を撫で下ろしつつ慎重にもう片方の腕も抜いた


「・・・こふん。準備出来たようだな」

「お、おお・・・」


まるで背中から抱っこされてるような体勢にときめきを禁じ得ない


園崎の右手が動き、おもむろに箸を手に取った


「ふふん。では、食べさせてやろう。まずは・・・海老の天婦羅などはどうだ?」


そんなセリフとともに園崎の箸が動き・・・盛り付けられた天婦羅の中から海老を摘まみ上げる


そしてそれを天つゆにちょんと浸けてから・・・口元へと運んできた


まるで流れるような動作に面食らう


「え?園崎・・・見えてるのか?」

「くくっ・・・驚いたか、経吾。勿論見えてはいない。ただ・・・全て見切っているがな」


後ろから園崎のドヤッた声が届く


「見切ってるって・・・なんだそれ?」

「フッ・・・僕はお前の羽織に入る前、卓上にある料理の位置関係は全て把握した・・・それを箸で摘まみ、お前の口元へと持って行くことなど・・・造作もない事だ!」


そんなとんでもないことを事も無げに言う園崎に俺は驚嘆を通り越して呆れるしかない


なんでその記憶力を勉強とかに使わないかな・・・


「さて、それじゃ次は・・・刺身でもいかがかな?」

「って、待て待て待て園崎。それはちょっとシャレにならんぞ!!」


園崎の箸がワサビの塊をマグロの赤身へと乗せるのを見た俺は、恐怖に駈られ抗議の声を上げる


「すまんな経吾。位置の判別は出来るがそこまで細かいコントロールは無理でな」


笑いを噛み殺しながらそんな事をいけしゃあしゃあと言ってくる園崎


「むぐう!?」


爆弾にも似た凶悪さをもつ塊を問答無用で口に突っ込まれた俺は声にならない悲鳴を上げる


「くうぅ・・・さっきの仕返しのつもりかよ?」


俺は涙目になり肩で息をする


「仕返し?・・・そう言えばさっきは酷かったな経吾・・・ふぅっ」


ふおっ!?


突然首筋に感じたこそばゆさにぞくりとする


油断していたところに真逆の刺激を与えられた俺は危うく声を上げるところだった


・・・なるほど、俺がやったのと同じことをやり仕返すつもりなんだな


だがそうはいかんぞ


俺は首筋にかかった園崎の吐息などまるで感じてないふうを装った


ふぅっ・・・ふぅぅ・・・


再び息がかかる


俺はゾクゾクしつつも平然を貫く


ふっ・・・はふっ・・・ふっ・・・


俺が何の反応も見せないでいると、園崎は吐息のリズムに変化を持たせてきた


クク・・・残念だったな園崎


お前は仕返しのつもりだろうが・・・好きな女の子に吐息を吹き掛けられるとか・・・俺にとってご褒美以外の何物でもないッ!


負けず嫌いなお前のことだ。俺が反応しなければこれをずっと続けることだろう


ギリギリまで耐え続け、少しでも長くこのこそばゆくも気持ちいい感覚を味わい続けてや・・・うくっ?


「ぅあっ!?」


邪悪な企みを胸にほくそ笑んだ時・・・


新たに感じた刺激に不意を突かれた俺は、思わず声を漏らした


え?・・・いま首筋に『ちゅっ』って?・・・うわっ


ちゅっ・・・ちゅっ・・・


その刺激の正体が何か・・・答えに思い当たるもにわかには信じられなかった


どうやら俺は園崎の負けず嫌いを甘く見ていたようだ


まさか、ここまでするとは・・・くっ!?


・・・ちゅっ・・・ちゅっ・・・


なおも執拗に続く刺激


間違いない


園崎の奴・・・まさか唇を使ってくるなんて・・・


「・・・手強いな、けーご。なら・・・これでどうだ・・・はむっ・・・んっ・・・」


な!?マ、マジか!


俺のうなじへと園崎の唇が貼り付く感覚・・・そして・・・


「う・・・あ・・・やめ・・・園さ・・・うくっ・・・」


かつて無いゾクゾクに俺は思わず情けない声を漏らした


園崎が唇を貼り付かせたまま・・・舌先でくすぐるように動かしてきたのだ


「ふ・・・く・・・・・・うあ・・・」


ちゅぷ・・・


「くふ・・・、経吾・・・なかなかいい声で鳴くじゃないか・・・」

「お、お前・・・なんて奴だ・・・」


「くはは、もっと可愛い声を聞かせてくれよ・・・・・・ん・・・はむ・・・」

「うっ・・・」


園崎・・・また変なスイッチ入っちまってるのか!?


「うっ・・・ぁく・・・」


俺のうなじを園崎の唇と舌が這い回り出した


背後を取られた状態の俺は、為す術もなく・・・園崎に嬲られ続けることになった


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


悪ふざけという言葉で済ましていいのか分からない少々倒錯的な一幕があった夕食も済み、俺と園崎は食後のお茶をすすりながら一息ついていた


俺をしばらく蹂躙していた園崎だったが、急にスイッチが切れたように我に返ると真っ赤な顔でよく分からない言い訳を並べたてた


二人羽織は有耶無耶になり・・・気まずい空気の流れる、会話の無い静かな食事が再開される


しかし、料理も無くなる頃にはその微妙な空気も消え、いつも通りの二人に落ち着いていた


俺と園崎の奇妙な関係も以前とは大分変わってきてる気がする


さっきみたいなことがあったら元通りになるのに数日かかっていたものだが・・・

それが今ではこんな短時間で修復するようになった


距離感というか・・・


上手く言えないけど、お互いの『心の間合い』みたいなものが近づいてる感じがする


そんな事を思いながら湯飲みを傾けつつ横目で園崎の表情を眺める


そもそも俺達、『キス』までしちゃってるんだよな


それも、かなり濃厚で激しいやつ


あれに比べれば大体のことは大したことないか・・・


まあ、園崎にしてみればあれはあくまで『術式』であり世間一般で言うところの『キス』などというものじゃないって認識らしいけど・・・


園崎がくいと湯飲みを大きく傾けたあと、それをコトリと卓の上へと置いた


なんとなく雰囲気で察した俺は園崎の方へと真っ直ぐに向き直る


「さて、腹ごしらえも済んだことだし・・・そろそろ合宿夜のイベントを始めるとしよう」


ニッとした笑いを浮かばせながら園崎がそんなことを言い出した


「えーと・・・イベント?これからか?」


俺はチラリと窓の外へと視線を移しながらそう尋ねた


外はもうすっかり宵闇に包まれている


こんな時間から何をするっていうんだ?


訝しむ俺の表情を読み取った園崎がニヤリと口の端を上げる


「ふふん、察しが悪いな経吾。部活・・・合宿の夜・・・といえば定番中の定番・・・『肝試し』に決まってるだろう」


またベタな奴きたなぁ・・・


そのドヤ顔に思わず半眼になる俺だが、園崎はそんなことに構わず鼻息荒く説明を始めた


「この旅館の裏手にお社がある。部員二人づつ一組のペアを組み、そこの境内を一回りしてくるんだ。そして最も早いタイムで帰ってきたペアの勝ちとする」


「いや・・・、部員二人づつペアって・・・そもそも今ここには俺達二人しかいないだろ?」


「う、うむ。なれば、僕と経吾がペアを組むしか、ないな。うん」


園崎がそう言いながらこくこくと頷く


それじゃ俺達は何とタイムを競い合うんだ


色々と前提条件がおかしいと思うが・・・まあいいや


園崎にしてみれば好きなマンガやアニメのシチュエーションの中に自分を置きたいだけなんだろう


また今回もそれに付き合ってやるのが『親友』である俺の務めって訳だ


いそいそと準備を始める園崎を眺めながら俺は諦めの溜め息をついた


◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


「ふ・・・、さすが霊峰と称されるだけはある。夜の帳が下りた今・・・その神気はさらに高まっているようだな」


園崎がそう言って肩をブルッと震わせた


陽が沈んでからだいぶ過ぎたこともあり、山の中腹に位置するこの森の中はぐっと気温が下がり・・・夏だというのに肌寒いくらいだ


月明かりも届かぬ闇に包まれたその中を、俺達は目的地のお社へと向かっていた


明かりは俺が手にした懐中電灯一本


石畳の道があるから迷うことはないだろうが・・・そこを一歩外れれば鬱蒼と生い茂った木々


うっかり入り込んだら・・・抜け出すのは無理に思える


夜の森・・・暗闇の中というのはシンプルな怖さがある


多分、生き物としての根源的な畏怖を掻き立てられるのだろう


初めは意気揚々と前を歩いていた園崎だったが、家々の明かりが見えなくなった辺りから俺の隣を歩くようになり・・・今現在は俺の腕にしがみつくような格好になっていた


左腕全体が柔らかな弾力に覆われ、色々な意味で非常に歩きづらい


しかし・・・決して度胸が座ってる方でもない俺がこんな闇の中を怯まず歩み続けていられるのもこの感触のお陰といえる


そう、男という生き物はスケベ心で大概の事は乗り越えられるものなのだ


時おり頭上から聞こえるホーホーという鳴き声や風で木々がカサカサと擦れ合う音に園崎が身を震わすのが伝わってくる


そう言えば園崎ってホラー系苦手だったよな


俺は以前の映画やお化け屋敷での事を思い出した


「なあ、園崎・・・、無理しないでここらで引き返そうぜ?」


園崎の怯えっぷりを見かねた俺はそう提案してみるものの・・・


「フ・・・、ぼ、僕が怖がってると?・・・バカな。そ、そんなわけ、無いだろう」


震えた声でそんな強がりが返ってくる


しかし言葉とは裏腹に・・・園崎の足はガクガクと震え、足取りも覚束無い様子だ


「ほら、無理するなって」

「だ、駄目だ。せっかく絵馬も・・・用意したのに・・・これを置いてこなきゃ・・・」


園崎は首を振り、頑として聞かない


『絵馬』・・・とは、改めて説明するまでもないと思うが、神社に奉納するあの木の板の事だ


出発前に用意した物で俺と園崎の名がそれぞれ直筆で書いてある


「お社にたどり着いた証拠としてペアの名前を書いた絵馬をくくりつけてくるんだ。これをしなければ、いくら早く戻ってきても失格だからな」


・・・なんてことを言っていたが・・・これも園崎の見たアニメかなんかの設定なんだろう


園崎のそういったことに対する拘りを折れさせるのは・・・まあ、無理だろうな


だが、いつまでもこんな亀の歩みを続けていては埒が明かない


・・・よし、仕方ない


俺は多少強引に左腕に張り付いた園崎の身体を引き剥がした


「け、経吾!?何で・・・」


驚いた声を上げる園崎に構わず、俺は一度引き剥がしたその身体を・・・肩を抱くようにして引き寄せた


「そ、園崎は目をつぶって耳塞いでろ。こうして・・・俺が連れてくから。園崎は俺の足に合わせて歩いてくれ」


「ふあ・・・・・・は、はい」


園崎は素直にコクンと頷くと、頭を俺の胸に預けてくる


俺はその体勢のまま・・・園崎を誘導して歩き出した


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


道の先にそれらしい鳥居が見え、俺はほっと胸を撫で下ろした


園崎は俺の胸に顔を伏せたままでいるものの、ずっと落ち着いた状態で歩を進めている


それにしても、昼間なら数分で着いたであろう道のりが大分かかってしまったな・・・


「ほら、園崎。着いたぞ」


やれやれという気分で鳥居をくぐり、未だ顔を胸元に寄せたままの園崎にそう声をかけた


「・・・え?もう?」


園崎にはあまり長く感じられなかったらしい


森の中に切り開かれた境内には月明かりが差し込み、青白い光に浮かび上がる社殿は厳かで神々しくも見える


「おお・・・」


俺は思わず感嘆の吐息を漏らした


昼間ではこの雰囲気は味わえなかったろう


そう思うと園崎の中二的思いつきもなかなか悪い物でもないかな


「ほら、園崎も見てみろよ。なかなかに・・・」


俺はそう言いかけた言葉の途中で息を飲んだ


顔を上げた園崎は・・・頬に朱が差し、その唇は濡れたように光っている


月明かりの下で見る園崎は・・・厳かで神々しくも見えた


「・・・女神?」

「え?」


「いや、なんでもないなんでもないなんでもない」


思わず変な確認をしてしまった


って、俺はいつまで女神のお身体を抱き寄せてるつもりだ


畏れ多いにも程があるぞ


「ええっと・・・、あ!絵馬!!絵馬くくりつけるんだっけ?えーと・・・あ、あそこじゃないか?」


混乱した俺は園崎の身体を解放しながら視界の端に写ったそれの方向を差し示した


境内の一角に板が立てられ、そこにズラリと沢山の絵馬が掛けられている


「あ、そだね。うん、肝心なこと忘れるとこだった」


どこかポーっとした表情をしていた園崎が俺の言葉にハッとなる


「いこ、経吾」


いつもの調子に戻った園崎が俺の手を引いて歩き出す


・・・・・・・・・・。


「すごい数の絵馬だな」


近づいて見るとその夥しいほどの数に圧倒される


こんなに沢山の絵馬が奉納されてるなんて・・・この神社かなり有名なのかな?


今は人っ子一人いないが昼間はかなりの賑わいなんじゃないだろうか


園崎が羽織の袖に入れていた絵馬を取り出すと、他の絵馬と同じようにそこにくくりつける作業を始める


その傍らで手持ちぶさたになった俺はなんとなしに一枚、掛かっていた絵馬を手に取り眺めた


それには男女二人とおぼしき名前と共に、『いつまでも一緒にいられますように』などと書き込まれている


・・・ん?


何枚か他の絵馬も見てみるが、どれもが男女二人の名前と『ずっとラブラブ』とか『二人の愛が永遠でありますように』といった文言がカラフルな色で書かれたものばかりだ


・・・もしかしてこの神社の御利益って『縁結び』とかなんじゃ・・・


「よし、しっかり結んだぞ。これでミッションコンプリート・・・って、経吾!?なに他の人の絵馬見たりしてるんだ!!あ、悪趣味だぞ!!」


凄い剣幕で怒られた


「も、目的も済んだし早く帰るぞ」


園崎に腕を引っ張られ、浮かんだ疑問を置き去りにしたまま俺はその場を離れた


・・・・・・・・・。


拝殿の正面まで歩いた時、不意に園崎が立ち止まった


そして・・・振り返り俺を正面から見つめてくる


「ど、どうした?」


月明かりの下というシチュエーションも重なり、幻想的な美しさを醸すその姿に俺は僅かに緊張する


「経吾・・・、この境内はいわば『神の領域〈テリトリー〉』・・・。僕ら魔の者にとってはアウェイな場所と言えよう」


園崎がその幻想美と俺の緊張感をぶち壊す中二的セリフを吐いた


今さら!?


じゃあなんでここを肝試しのチェックポイントにしたの!?


俺は絶句したまま心の中でツッコミを入れるが、そんな事お構いなしに園崎は語り続ける


「・・・その神気によりこの場〈フィールド〉内の魔素量はごく少量・・・僕の魔力も知らず知らず削られ・・・残り僅かまで欠乏しつつある・・・」


・・・あれ?


もしかして、この流れって・・・


「済まないが・・・経吾の魔素〈ソーマ〉・・・少し・・・分けて貰えないか?」


え?今、ここで?・・・マジ?


予想もしていなかった展開に心の準備が追い付かない


しかし園崎は俺の返事を待たずして、既に両の瞼を閉じていた


ここでまごまごしていたら園崎に恥をかかせることになる


大事な親友に恥ずかしい思いをさせる訳にはいかない


よく分からない思考ルーチンでそう決断した俺は、彼女の両腕・・・二の腕辺りを優しく掴んで・・・自分の方へと引き寄せた


身体の前面に柔らかく心地好い温もりが密着してくる


園崎が頭を軽く斜めに傾け・・・唇をほんの少し開いた


俺がしやすいように傾けてくれたその角度に合わせ、ゆっくりと顔を近づけていく


そして・・・慎重に唇を重ね合わせた


瞬間、全身が痺れるような快感に包まれる


ああ・・・、これ絶対脳内麻薬的な快楽物質分泌されまくってるな


多幸感ハンパない・・・


俺はそれを更に感じるため、園崎の唇の隙間へと舌先を割り入れていく


それに応じるように園崎も自分の舌を俺の舌へと絡ませてくる


青白い月明かり差す境内の中


まるで映画のワンシーンじみた、演出されたかのような幻想的雰囲気に酔わされた俺達は・・・お互いの口内を貪り合うように、甘い快楽の生まれるその行為に耽溺していく


それにしても・・・


二人の名前書いた絵馬を奉納するみたいなことした上、拝殿の真正面でこんなことしちゃって・・・紛らわしいにも程があるよな


神様ってのが、もし本当にいて・・・これを見てたとしたら・・・絶対俺達のこと誤解してるぞ


本当にここが縁結びの御利益がある神社だったらどうするつもりなんだ、園崎


誤解した神様に俺との縁を結ばれちゃっても知らないからな


(つづく)

(あとがき)

皆様、こんばんは。お久しぶりでございます。

また、年が変わってしまいました。

相変わらず筆の遅い作者のせいで遅々として進まない本作ですが、どうか今年もよしなにお願いいたします。


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